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7月1日夜、何の前触れもなく、大手ECプラットフォーム「拼多多(Pinduoduo)」の黄峥CEOは、全従業員向けの公開メールにおいてCEOを辞任することを表明した。後任は前CTOの陳磊氏で、黄氏は董事長として中長期戦略やコーポレートガバナンスの改善に集中するという。
大手ECプラットフォームのCEOの退任といえば、アリババグループのジャック・マー元会長のことが思い浮かぶが、彼が辞任した当時のアリババはすでに15年の歴史を持つ巨大企業に成長しており、後任についても事前に情報が出ていた。また、同じくEC大手の「京東(JD.com)」の劉強東氏は、今なお同社の董事長兼CEOである。それに比べ、黄氏はまだ40歳であり、拼多多は設立から5年未満という若さだ。
なぜこのタイミングで退任することになったのか、黄氏の狙いを分析してみよう。
自信を持った辞任
このタイミングで辞任しても、黄氏は会社の支配権において不安がない。
辞任の公表前、黄氏は拼多多の43.3%の株式と88.4%の議決権を保有していた。辞任に際し一部の株式を手放したが、それでも80.7%の議決権を持ち、会社に対する絶対的な支配権を握っている。拼多多は設立後2年余で上場を果たしたため、経営陣の持ち株が希薄化されることなく、上場後も自分たちの構想通りの経営ができている。
しかし、同社の成長の速さは諸刃の剣でもある。5年足らずで時価総額が1000億ドル(約10兆円)を超え、年間アクティブユーザー数が6.28億人に達するなど、本業の方は順調に成長しているが、コーポレートガバナンスの成長や中長期戦略はこのスピードに追いついておらず、今後の安定的成長を阻害する要因になる可能性がある。
そのため、黄氏の辞任は、拼多多が戦略を一変させようとしていることの表れだと言える。これまでの5年間は事業拡大に突き進み、これからの5年間は組織と事業の成長をともに重んじることになるということだ。本業は信頼できる陳磊氏に任せ、黄氏自身は戦略とガバナンスに集中するという分業体制となる。
第一世代のインターネット企業の創業者と異なり、黄氏や「字節跳動(バイトダンス、Bytedance)」の張一鳴氏を代表とする新世代のインターネット企業の創業者たちは、マネジメントやガバナンスの大切さにより早く気がついている。企業改革ためには、権力の一部を手放してもよいと考えているのである。
アリババに何を学ぶのか
アリババにとって、拼多多の成長はこの数年間の最大の悩みの種である。アリババは十数年間かけて中国のECの環境を作り上げてきたが、拼多多は後発の強みでアリババより速く、効率よく成長することができた。今回の人事調整においても、アリババに学んだ点が多数ある。
黄氏は公開メールにおいて、「パートナー制度を含むコーポレート・ガバナンスの構造」を重点的に研究すると表明している。中国のインターネット企業において、パートナー制度をもっとも早くから採用したのはまさにアリババであった。
アリババのパートナー制度は特殊なものである。制度を立ち上げた時点でのアリババは議決権の異なる二重構造株式を採用しておらず、持株比率の低い経営陣が会社の支配権を失う恐れがあった。そこで、パートナー制度導入し、新規株主の議決権をパートナーに委任してもらい、さらにパートナーの合議によって取締役会の半数以上のメンバーを指名できる制度を設け、支配権を失わないようにしたのである。
この制度のもう一つの強みは、ワンマン企業に陥ることなく、集団の知恵を生かすことができる点である。特にカリスマ創業者の多いインターネット企業の場合、後継者の選定は難題であり、その点でもパートナー制度は有効だ。これまでできるだけ公の場に姿を表さず、控えめな姿勢を貫き通した黄氏がこの制度に興味を持ったのも想像に難くない。
拼多多のパートナー制度はまだ始まったばかりだが、現時点で入手できる情報を見る限り、パートナーの権限、就任や離任の条件はアリババと非常に似ていることがわかる。パートナーへのインセンティブとして、黄氏は個人が所有する拼多多の3億7077万2220株の普通株(総株式の7.74%に相当)をパートナー陣に分与している。
拼多多のパートナーたちの当面の任務は人材育成になるだろう。同社は給与は高いものの、人材育成の不十分さが指摘されていた。そのため、黄氏は昨年の4周年記念大会で人材育成システムを整備していることを強調し、若手が拼多多のリーダーになると展望した。
事業ではアリババを追いかけ、マネジメントではアリババから学ぶ。変化を柔軟に受け入れてきたのが拼多多のこれまでの5年間だとすれば、今後の5年間はアリババの20年間のノウハウを吸収し、まわり道をせずに成長を目指す時期になるだろう。アリババにとって、拼多多はより強力なライバルになりそうである。
(翻訳:小六)
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