シャオミ、コスパ重視からハイエンド路線へ 初の65型有機ELテレビで利益上げるか

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シャオミ、コスパ重視からハイエンド路線へ 初の65型有機ELテレビで利益上げるか

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中国スマートフォン大手の小米(シャオミ)は7月3日、初めて自社開発した65型有機EL(OLED)テレビ「大師(Master)」シリーズを正式に発売した。同社初の超ハイエンドテレビで、DCI-P3カバー率98.5%の広色域仕様で人工知能(AI)画質エンジンを搭載し、画質を飛躍的に向上させている。

「大師」シリーズの定価は12999元(約20万円)で、シャオミが手掛けるテレビの中では最も高価な部類だが、市場に出回る有機ELテレビに比べれば低価格だ。

ハイエンドの品質を低価格で提供するという、実にシャオミらしい製品だ。

脅かされるシャオミの優位性

シャオミは、今年第1四半期まで5四半期連続で中国国内のテレビ販売台数第1位に輝いている。

2019年中国における主要テレビメーカーの販売台数(奥維雲網(AVC)を基に作図)

シャオミが成功した理由には、テレビ市場全体のスマート化傾向、シャオミのコストパフォーマンス戦略のほか、競合他社の失速などが挙げられる。

シャオミはこれまで、低価格・大画面・品質保証・確実なアフターサービスを求める層をターゲットにしてきた。長い間、ライバルは現れなかった。だが現在、中国人の消費が高度化するのに伴い、市場環境も変化しつつある。

競合他社もコストパフォーマンス戦略を打ち出し始め、シャオミの優位性を脅かしている。海信集団(ハイセンス)とTCL集団は、32型テレビをシャオミと同様の1000元(約15000円)程度で販売しており、スペック面で大きな差はないものの、全体的な品質でシャオミよりも若干優れている。

スマートデバイスメーカーのテレビ製造参入も続く。すでに華為技術(ファーウェイ)が有機ELパネルを採用したスマートテレビを発売している他、OPPOおよびそのサブブランドの「realme」と「一加(OnePlus)」も今年下半期にテレビを発売する見通しだ。

技術力の限界

今回、シャオミが有機ELテレビを発売したことは、5Gスマホに続いて同社が打ち出すハイエンド戦略の一環とみられる。

5Gスマホと有機ELテレビを自社開発するためのコストは小さくなく、シャオミの売上高全体に開発費とマーケティング費用が占める割合は2018年から増加し続けている。とはいえ、開発に投入する資金が相対的に少なすぎるという問題は解決されていない。シャオミがハイエンド市場で業績を上げたいならば、製品開発に一層力を入れる必要がある。

シャオミの総売上高に占めるマーケティング費用および開発費の割合(シャオミの公式データを基に作図)

シャオミの有機ELテレビに関する技術水準について、家電・IT業界のアナリスト梁振鵬氏は、有機ELテレビの技術的コストの8割は有機ELパネルに由来するが、シャオミには自前の技術がなく、完成品を組み立てる能力もないと指摘。さらに「シャオミの自社開発のメインは、外形的なプロダクトデザインとユーザーインターフェースだ。シャオミにはスマホ工場もなく、保有する5G分野の技術特許も非常に少ない」と述べている。

シャオミのハイエンド志向の鍵となる技術は、ほとんどが自社のものではないのだ。

ハイエンド戦略は利益につながるか?

梁氏は、有機ELテレビは遅かれ早かれ液晶テレビに取って代わり、市場の主流になるとの見通しを示す。しかし、シャオミのブランドイメージは高いコストパフォーマンスに支えられているため、有機ELテレビ「大師」シリーズのようなハイエンド製品が消費者に受け入れられるとは限らない。

「大師」シリーズは発売から3日後の7月6日時点で、ECサイト「京東(JD.com)」のシャオミ公式ページでは1311台が予約されているが、実際の納品台数がどうなるかは分からない。「淘宝(タオバオ)」の公式ページで支払いを済ませたことが分かっているのはわずかは9人だ。

梁氏は、有機ELテレビの利益率は液晶テレビよりも高いが、シャオミのコストパフォーマンス路線が利益の幅を狭める可能性を指摘している。

シャオミのIoT製品の今年第1四半期の粗利率は13.41%で、アップルの粗利率30%に遠く及ばなかった。ハイエンド戦略を続けるならば、粗利率の低さが原因となり、純利益の大幅な増加もブランド価値の向上も困難だ。

シャオミのハイエンド製品が客観的な利益をもたらすことがなければ、この戦略がシャオミの株価や時価総額の向上に寄与することはないだろう。

(翻訳・田村広子)

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