ソフトバンクG、中国のライドシェア最大手「DiDi」の自動運転事業に330億円出資で合意か

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中国のライドシェア最大手「滴滴出行(DiDi)」から分社化した自動運転事業部門が近くソフトバンクから資金を調達する。

米テック系ニュースメディアThe Informationの24日付の報道によると、ソフトバンクグループは自動運転事業を手がけるDiDiの子会社に対する3億ドル(約330億円)の出資案件を主導することで合意完了に近い。案件の詳細やソフトバンク以外の出資者、当該子会社の評価額などについては触れられていない。また、DiDiもこの件に関してコメントを出していない。

昨年7月には事情に詳しい関係者の話として、DiDiが筆頭株主であるソフトバンクなどと自動運転事業への出資について交渉を進めていると伝えられていた。8月になってDiDiは自動運転事業部を分社化し、同社CTOの張博氏が新会社のCEOに就任すると発表した。

自動運転事業は将来的に最も重要な技術の一つに数えられている。一方で、長期にわたって投資が必要な事業でもある。財務上の見栄えを考慮して自動運転事業を分社化した例として、2016年にグーグルの先端技術研究機関「Google X Lab」から独立した米ウェイモ(Waymo)や、上場を目前とした2019年4月に自動運転部門をスピンオフして10億ドル(約1100億円)を調達した米ウーバーテクノロジーズなどがある。

中核戦略から独立事業へ

2016年、DiDiの程維CEOは初めて自動運転事業の強化について言及し、これに特化したラボを設立した。その5カ月後には米シリコンバレーにもラボ「Didi Research America」を設立し、ウェイモのエンジニアなど優秀な人材を次々と引き抜いている。2017年11月には、同じくシリコンバレーにビッグデータやスマートモビリティの研究・開発を手がける一大拠点を設立。2018年2月には初の自動運転車両をお披露目している。

同年5月、Didi Research Americaは米カリフォルニア州で自動運転車の試験運転の許可を取得。同州で53社目のライセンス取得企業となった。9月には北京市でも同様に路上試験のライセンスを取得している。

程CEOは、自動運転業界ではトップ2社しか生き残れないとしており「現在はグーグルがナンバー1。DiDiは最終的にそれに次ぐナンバー2になりたい」と述べている。

DiDiの主要事業であるオンライン配車事業では、乗客が運転手に殺害される事件が立て続けに発生し、DiDiはセキュリティ面を重視しながら成長を維持していく必要に迫られた。事件が社会問題化した2018年、DiDiは109億元(約1700億円)の赤字を計上している。また2019年の上場後に株価が急落した米国のウーバーやLyftの例からもわかる通り、セカンダリーマーケットはオンライン配車サービスを手がける企業に対して必ずしも好意的なわけではない。

2019年、DiDiは主力事業に集中し、デリバリー、旅行などその他の事業は徐々に停止した。後に自動運転事業は再始動したが、それは子会社として独立しての再出発だった。

DiDiの自動運転車の車内(DiDiのWeChat公式アカウントより)

苦境打開に3億ドルで足りるか?

自動運転事業にはお金がかかる。ソフトバンクが3億ドルを出資したところでどれほどの助けになるのか。

自動運転各社の財務諸表を見ると、グーグルはウェイモに毎年10億ドル(約1100億円)の資金を提供しており、米ゼネラルモーターズ傘下の「Cruise」は2018年に15億1200万ドル(約1700億円)の損失を計上している。2016年に始動したウーバーの自動運転事業部門「Uber ATG」は年間2億4000万ドル(約270億円)を費やしている。

ソフトバンク側も今後いつまでもDiDiの支援を続けられるわけではない。

ソフトバンクはDiDiのみならず、自動運転業界全体に目を向けており、傘下のビジョンファンドはCruise、Nuro(ニューロ)、ウーバーにも等しく出資している。加えてソフトバンクが出資したウーバーは上場後に株価が急落、コワーキングスペースを展開する米「WeWork」も上場に失敗と、ソフトバンク自身も深刻な資金問題を抱えている状態だ。23日には4兆5000億円の資産を売却して負債削減および自己株式取得を行うと発表している。

自動運転の事業価値はあくまで想像の範囲内に留まる。中国のPEファンド「辰韜資本(ESTAR CAPITAL)」の賀雄松氏は、自動運転事業の抱える主な問題点について「技術的な成長を楽観視しすぎているし、自動運転の実用化は期待されたほど進展していない。特にロボタクシーにおいては、今後5年以内に大規模に普及することは基本的にはないだろう」と指摘している。

DiDiにとって自動運転事業は必ず勝ち取らなければならない未来だ。業界の構図を劇的に変える「破壊的なイノベーション」につながるからだ。

自動運転分野において、DiDiは自身の強みを持ち合わせている。ある自動運転企業の経営幹部によると、自動運転におけるハードウェアのスペックでは企業間で大きな差はないが、カギとなるのアルゴリズムにおいて、DiDiはすでに大規模な道路網データを蓄積しているという。

昨年12月、中国工業・情報化部などが主催した「世界スマートコネクテッドカー大会(2019 World Autonomous Vehicle Ecosystem Conference)」でDiDiの張博CTOは、「自動運転産業全体が第2フェーズに入った。技術が真の意味で製品化され、製品が人々の生活に浸透していく段階だ。このフェーズでは企業間の競争ではなく、アライアンス間の競争になる」と述べている。

DiDiのプラットフォームでは毎年、1000万人のドライバーが稼働している。こうした運営システムは自動運転事業にも価値をもたらしている。DiDiはさらに自動車メーカー31社およびTier1(一次サプライヤー)とともにシェアリングモビリティのアライアンス「洪流聯盟(D-ALLIANCE)」を結成し、トヨタ自動車、フォルクスワーゲンなど大手4社とも合弁会社を設立している。

資金を確保し、不採算事業の自動運転事業を独立させたことで、DiDiのさらなる成長への道のりはより平坦になったといえるだろう。
(翻訳・愛玉)

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