中国の有機薄膜太陽電池メーカー、事業化に向けて量産体制の準備急ぐ

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有機半導体技術の開発を手がける中国スタートアップ「追光科技(ChasingLight Technology)」がこのほど、シリーズAで1億元(約20億円)近くを調達した。出資には国家電投集団産業基金管理(SPIC Industrial Fund Management)や毅達資本(Addor Capital)、穂開股権投資(Sui Kai Equity Investment)、広州開発区産業基金投資集団(GDD Industry Fund Investment Group)や北航投資(Beihang Investment)が参加。資金は、2024年に建設を開始した650×550m㎡の有機薄膜太陽電池(OPV)生産ラインに充てられる。

追光科技は2020年に設立され、有機半導体技術とそれを用いたOPVの研究開発および事業化に注力しており、オーダーメードのソリューションを提供している。製品はモノのインターネット(IoT)や家電、スマートホーム、交通、車載機器、建材一体型太陽光発電、風力・太陽光ハイブリッド発電の分野で活用されている。

中国政府が二酸化炭素(CO2)の排出削減を目指す中、クリーンで低炭素、安全で効率的なエネルギーシステムを構築するうえで新エネルギー技術が重要な役割を担っている。従来の結晶シリコン太陽電池産業には、成熟したビジネスモデルと市場が存在するため、同社は技術戦略を決める際、成長が見込まれる新しい市場に照準を合わせた。創業者の楊曦氏は「当社の新しい太陽光発電技術は、既存市場とは競合しない。既存市場のほかにも、クリーンエネルギーが活用されていない分野がまだたくさんある」との見方を示した。

OPVは第三世代の太陽光発電技術と呼ばれ、柔軟性や透過性、微光環境での発電、エコ、設計のしやすさといった点で優れている。楊氏は、OPVは微弱な光でも発電できるという特長があり、室内光発電にぴったりだという。例えば、大型スーパーマーケットの電子棚札は、室内光発電を導入できる典型的なケースだ。陳列棚の周りは、OPVが電子棚札に電力を供給し続けるのに十分な明るさがあり、電子棚札の更新頻度が増えても対応できる。さらにOPVは薄くて曲げられるうえ、透明度を調節できるため、活用シーンに合わせて設計しやすい。

室内光発電のほかに、車載機器や建材一体型太陽光発電の分野もターゲットにしている。OPVの強みを生かして新たな活用シーンを開拓し、従来の電力供給方法に頼っていた分野にクリーンエネルギーの導入を進める方針だ。

楊氏は「新しい太陽光発電技術の事業化では、変換効率と安定性がポイントになる。最先端の技術を競い合って開発し、技術的なボトルネックが解消されれば事業化が実現する」と強調した。

同社はOPVをめぐって、2022年に材料の生産ラインを完成させており、24年に電池モジュールの生産ライン建設に着手した。楊氏は「当社が独自に開発したOPVは実験室での変換効率が19.92%に達し、2年連続で世界最高を維持した。すでに顧客による検証が進められており、生産ラインが完成すれば量産と納品を開始し、業界に先駆けてOPVの事業化を果たすことになる」と話した。

有機薄膜太陽電池の生産拠点

また、スマート生産ラインを建設しており、2025年に室内光発電向けOPVの生産を開始する計画だ。すでに世界的な大手IoT機器ベンダーから発注があったという。

製品は顧客の活用シーンに合わせて設計から開発、生産までの全プロセスに関するオーダーメードのソリューションが求められており、同社はそれに対応する総合的な生産能力を持っている。今後は、機能や形態などさまざまなニーズに応じたオーダーメードの製品に加え、標準化された製品の開発も進め、より効率的で柔軟な提携モデルを顧客に提供していく。

*1元=約21円で計算しています。

(翻訳・大谷晶洋)

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