中国のオンライン教育、日本の脅威となるか

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今年中国ITで広く普及したサービスを挙げるならライブコマース、そしてオンライン教育だ。これまでもオンライン教育サービスはあったが、新型コロナウイルス対策でオンライン教育の利用者が一気に増えた。

中国の公式ネット統計にあたるCNNICの定例統計によれば、オンライン教育利用者は2019年6月末の2億3246億万人から、新型コロナウイルスにより在宅学習を余儀なくされた2020年3月末には4億2296万人へと増加、落ち着いた2020年6月末には3億8060万人まで減少したものの、それでも1年間で1億5000万人増加した。さかのぼること2003年のSARSのときには、中国でオンラインショッピングが認知され、使ってみて便利だと知られた。新型コロナウイルス感染拡大の対応でオンライン教育利用が便利であることが周知されたといえる。

今年は36krの中国版でも、オンライン教育のスタートアップ企業が融資を受けたといったニュースや、新たなスタートアップ企業を紹介するニュースなど、実に多数の教育記事が登場した。最近はあまり聞かなくなった「O2O(online to offline)」や「OMO(online merge offline)」というオンラインとオフラインを繋ぐネットサービスを意味する単語や、幼稚園から高校生までの教育を意味する「K12」という単語をニュースでよく見るようになった。K12という単語が旬だからといって、中国で続々と立ち上がるオンライン教育サービスは幼稚園児から高校生向けに限ったものばかりではなく、語学教育や社会人教育や学校向けプラットフォーム・コンテンツ提供など、各スタートアップが狙うターゲットは多岐にわたる。

中国で投資案件を度々聞く教育業界。例えば36kr Japanが紹介した今年の記事を一部ピックアップしただけでもこれだけある。他にも著名企業では、香港証券市場に上場した補習学校最大手「新東方」や、オンライン教育の「VIPKID」が知られている。

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アリババ(阿里巴巴)やテンセント(騰訊)はこれまで企業に投資したり、新たに事業部を作って人気の業界に参入している。テンセントは自身で教育サービスを展開するほか、猿補導をはじめとした企業に投資を行い、対するアリババも教育系起業数社に投資を行っている。VIPKIDはアリババとテンセントの両方から投資を受けている。今後もアリババ、テンセント、バイトダンスといった中国のインターネット業界を動かすプレーヤーが注目の教育系企業に投資をしていくのではないだろうか。

オンライン教育企業が提供するサービスは、レベル別に用意された多数の授業動画と、ライブストリーミングによる授業と、問題集の提供、それに辞書や解説サービスが主だ。これまで蓄積した生徒の学習記録のビッグデータやAIから各生徒に合わせた最適な問題集やコンテンツを提供できるかどうかというのが値段以外の競争要素で、加えて新東方はオンラインサービスに加え、オフラインでも利用できる中国全土に展開されるリアル教室の豊富さと教師の質の高さが強みとなる。

新型コロナウイルスへの感染リスクが完全になくなったわけではなく、オンライン補習学校に親世代もより理解を示すようになった。さらに中国の勉強の代名詞的な詰め込み教育も見直されようとしている。中国政府教育部は、学校が児童生徒に夜遅くまで課題を与える現在のやり方をよく思っておらず、小中高の勉強負担を減らし、質の高い教育に転換する「減負(負担減少)」を目指している。例えば今年5月に教育部は、必要以上のことを教えない、週末に課題を与えすぎないといったことを通知しているほか、11月には小中高までは負担を減らし大学生は負担を増加するという意見が出ている。

今後もオンライン教育業界は伸びそうだ。とはいえ一時的には雨後の筍のように出てきたオンライン教育企業の一部が淘汰されるだろう。激しい業界内の競争の結果、よいクオリティの教育サービスを提供するところだけが残り、その結果、近い将来の中国の子供たちの基礎学力は今の子供たちより高くなりそうだ。

(作者:山谷剛史)

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