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中国のGPU(画像処理半導体)大手「摩爾線程(Moore Threads)」が2024年11月12日、上場要件を満たすためのコンプライアンス指導を北京証券監督管理局に申請し、中国A株市場での新規株式公開(IPO)に向けて動き出した。これに先立ち、同じく半導体開発の燧原科技(Enflame Technology)や壁仞科技(Biren Technology)もIPO申請に向けて準備を始めたことを公表している。
2020年に設立された摩爾線程はGPUの設計をメインに手がけるハイテク企業で、米半導体大手NVIDIA(エヌビディア)の中国版とも呼ばれる。創業者の張建中氏はGPUのエキスパートで、過去にNVIDIAでグローバルバイスプレジデントや中国エリアのゼネラルマネジャーを務め、中国市場におけるNVIDIAの急成長を支えた。
これまで6回の資金調達を実施し、深創投(Shenzhen Capital Group)、紅杉中国(Hongshan、旧セコイア・チャイナ)、バイトダンス、テンセントなどの有名企業から総額数十億元(数百億円超)を調達。ほぼ毎年、新製品を発表しており、現在では「蘇堤」「春暁」「曲院」という3種類の高性能GPUを展開する中国トップクラスの半導体メーカーとなった。
同社の技術や製品開発の歩みから、NVIDIAの経験をある程度参考にしてきたことが分かる。実際、製品やエコシステムではNVIDIAをベンチマークに開発を進めている。単一のアーキテクチャにこだわり、チップやグラフィックボードからコンピューティングクラスタに至るまでスマートコンピューティングの製品ラインを整えた。中国のGPUスタートアップでは唯一、法人向けと消費者向けの両方を取り扱っていることもあり、業界では「最もNVIDIAに近い中国GPU企業」と評されている。
また、初めはゲーム用グラフィックボードでその名を広めたことも、摩爾線程とNVIDIAの共通点だ。摩爾線程がこれまでにリリースしたグラフィックボードは「MTT S30」「MTT S70」「MTT S80」など複数ある。同社で最高の性能を誇るゲーミング用のMTT S80は、2024年に大ヒットした中国の超大作RPG「黒神話:悟空」をプレーできる唯一の国産グラフィックボードとなっている。
長らく海外製品に占有されていたGPU市場で、摩爾線程は待望の中国製GPUを投入して存在感を示したとはいえ、NVIDIAやAMDなどの大手メーカーに正面対決を挑むには製品と技術の完成度や開発経験が不足している。
例えば、同社のグラフィックボードは「黒神話:悟空」の要件を満たしていたものの、ゲームパフォーマンスのテストでは、MTT S80搭載のPCは互換性やフレームレート、グラフィックなどの点でかなり見劣りした。このためゲームのリリース時期に合わせて、高画質でもフレームレート50fps前後を維持できる最新のドライバを公開し、プレーヤーの不満解消に努めた。
目下、大多数の半導体企業がAI処理に特化したチップの研究に注力するなか、高性能GPUの開発に専念する摩爾線程はひときわ異彩を放つ。特にGPUを使った汎用的な演算処理の研究や活用に力を入れており、さまざまな業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支える高速演算のインフラやワンストップソリューションを提供している。
AI技術の進歩に伴い、GPUの活用分野も拡大し続けている。初期に主力だったゲーム市場だけでなく、研究が進む仮想現実や深層学習の分野でもGPUが欠かせなくなっている。調査会社Jon Peddie Researchの最新リポートによると、世界のGPU市場は力強い成長を見せ、その市場規模は2024年に985億ドル(約15兆5000億円)を突破したとみられる。
摩爾線程の創業者張建中氏は、北京で開催された第1回グローバルユニコーン企業大会で、GPU主導のAI技術がこれからの世界のテクノロジー進歩をけん引し、さまざまな業界に浸透したAIが新たなビジネス価値を生み出していくとの見通しを示した。
NVIDIA、AMD、インテルの三大巨頭が君臨するGPU市場で、もし摩爾線程が上場に成功すれば、中国のGPU産業が存在感を高めるうえでの重要なマイルストーンとなるだろう。
*1ドル=約158円、1元=約22円で計算しています。
(翻訳・畠中裕子)
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