【前編】2020年はショート動画アプリ2強時代 TikTok本国版「抖音」の独走に終止符なるか

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春節(旧正月)や新型肺炎の流行で外出を控えたユーザーからショートムービー系のアプリが脚光を浴びている。

春節の後、ショートムービーのDAU(日間アクティブユーザー数) と使用時間は再び目に見えて増加し始めた。中国の調査会社「QuestMobile」の調べによると、春節期間のアプリ利用者のうちショートムービー系のDAUは8000万以上増え、業界トップの増加幅だった。「抖音(Douyin、海外版は「TikTok」)」のDAUは「快手(Kuaishou、海外版は「Kwai」)」を少し上回り、早くも春節(1月25日)前にDAU4億を達成したと発表した。

業界関係者の多くは、中国のショートムービー利用者の上限は7億人ぐらいだろうと予測する。たとえ抖音と快手のユーザーが一部重複するのだとしても、この市場に残された成長余地はもうそれほど大きくない。しかし、良いニュースもある。ショートムービーの利用時間が増加していることだ。エンターテイメント系のアプリにおいては、ショートムービーだけが2019年第4四半期も使用時間が伸びている。

今年もショートムービーの勢いは続いているが、市場の寡占化も進んでいる。結果として、抖音と快手の2強が利用者もコンテンツ制作者もみな独占してしまった。超大手テンセントの「微視(WeShow)」であろうと、かつて業界に忽然と現われ奇襲をかけた無名のスタートアップによる「刷宝」であろうと、ショートムービーの世界では上記の2強以外にもはやチャンスはないだろう。強者はますます強くなる。抖音と快手の二社間でも、アクセス数で劣勢の快手は抖音によってさらに蚕食されたり、引き離されたりしないよう警戒しなければならない。

抖音:成長は曲がり角

抖音はライバルである快手に対する優位を固めてもなお、積極的な成長戦略を保持し続けている。

2020年の春節、抖音の運営元「バイトダンス(字節跳動)」が6億3000万元(約97億円)で新春映画「囧媽(Lost in Russia)」の版権を買収した後、傘下のショートムービーアプリ「西瓜視頻(Xigua Video)」のDAUが約30%増加した(同アプリを通じて映画を配信したため)。これより前の1年間、西瓜視頻のDAUは5000万あたりを行き来していたが、なかなか増加しなかった。同じくバイトダンス傘下のニュースアプリ「今日頭条(Toutiao)」のDAUも1億2000万だが、もう1年以上横ばい状態だ。

ある専門家は、ショートムービーアプリのDAUは4億~4億5000万が限界だと予測する。抖音はいち早くDAU4億に達しており、成長の頭打ちをより強く意識しているだろう。抖音ブランドが取り込んだばかりのショートムービーアプリ「抖音火山版(Huoshan Short Video、原・火山小視頻)」、長く横ばいが続く前出の今日頭条と西瓜視頻などバイトダンスの主力製品はいずれも昨年のうちに曲がり角を迎えてしまったのだ。

バイトダンスは主要製品への継続的なテコ入れをする以外に、抖音が今年も成長を続けるために地方と海外に活路を見出すべきだ。バイトダンスはすでに昨年から地方や海外に力を入れ始めている。

実際、地方での抖音人気はなかなかのもので、火山小視頻が抖音に併合することになったのもそのためだ。もともと地方在住者ターゲットだった火山小視頻のユーザーは抖音とかなり重なり合っており、成長の余地はもはやないほどだ。

また、抖音が海外版としてリリースしたTikTokの成果は、中国国内の地方市場を攻略するためにリリースした「抖音極速版」を凌いでいる。 抖音が快手(海外版はKwai)との距離を完全に開き、勝負手を固めるには、TikTokによる海外展開が非常に重要なのだ。

2019年末時点でのTikTokのDAUは約2億1000万で、国内版の半分を超えた。中でもインドでのDAUは1年で4倍になり、北米でも1年で成長ペースが3倍にまで加速している。KwaiがTikTokより優位なのはブラジルと東南アジアの一部だけだ。

抖音は早くからバイトダンスのアクセス数獲得とキャッシュフローにとっての最大の武器だった。2019年のバイトダンスの売上高は1300億~1400億元(約2兆~2兆1000億円)で、そのうち抖音の貢献分は800億~900億元(約1兆2000億~1兆4000億円)だ。抖音の前年の売上高は約500億元(約7700億円)だったが、この成長幅は広告によるものに加え、2019年に入ってから始めたライブ配信という新ビジネスから生まれている。

2019年初め、抖音ライブ配信の月次売上高は約2億元(約31億円)だったが、1年間で数十倍に増加した。同年末には快手ライブ配信の月次売上高とほぼ横並びになる。ライブ配信事業はずっと快手の稼ぎ頭だったが、今や参入から2年足らずの抖音に追い越されそうなのだ。

現在、ライブ配信サービス業界における抖音と快手のシェアを合わせると約50%。抖音がライブ配信に参入したことで業界の勢力図と可能性は完全に変わった。2番手集団の「YY(歓聚時代)」「斗魚TV(DouyuTV)」「虎牙直播(Huya)」「陌陌(Momo)」などは成長の余地を失っている。

また、抖音はEC事業については今年も自社構築を選択せず、広告によって他社の集客を支援する方針のようだ。2019年、抖音はアリババ傘下のECモール「タオバオ(淘宝)」と総額70億元(約1100億円)に上る提携の枠組みを固め、10億元(約150億円)はインフルエンサーによる販促へのコミッションに、60億元(約920億円)は広告に充てることで合意した。もしタオバオとの関係がこのままで推移するならば、抖音のEC事業に関する方針は今年も変わらないだろう。

抖音は自社でECを手がける意向がないわけではないだろう。しかし、この領域ははコンテンツプラットフォームにとって新たな挑戦だ。抖音は広告収入のほとんどを二類電子商取引(第三者プラットフォ―ムに掲載した広告から誘客するタイプのEC)業者から得ており、自社のECシステムを構築すると多くの広告主を失うことになり、広告収入が犠牲になってしまう。

抖音は常にバイトダンスの最前線にいる事業だった。2019年、抖音の広告収入のほぼ半分をゲームメーカーが占めたことから、バイトダンスは広告から一歩踏み込み、ゲームの配信、共同運営、代理運営、自主開発などサプライチェーンのより上流に食い込んでいる。

バイトダンスが開発あるいは代理運営を手がけたカジュアルゲームのうち、昨年にiOSの無料ゲームアプリトップ10にランクインしたのは合計13本だった。カジュアルゲームやミニゲームにおいて魅力的なタイトルを見出し、独占代理権を獲得し、内容に修正や改良を加え、商業化するまでの基本的な流れをバイトダンスはすでに構築したといえる。

ゲーム事業は2020年のバイトダンスにとって成長を狙える事業であり、娯楽消費分野でより多くのジャンルに浸透し、収入を多様化するために必要な一歩となる。

後編:2020年はショート動画アプリ2強時代 快進撃止まらぬ「快手」、成長維持には新ストーリーが必要

(翻訳・永野倫子)

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