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昨年の夏、ソーシャルECアプリ「小紅書(RED)」は各大手アプリストアから削除され、新規ダウンロードができない状態になった。10月には規制が緩和され、一部アプリストアで復活したものの、未だにかつての勢いを取り戻せないでいる。
中国のモバイル市場調査会社「QuestMobile」の調べによると、小紅書の昨年6月のMAU(月間アクティブユーザー数)は9300万人だったが、9月には7288万人へと明らかに減少しており、ダウンロード規制の影響が垣間見える。
小紅書は、ほんの少し前まで掛け値なしの大人気アプリだった。ユーザー数は2018年6月に1億人を超え、昨年7月には3億人を突破し、MAUも1億人の大台に乗った。小紅書を運営する「行吟信息科技(Xingin Information Technology)」は2018年、アリババとテンセントから資金調達をしており、企業評価額は30億ドル(約3300億円)に達していた。
モバイルインターネット市場の急成長に翳りが見え始める中、小紅書の成長はまぶしすぎた。だが、アプリストアからの削除は小紅書の急成長にブレーキをかけ、その成長戦略とビジネスモデルが抱える問題を顕在化させた。
ライブコマースを打開策に
小紅書は打開策として、昨年11月に開いたブロガーやインフルエンサーなどのクリエイター向けイベント「小紅書創作者開放日」で「創作者123計画」を発表した。
「創作者123計画」の「1」はクリエイターセンターの創設、「2」はクリエイター向けの公開講座とヒアリングセッションの定期開催、「3」はクリエイターとブランドを効率的に結びつける「ブランドパートナー」、クリエイターのコンテンツ収益化を後押しする「好物推薦(商品推薦)」および「ライブコマース」の各プラットフォーム開設を指す。
小紅書は「創作者123計画」で、中堅クリエイターへの支援を通じてコンテンツをめぐるビジネスエコシステムのグレードアップを図るとともに、商業化と収益化を加速させる方針だ。
小紅書の従来のビジネスモデルはコンテンツ、マーケティング、電子商取引(EC)の三本立てだった。小紅書は今回、そこに「商品推薦」と「ライブコマース」を加えた。
ライブコマースの領域には、既に「淘宝直播(タオバオライブ)」「蘑菇街(MOGU)」「拼多多(Pinduoduo)」など大手ECプラットフォームがひしめいている。小紅書はそれでも、アクセス数を回復させ売り上げを伸ばすため、レッドオーシャンに飛び込むまざるを得なかった。
人気復活への険しい道のり
小紅書はアプリストアから削除された理由を公表していないが、業界ではコンテンツのポリシー違反が主な原因だったとの見方が広がっている。
小紅書は2013年6月に創設され、当初は海外の商品情報を共有するユーザー参加型コンテンツ(UGC)を主体としていた。越境ECが盛んになった翌14年、小紅書はECプラットフォーム「福利社」をローンチ。16年4月に中国政府が打ち出した「越境EC小売輸入税収政策」は越境ECを通じた輸入商品にも一般貿易と同様の税金を課すとし、業界全体に衝撃を与えた。これを受け、小紅書は17年下半期、「コンテンツ+EC」プラットフォームへと転換。18年3月には生活雑貨の自社ブランド「有光REDelight」をローンチ、同年6月には上海に体験型店舗「RED home」の1号店をオープンしている。
小紅書は露出度の向上にも力を入れており、人気芸能人の起用、人気バラエティー番組のスポンサー、映画・テレビドラマでのプロダクトプレイスメントなどを行っている。
小紅書はこうした手法で爆発的に成長したが、問題も発生した。
小紅書はユーザー参加型コンテンツと商業化されたコンテンツの区別があいまいだったため、アクセス数の不正水増し行為や誇大広告などの問題が相次いだ。プラットフォームの運営・審査・推薦システムを強化して対処したものの、小紅書の成長速度に能力が追いつかなかった。これが小紅書のアプリストアからの削除につながる直接的な原因だと考えられる。
小紅書は、当初の小規模な垂直統合型コミュニティから総合娯楽コミュニティに変化し、本来のムードが薄まったという側面もある。また、短編動画投稿をコンテンツに加えたが、他のプラットフォームとの差別化はできていない。
EC事業については、QuestMobileが発表したコンテンツとECに関する研究リポートで、小紅書のコンテンツに興味を持ったユーザーの多くが、小紅書ではなく「淘宝(タオバオ)」や拼多多、「京東(JD.com)」「唯品会(VIPSHOP)」など他のECサイトで商品を購入していることが明らかになっている。
小紅書は大きな試練に直面している。コンテンツをめぐるビジネスエコシステムの早急なグレードアップと整備が必要なこと、ライブコマースや短編動画などへの成長分野でライバルに追いつくことをはじめ、解決すべき問題はいずれも単純なものではない。人気復活までの道のりは険しく長い。小紅書の新たな挑戦は始まったばかりだ。
(翻訳・田村広子)
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