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自動運転レベル2(部分運転自動化)の普及が進み、自動車メーカーがレベル3(条件付き運転自動化)のステップに差し掛かったところで安全面で待ったがかかった。
先日、独ボッシュが上海で開催した「スマートモビリティ技術交流サミット」で、同社シャシーシステムコントロール事業部中国エリア総裁の陳黎明氏は、ボッシュのレベル2自動運転技術が搭載された車種は今年すでに40を超えるが、レベル3への進展は想定よりかなり遅れていると明かした。
また、「自動車メーカーの自動運転に対する熱が冷めており、今のところ明確なスケジュールはない」とも語った。
「吉利汽車(GEELY)」「上海汽車(SAIC MOTOR)」「長安汽車(Changan Automobile)」「広州汽車(GAC)」の各社もレベル3には明確なスケジュールをたてており、特に吉利汽車は2020年に世界中でレベル3の量産を行うと発表していた。前出の陳氏は「2021年にレベル3を完全実用化するのは技術的な面では問題ない。商用化できるかどうかが問題だ」と言う。
世界中のトップ自動車メーカーが揃ってレベル3の量産を遅らせている原因について「安全を検証するための作業とそのコストが想定を上回ったためだ」とボッシュ自動運転プロダクト関係者は明かす。
<h3>冗長性を持たせた設計コストが重くのしかかる</h3>
米SAE(自動車技術会)の基準では、自動運転レベル3は緊急時には人が運転操作を担うとする条件がある。これをクリアするため、システム障害が発生しても安全な走行が確保されるよう、車両には認知(センサー)、判断、制御すべてのシステムにおいて冗長性に配慮した設計が必要となる。これがコストを増大させ、商用化における大きな課題となっていると陳氏は説明する。
これ以外にも、業界の安全検証基準の欠如がレベル3へ積極的に進めない一因となっている。
独アウディは2017年7月、フラッグシップモデルのセダン「Audi A8」で自動運転レベル3を実現すると発表していた。しかし、正式には未だリリースされていない。同モデルは実際にはレベル2基準で販売している。
この現状を打開すべくアウディ、独BMW、独ダイムラーはボッシュなどのティアワン・サプライヤーと協力し安全基準の推進に動いているが、実現するまでに1~2年はかかるとみられる。
<h3>新興自動車メーカーによる現状打開への模索が進む</h3>
統一された安全検証基準がない。この現状を打開すべく新興EVメーカー「小鵬汽車(Xpeng Motors)」と米テスラは代替策を採った。それは、冗長性の部分を人が代わりにおこない、安全設計を補うというものだ。
小鵬汽車が2020年に発表する新型スマートEVセダン「P7」には、高速道路での自動運転を可能にする自動運転レベル3が搭載されるという。しかし、同社自動運転事業部の副総裁、呉新宙氏は次のように説明する。「P7には高性能なドライバー監視システムが搭載されており、ドライバーは走行中に道路から10秒以上視線をそらすことはできない。レベル2と同様にドライバーは道路を注視しつづける必要がある」
「我々は公式にレベル3だという言い方はしていない。統一された基準はなく、ボッシュやアウディは、レベル3ではドライバーが道路から10秒以上視線を離すことが十分に可能だとしている。しかし我々が現在こだわっているのはそこではなく、まずは高速道路上での自動車線変更を実現する」
ドライバーの視線を監視する設計を加えるだけでコストは大幅に上がる。小鵬汽車が目指すべきは、コストを極力おさえたうえで、最大限の機能を実現することだ。モデルP7の冗長設計は、おもにセンサーの部分にみられるという。
公式発表によれば、小鵬汽車モデルP7の認知(センサー)系システムには、12の超音波センサー、自動運転カメラ13台、車内カメラ1台、5つの高精度ミリ波レーダー、高精度な地図やGPSが搭載されている。
つまりカメラと超音波センサーは冗長設計となっているということだ。これは米テスラのオートパイロット2.0のスペック数を超える。
この装備で十分に安全性を確保できるのかという疑問が残る。
現状求められる機能を実現するには十分だが、AIの性能については、カメラやセンサーの処理能力のほか、ディープラーニング、アルゴリズムまで検証する必要がある。最適化をどこまで進めればよいか、極限までシミュレーションできたのか、これについて誰も検証することはできないと呉氏は語った。小鵬汽車はシリコンバレーにセンサー系の開発チームを抱えているが、その技術力はP7のリリースによって検証されるだろう。
より複雑な自動運転シーンに対応することでアルゴリズムは絶えず最適化される。一方で次世代の自動運転アーキテクチャに、より多くのアルゴリズムが組み込まれていくことになるだろう。
自動運転レベル2の主体は人で、緊急時にはドライバーによる対応が必要となる一方、レベル4はドライバー不要の完全な無人運転だ。この実現には少なくとも5年はかかるというのが業界の見解である。
テスラは早くも、自動運転がビジネスとして成り立つことを証明してみせた。米証券取引委員会(SEC)への報告書「フォーム8-K」によれば、オートパイロット及び自社開発した「FSD(フルセルフドライブ)」関連事業の今四半期売り上げは3000万ドル(約33億円)に達し、決算では黒字となった。
新興EVメーカーは生き残りをかけ、従来の自動車メーカーも構造転換を急ぎ、自動運転のビジネス化に尽力している。先に一歩リードするのはどのメーカーだろうか。(翻訳:貴美華)
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