空前の高値をつける時価総額はバブル崩壊の危険も 新興EVは自動車の新勢力となり得るか 

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空前の高値をつける時価総額はバブル崩壊の危険も 新興EVは自動車の新勢力となり得るか 

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2020年、米電気自動車(EV)大手テスラが中国で製造を始めたことが世界の新エネルギー車市場の起爆剤となった。需要・供給ともに押し上げられ、テスラの売上高と利益は予想よりも大幅に上昇。株価は年初より6倍近く上昇した。

テスラにけん引され、中国でも「蔚来汽車(NIO)」「理想汽車(Li Auto)」「小鵬汽車(Xpeng motors)」に代表される新興EVメーカーの株価が総じて急上昇している。11月28日時点で蔚来汽車の株価の上げ幅は累計で1243%、小鵬汽車は同328%、理想汽車は243%に達している。

図1:新興EVメーカーの株価

データ:wind 36Kr作成

株価が大幅に上昇した背後には、新興EVメーカーの時価総額上昇がある。11月末時点でテスラの時価総額は5552億ドル(約58兆円)に達し、トヨタを抜いて自動車業界で世界一となった。中国のEVメーカー蔚来汽車、理想汽車、小鵬汽車3社の時価総額は合計で1500億ドル(約15兆6000億円)を超えており、「上海汽車集団(SAIC MOTOR)」「長城汽車(Great Wall Motor)」「吉利汽車(Geely Automobile)」「広州汽車集団(GAC Motor)」など従来の自動車メーカー各社の時価総額合計よりも多い。

このような状況を受け、我々は疑問を持たざるを得ない。新興EVメーカーの時価総額にはバブルの危険がはらんでいるのではないか。この高値はあとどのくらい続くのだろうかと。

時価総額から見る新興EVメーカーの先行きは

EV化とスマート化は確かに今後の自動車産業のトレンドであり、世界的に見ても環境保護の声が大きくなるなか、電気自動車がガソリン車に取って代わるのは必至だ。将来的に新エネルギー車の普及率が向上するのに伴い、業界全体にも大きな成長の可能性が生まれている。

しかし二次市場からみるとわかるが、ホットな分野が必ずしも投資に適しているとは限らない。

新エネルギー車が自動車市場全体で占めるシェアは現時点で5%にも満たない。新興EVメーカーの年間販売台数を見てみると、テスラ、蔚来汽車、小鵬汽車、理想汽車4社の販売台数を合計しても60万台以下であり、従来のガソリン車メーカーの端数にも満たない(トヨタの2019年販売台数は900万台を超える)。さらに一部の新興EVメーカーはいまだに「一台売れるごとに一台分の赤字が出る」という状況だ。

図6:従来のガソリン車メーカーと新興EVメーカーの販売台数比較

インターネット上のデータを36Krが整理したもの

このような状況下で、テスラの時価総額はすでにトヨタの2倍をつけ、蔚来汽車、小鵬汽車、理想汽車などの新興EVメーカーも時価総額ではすでに世界自動車メーカーランキング15位以内にランクインしている。

図7:世界の自動車メーカーの時価総額ランキング

データ:wind 36Kr作成

時価総額から見ると、新興EVメーカーの時価総額水準は明らかにファンダメンタルズから乖離しており、大きなバブルの可能性をはらんでいる。図8が示す通り、新興EVメーカーのPSR(株価売上高倍率)は従来の自動車メーカーを大きく上回っており、小鵬汽車のPSRは150倍だ。これはつまり、過去の売上高から計算すると同社の現在の時価総額をカバーするには150年が必要ということになる。

図8:世界の主要自動車メーカー各社の時価総額

データ:wind 36Kr作成

投資家はこれらの新興EVメーカーが赤字を出しているかどうかにはすでに興味がない。いつ黒字を実現できるのか、これまでの時価総額の算出方法はすでに意義を失っているようだ。夢のように高い株価収益率がこれらの企業を推しはかる唯一の基準になっている。

しかし、気を付けなければならないのは本来は企業の業績が株価を決めるモノサシであり、予測をはるかに上回る速度で株価が上昇している状況は、バブル崩壊がすでに近づいている前触れかもしれない。

株式市場の歴史は繰り返す。資本が撤退すれば、新興EVメーカー各社は業績を伸ばし続けてもその株価は二度と最高値を更新することはないかもしれない。なぜならバブル期の株価がすでに未来の業績を前借りしているため、企業は毎年の成長で時価総額バブルが崩壊したことによる大きな損失を埋める必要があるからだ。
(翻訳・山口幸子)

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