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インド発の格安ホテルチェーン「OYO」で働く謝さんは、自宅待機中に突然のリストラを言い渡された。「思いもよらないことだが、私のチームは一人残らず解雇されてしまった。他のチームも同様だ」と語る。
事業方針の転換に伴い問題が噴出したOYOだが、さらに今回の新型コロナウイルスの流行を受けて、中国で尋常ではない数のリストラに踏み切った。従業員の60%を解雇したという報道もあるが、現場の声によると昨年10月時点で1万人いた従業員のうち残ったのが1500人から2000人ほどというから、約80%が解雇されたことになる。
人員削減にとどまらず、中国事業そのものも縮小されている。社内メールによれば、3月1日以降、中国国内を11エリアから7エリアに調整し、管轄地区センターも48カ所から30カ所に削減して管理するという。
2019年10月、創業者のリテシュ・アガルワル氏やソフトバンクグループ、中国VC「光速中国(Lightspeed 」などの投資家から15億ドル(約1600億円)を調達したOYOは、企業価値は約100億ドルと評価され、インドで2番目に高いスタートアップとなった。
未払金、一方的な契約変更
OYOの上海本部で勤務していた従業員の多くは、解雇に伴い勤続年数に応じた経済補償金を受け取っている。しかし中国全土に散らばる市場開拓スタッフには補償金がないばかりか、数カ月分のインセンティブも未払いだという。この未払金を請求するため、多くの従業員が上海本部へと赴いている。
OYOは加盟店からの怒りも買っている。「今月末にはOYOとの契約を解除するつもりだ。もう提携するつもりはない」と語るのは杭州でOYO加盟店のオーナーを務める于さんだ。
2019年にフランチャイズ契約を結んだ時、OYO側は14部屋に対して年間37万元(約566万円)の最低保障額を提示し、超過分の負担に関してはOYOと分担することで合意した。しかし2020年に入り、OYOは一方的に最低保障額の支給を撤回し、その上で契約を維持するか解約するかの決定を迫った。
関係者の話では、OYOは契約解除が新型コロナウイルスの感染拡大による「不可抗力」によるものだとして、事前に通知することなく直ちに契約を解除でき、OYO側に責任は一切ないと主張しているという。
コスト度外視の拡大
インドからスタートしたOYOは、中国に進出した2年あまりで驚異的な成長を遂げた。公式サイトによれば、現在OYOは中国338都市でホテル1万9000軒、78万室を展開している。
「OYO本社は契約した客室数の増加だけに注目しており、他のデータには無関心だ」と従業員の一人は語る。
もともと中国の格安ビジネスホテルの相場が100元(約1600円)前後だったところ、OYOは客室稼働率を上げるために29元(約450円)や39元(約600円)という破格の値段で売り出し、利用者を集めてきた。
あるオーナーは「稼働率を高めるために価格を下げるというのは分かる。ただ毎日満室の状態でもその価格を維持するというのは、本来の価格システムを全く無視している」とこぼす。このような価格コントロールのもとでは、いったん消費者が低価格に慣れてしまうと、通常価格に戻したホテルでは客離れが起きてしまう。
この悪循環に陥った状態では、OYOが加盟店を増やすほど損失も膨らんでいく。
2月17日発表の2019年度(2018年4月~2019年3月)決算によると、売上高9億5100万ドル(約1020億円)のうち中国市場での収益が32%を占めているが、3億3500万ドル(約360億円)に膨らんだ純損失に関しては中国での損失額が64%に上っている。
2019年5月、中国のホテルグループ「華住酒店集団(Huazhu Hotels Group)」の季琦董事長は、「中国のホテルブランドが十分にある今、問題だらけのホテルチェーンは必要ない」と発言していた。
1年近く後にこの言葉が真実になろうとは誰が予想できただろう。中国市場に巨額の資金とエネルギーをつぎ込んだものの最終的には大規模なリストラを決行し、地方都市市場を自ら手放したOYOに明日は訪れるのだろうか。
作者:Tech星球(ID:tech618)、周暁奇
(翻訳・畠中裕子)
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