NVIDIAの対抗馬たり得るか 中国「燧原科技」、クラウドによる深層学習で勝負

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NVIDIAの対抗馬たり得るか 中国「燧原科技」、クラウドによる深層学習で勝負

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AIおよびクラウドコンピューティングを手掛ける「燧原科技(Enflame Technology)」がシリーズBで7億元(約110億円)を調達した。リード・インベスターは半導体産業投資ファンド「武岳峰資本(SummitView Capital)」、コ・インベスターは既存株主テンセントのベンチャー投資部門。調達した資金は主に製品の量産と業務拡大、技術サポートチームの拡充、専門家人材の採用に充てられ、クラウドを利用したディープラーニング(深層学習)製品の開発にも引き続き資金を投入していく。

燧原科技は2018年3月に設立され、クラウドを利用した深層学習による汎用AIソリューションを顧客に提供している。パブリッククラウド、プライベートクラウド、ハイブリットクラウドなどのクラウド業者に対しAIを通じた計算能力の向上をもたらし、金融、医療、教育業界および中国政府が提唱する「新型インフラ」の1つ、スマートデータセンターなどにサービスを提供する。

公式情報によると、燧原科技は昨年12月にAIチップ「邃思」のトレーニングを高速化するためのグラフィックボード「雲燧T10(CLOUDBLAZER T10)」を発表した。雲燧T10はGPUが20 TFLOPSに達し、BF16データフォーマットをサポートしている。また、自社開発の高速インターネット技術「ESL(Enflame Smart Link)」を採用、データ伝送速度200GB/sを実現し、大規模データセンターにおけるAIのトレーニングニーズに対応可能だ。業界で主流の深層学習フレームワークをサポートしており、完全なコンパイル、デバッグ、最適化のためのツールチェーンを提供している。開発者のためにSDK、演算ライブラリ、ユーザー定義の演算子用インターフェイス、細かいカスタマイズが可能なオープンプラットフォームを提供している。現在、顧客からの多様なAI活用シーンへのニーズに対し、顧客との協力関係を深めながら、事業化と規模拡大を進めている。テンセントとも密接な業務提携を行っているという。

燧原科技は2018年4月にシードラウンドで資金を調達し、「亦合資本(Yihe Fund)」、「真格基金(ZhenFund)」、「達泰資本(Delta Capital)」、「雲和資本(Yunhe Partners)」、「上海科創投(Shanghai STVC)」が出資に参加した。2018年6月にプレシリーズAで3億4000万元(約51億3000万円)を調達、リード・インベスターはテンセント、コ・インベスターは亦合資本、真格基金、達泰資本、雲和資本だった。2019年6月にシリーズAで3億元(約45億3000万円)を調達、リード・インベスターは「紅点創投中国基金(Redpoint China Ventures)」、コ・インベスターは「海松資本(Oceanpine Capital)」、「陽光融匯資本(Riverhead Capital)」、「信中利資本(China Equity Group)」、雲和資本、テンセントだった。

燧原科技の資金調達履歴

AIチップは近年、中国国内のAI分野で注目を浴びており、この分野にはアリババ、テンセント、バイドゥ、ファーウェイなどの大手を始めとして、「センスタイム(商湯科技)」、「Megvii(曠視科技)」「依図科技(Yitu Technology)」などのコンピュータビジョン関連企業、「寒武紀(Cambricon)」、「地平線機器人(Horizon Robotics)」、「深鑑科技(DEEPHIi Tech)」などのチップ開発系スタートアップを含む多くの企業が参入している。燧原科技はクラウド環境によるAIの深層学習で市場へ切り込んでいる。

AIの応用シーンが多様化するに伴い、新たなアルゴリズム、新たなモデルが続々と登場し、モデルのパラメータ数は指数的に増加しており、コンピューティング能力への需要はますます大きくなっている。市場調査企業Tracticaは、世界のAIチップ市場の規模が2025年に726億ドル(約7兆8000億円)、成長率は46.14%に達すると予測している。AIを研究する非営利団体「OpenAI」は、コンピューティングの需要が3.5カ月ごとに倍増し、毎年10倍近く増えると予測している。

現在、クラウドでAIのトレーニングを行う既存製品は主に米半導体メーカー「NVIDIA」のもので、市場は長い間価格の高い海外企業に独占されており、これによって中国国内のクラウドによるトレーニングのコストも高くなっている。また開発エコシステムがオープンソースではなく、関連企業に対する技術サポート力に欠けており、中国国内で日増しに増加するAI関連の需要を満たせない。製品のアップグレードやバージョンアップの頻度も制限されている。

NVIDIAと比較した燧原科技の優位性は、AIに特化して設計されたチップとコストパフォーマンスの高さだ。さらに技術サポートを現地化して提供でき、個別の最適化、カスタマイズのニーズにも対応できる。技術と価格の敷居が下がることで、より多くのAI開発者がトレーニングを通じて市場に優れたモデルを提供し、AI市場の規模を拡大し、中国のAI産業の発展を促進できる。

過去にもNVIDIAに挑んだ企業はあったが、製品を実用化できた企業はほとんどない。チップは技術、人材、資本の集約型産業であり、チップ構造の設計だけではなく、相応のソフトウェアエコシステムも必要となる。NVIDIAの発展の歴史を振り返ってみると、AIチップ分野を独占できる重要な要素は、同社のソフトウェアエコシステム「CUDA」にある。

燧原科技はすでにソフトウェアプラットフォーム「馭算(TopsRider)」をリリースしており、今回の資金調達により、このプラットフォームに関わる人材を募集して引き続き機能を拡充させ、エコシステムの構築を進めていくとみられる。

チップ開発によって利益を出すには規模拡大が不可欠だ。規模が大きく、成長の速い応用シーンを見つけることがカギとなる。現在、AIトレーニングチップは主にデータセンターに展開されており、スマートデータセンターはAIコンピューティングの重要なインフラであり、この市場の潜在価値は大きい。IT調査企業IDCによると、2018年の中国のインテリジェントサーバーの市場規模は前年比131%増の13億500万ドル(約1500億円)、2023年には43億2600万ドル(約4700億円)、市場全体の年平均成長率は27.08%に達する。AIチップが機器コストの30~35%を占めていることから、中国サーバー市場のAIチップへの需要は今後100億元(約1500億円)を突破する見込みだ。
(翻訳・普洱)

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