航続1000km、極寒対応の水素トラック開発。“商用車のテスラ”目指す中国「Hybot」、90億円調達

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水素エネルギーで走る商用車を開発する中国スタートアップ「海珀特(Hybot)」が3月24日、シリーズAで4億5000万元(約90億円)を調達したと発表した。国投招商(SDIC Fund)、Center Venture、Hydrogenicが共同で出資を主導し、広州水木氫雲股権投資(Guangzhou Shuimu Hydrogen Cloud Equity Investment)を始めとする複数の投資機関も参加した。

中国政府が脱炭素政策を推進するなか、中国の水素エネルギー産業はこれまでにない成長のチャンスを迎えている。政府は水素エネルギー産業の戦略的な位置づけを極めて重視しており、「水素エネルギー産業の中長期発展計画(2021~35年)」や「水素エネルギー産業の標準体系構築ガイドライン(2023年版)」などを相次いで発表したほか、5つの都市群で燃料電池車の実証プロジェクトを進め、水素エネルギー産業の発展を推進している。

国の後押しと技術の進歩により、水素エネルギーの交通分野での商用化が急ピッチで進んでおり、著しい成長を見せている。二酸化炭素(CO2)排出に伴うコストを考慮すれば、水素エネルギーには道路輸送や産業用途において大きなコスト的メリットがある。米マッキンゼーのまとめたリポートによると、2035年までに燃料電池車を中心とした道路交通が最も速いペースで成長し、水素の消費量は2600万トンから1億1200万トンに増加すると見込まれている。

水素エネルギーで走る商用車は、政策や産業戦略を実現する重要な担い手として、資本市場で注目を集めつつある。

商用車界の「テスラ」

海珀特は、中国で初めて物流業界向けに燃料電池商用車のソリューションを提供したテック企業で、清華工業開発研究院傘下の水木氫源基金、広東省広物控股集団、北京華夏順沢投資集団により設立された。3社は水素の供給・製造・充填、燃料電池のコア部品、物流現場への応用など、さまざまな分野で海珀特にリソースや産業エコシステムを提供している。創業時から手厚いサポート体制を持つ海博特は、いわば「巨人の肩」に乗っていると言える。

同社は2023年12月12日、主力製品の燃料電池トラック「H49」を発表した。幹線物流向けにゼロから設計した世界初の燃料電池トラックは、発表直後から業界や投資家の間で大きな関心を集めた。商用車界の「テスラ」との呼び声も高い。

H49は高積載、長距離走行、時間効率を重視し、あらゆる環境でのニーズに対応すべく開発されたCO2排出ゼロの燃料電池けん引トラックだ。フル積載で高速走行した場合でも、水素消費量は100kmあたりわずか7.8kgで、航続距離は最大1000kmに及ぶ。最高時速は120km/hで、車両および主要部品のB10ライフ(製品の10%が故障するまでの寿命)は150万kmを超える。

燃料電池システム、水素タンク、シャシー、サスペンション、駆動システム、バッテリーなどをコンパクトかつ効率的に統合することで、車両重量を抑えつつ、高いエネルギー変換効率を実現した。また、統合型の熱管理システムによりエネルギー消費量を20%削減し、-30℃から+45℃という幅広い温度環境にも対応できるようになっている。

さらに、空気抵抗を減らすため先端を尖らせたボディデザインを採用し、カーボンファイバー製の外装で強度を高めつつ軽量化も実現した。キャビンには高精細の大型液晶メーター、スマートディスプレー、電子ミラーなどを装備。自動運転レベル4にも対応しており、高速道路での自動走行や自動車線変更、隊列走行など10種類以上の先進機能が利用できる。

最初の試作モデルが完成した2024年6月以降、H49は一連の試験や調整を重ねてきた。例えば、極暑の新疆ウイグル自治区トルファン市や、極寒の黒竜江省漠河市で実車テストを実施するなど、過酷な環境下でのパフォーマンスと信頼性を実証する取り組みを行っている。

H49は2025年中に小ロットでの納車と運用を開始する予定で、顧客の利用環境に応じた検証を重ね、市場ニーズを十分に満たせる製品に仕上げていくという。今後は「技術・エコシステム・資本」の三位一体の体制で、顧客のニーズに応じたH49のカスタム開発、検証、納車、商用運用を推し進め、迅速な市場展開と水素エネルギーエコシステムの構築を図ることにより、高品質かつ効率的な燃料電池トラックのソリューションを提供していく方針だ。

*1元=約20円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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