“印刷”で太陽電池革命 中国スタートアップ、インクジェット技術でペロブスカイト量産に挑む

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次世代型太陽電池の製造技術を開発する中国スタートアップ「光素科技(Guangsu Technology)」がこのほど、エンジェルラウンドで数千万元(数億円)を調達した。嘉御資本(Vision Knight Capital)が出資を主導し、中粛資本(Zhongsu Capital)と蘇州高新区科創天使基金も参加した。資金は主にペロブスカイト用インクジェット塗布装置の改良や材料開発に用いられる。

光素科技は2024年に設立され、結晶シリコンとペロブスカイトを組み合わせたタンデム型太陽電池の製造技術に注力している。とくにペロブスカイト層の塗布工程にインクジェット技術を活用する装置の開発で注目を集めている。すでにこの装置は、複数の太陽電池メーカーのパイロットラインで稼働を開始しており、商用化の先陣を切った存在だ。

材料をプリンターのように塗布

現在主流となっている結晶シリコン型太陽電池は、変換効率の向上が頭打ちになりつつある。そうしたなか、シリコンにペロブスカイト材料を重ねた「タンデム構造」が、より高い変換効率を実現できるとして注目を集めており、国内外の大手メーカーが続々と研究開発に乗り出しているほか、政策面の支援も進んでいる。しかし、従来の製造方法では材料のロスが多く生じるうえ、既存の生産ラインのスピードに対応できず、表面が汚染されやすい。シリコン電池の表面に見られる微細な凹凸構造に対応するのも難しい。

シリコンとペロブスカイトの積層型太陽電池における、インクジェット印刷による薄膜成膜結果

光素科技はインクジェット技術を活用することで突破口を見いだした。高精度プリンターのように材料を塗布することで、電池表面の微細な凹凸構造をそのまま保てるようにした。生産スピードも既存の生産ラインに匹敵するため、ペロブスカイト電池の量産実現に向けた鍵を握ると期待される。

製造用のインクも販売

ただし、実用化のハードルは極めて高い。ペロブスカイト材料はノズルの目詰まりを引き起こしやすく、1回のトラブルで数万元(数十万円)もの損失が発生する。創業者の王迎松氏によると、海外顧客と製造法を共同開発していた初期段階には、数十回にわたるノズルの目詰まりを経験しながらノウハウを蓄積していったという。最終的に独自の技術を確立し、現在では塗布装置の納入と長期的な安定稼働を保証できる中国で唯一のプレイヤーとなった。

目下、ペロブスカイト電池の基礎研究から量産まであらゆるニーズをカバーした製品ラインを展開している。量産用の塗布装置はタンデム型やフレキシブル型など、複数の先端技術にも対応できる。注目に値するのは、装置単体の販売にとどまらず、専用インクと組み合わせた新たなビジネスモデルを確立しようとしている点だ。ペロブスカイト電池の製造設備では、欧米企業が依然として主導権を握っているが、光素科技は国際的なノウハウと中国国内のニーズを融合させることで独自のポジションを確立した。

太陽電池大手も参入うかがう

太陽電池大手が急ピッチで量産計画を進めるなか、塗布装置の検証期間も短縮傾向にある。王氏は、現時点ですでに納入済みの装置の安定稼働に注力する一方で、材料の開発もペースアップしていると説明する。ただ、業界には課題も多い。一部の顧客は複数のインク材料に対応した塗布装置を求めており、専用インクで新たなビジネスモデルを確立する同社の戦略と整合を図る必要に迫られている。

さらに、大手の太陽電池メーカーもこの分野への関心を高めており、ある上場企業は今年初めに専門チームを立ち上げ、関連技術の経験者の獲得に乗り出している。競争が激化するなか、光素科技は当面の間、先行優位を維持できるとみられるが、今後も成長を続けられるかどうかは生産体制の迅速な確立と顧客の定着率にかかっている。

同社はすでに、インクジェット塗布装置開発センターを稼働させており、今後は「製造法・材料・装置」を一体化したワンストップ型のソリューション提供を目指すという。

*1元=約20円で計算しています。

(翻訳・畠中裕子)

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