原文はこちら
セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け
メールマガジンに登録
中国人のスマートフォンの平均利用時間は1日あたり6時間にもなる。中国のモバイルインターネット専門調査会社Quest Mobileの調べだ。1年間に換算すると1人あたり平均2196時間もスマホを触っている計算になる。これは映画にすれば年間1000本を見たことに相当し、シェークスピア全集を10回も読み返せるうえ、四川省からスイスまで歩いていかれるほどの時間だ。
これが単なる誇張だと思うなら、自分の携帯電話で「スクリーンタイム」を設定し確かめてみるとよい。
10年前の中国のネットユーザーは、パソコンと携帯電話を合わせてもインターネットの平均利用時間は1日2.6時間だった。現在より3時間以上も少なかったのだ。
この「奪われた3時間」は一体何に使われているのだろうか?
トイレにまで持ち込まれる「モバイルゲーム」
「World of Warcraft(魔獣世界)」は世界で最もヒットしたPCゲームだろう。中国でも当時は多くの学生が夜通しプレイしたものだ。
現在では「王者栄耀」のようなモバイルゲームが主流だ。両者のプレイヤー数を比較すると、World of Warcraftは人気のピーク時で1日のアクティブプレイヤー数が約500万人、王者栄耀は昨年のDAU(デイリーアクティブユーザー)が最高9535万人だった。
プレイ時間でみてみると、王者栄耀は昨年のピーク時で1人あたり1日3.23時間。World of Warcraftに関してはデータは存在しないが、仮に王者栄耀を超えるとしてもその差はわずかだろう。当時は現在ほどゲーム依存が一般的ではなく、多くのプレイヤーが夜通しプレイする場合は時間のある週末などに限られていたからだ。
しかしスマホゲームは事情が違う。ベッドの上でもプレイできれば、地下鉄車内やトイレなどのスキマ時間、果ては仕事中でもプレイできる。10分程度の時間があればカードゲームができる。
現在のスマホゲームは1プレイにかかる時間がいっそう短くなり、ますます気軽に利用できるようになっている。多くの人がゲームにより時間を割くように仕組まれているのだ。プレイを開始すればさらに多くの仕掛けが待っている。毎日ログインすればリワードがあり、プレイ時間の蓄積によってアイテムやコインが獲得できる。
巧みな時間支配をかけてくる「ショート動画」
モバイルゲームと同様、無数のスキマ時間を狙うのがショート動画だ。ショート動画プラットフォームがユーザーの時間を操る方法は思いの外多い。
あるデータによると、中国版TikTok「抖音(Douyin)」の平均視聴時間は1日52分だ。
お気に入りの配信者により多くのアクセスを稼がせるために、ユーザーの行動で最も効果があるのは「いいね!」をクリックする、コメントを入れる、動画をシェアするのどれだろうか?
正解はそのどれでもない。最も重要な指標となるのは完全再生率。つまり、動画を最後まで視聴したユーザーの比率だ。
動画は長ければ長いほど完全再生率は下がる。例えば1本2分前後の動画の完全再生率は30%ほどで、その場合は総再生回数は100万回程度だ。
その点、抖音の製品設計は天才的だ。あらゆる設計はユーザーの時間配分を基準としており、ユーザーが時間を割いてでも見たいコンテンツを至上とし、こうしたコンテンツを多くのユーザーにレコメンドするのだ。
完璧なアルゴリズムが支配する世界では、ユーザーが目にするほとんどの動画は、最後まで見たいと思わせる内容になっている。こうして抖音の利用時間はどんどん長くなっていくのだ。
とにかく「ユーザーの時間」が全て
アプリの世界ではかつて「アクセス数がすべて」と言われてきたが、いまでは「時間がすべて」となっている。
10年前、中国のインターネット普及率は34.3%で、3人に1人がインターネットを利用していた。10年後の現在、中国のインターネット普及率は67.0%で、3人に1人がまだインターネットに触れていない。
ネットユーザー総数は現在も増え続けているが、インターネット企業にとっては2015年以前と比べ、新規ユーザー獲得は簡単ではなくなってきている。ならば、いかにユーザー1人1人の利用時間を増やすかに力を割くことになる。
インターネットで「ユーザー時間」を検索すると、多くの起業系メンターはユーザーの時間を確保することの重要性を説いているだろう。「用が済んだら終わり」という従来の設計理念では時代に取り残されることになる。
だからこそWeChat(微信)も、Weibo(微博)も、タオバオ(淘宝)も、間断なくユーザーの興味を引くコンテンツや商品をレコメンドしてくるのだ。その目的は、すこしでも長くアプリ内に滞在してもらうことである。
作者:WeChat公式アカウント「億欧網(ID:i-yiou)」
(翻訳・愛玉)
原文はこちら
セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け
メールマガジンに登録