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中国の新興EV(電気自動車)メーカー「NIO(蔚来汽車)」が9日、年次発表会「NIO Day 2020」を開催し、EV搭載用バッテリーパックの新製品を発表した。容量は150kWhで、現在主流のリチウムイオン電池ではなく、固体電池になるという。関係者によると、EVへの搭載が実現するのは早くて来年になる。
従来のリチウムイオン電池と比較し、固体電池はEVにとってはより理想的な技術で、エネルギー密度や充電効率、安全性などで改善が期待できる。リチウムイオン電池は正極(カソード)、隔膜(セパレータ)、負極(アノード)、液体電解質で構成されているが、固体電池の場合は固体電解質が液体電解質と隔膜に取って代わる。
液体電解質を用いたリチウム電池は充電効率や熱安定性が悪く、充電に時間がかかり夏季には発火事故も頻発する。エネルギー密度の向上も難しく、業界内では300Wh/kgが限界とされ、そのためにEVの航続距離にも天井がみえていた。
いっぽうの固体電池はその限界を軽々と超え、400〜500Wh/kgを実現できる。同時に、熱安定性や充電効率の問題も解決できる。
バッテリーに(充電ではなく)交換システムを採用しているNIOにとって、エネルギー密度の向上は切実に求めるところだった。ある新興自動車メーカーで管理職に就く人物は、「NIOはバッテリー交換システムの採用にあたってバッテリーパックのサイズを統一した。決められたバッテリー体積の範囲内で航続距離を上げるには、エネルギー密度を急速に上げるよりほか術がない」と話す。
NIOは一貫して「CATL(寧徳時代新能源)」製のバッテリーを採用してきた。両社はこれまで70kWh、84kWh、100kWhと三つのバッテリーパックで提携、NIOはCATLにとって最大の顧客となった。しかし150kWhに関して両社は協業に至らないかもしれない。CATLに詳しい業界関係者によると、CATLは全経営資源をリチウムイオン電池に投入しており、新技術を手がける余力は残っていないという。
固体電池には利点も多いが、弱点も明確だ。固体電解質および電極を採用すると導電率が低いという問題に直面することになる。電解質や正極、負極の材料調達、生産技術なども課題となってのしかかる。
固体電池について考察を深めてきた複数のバッテリーメーカーによると、固体電池の量産化が実現するのはおそらく2025年以降になる。反して、業界が実現しようとしているのはハイレートのリチウムイオン電池、つまり高電圧のプラットフォームとハイレート電池に急速充電技術を組み合わせてEVの充電効率を図るものだ。
こうした現状を受け、業界関係者の予想では、今回NIOが採用したのは一過性の固体電池技術ーーいわゆる半固体電池である可能性が高い。これについて、固体リチウム電池を手がける「清陶能源(Qing Tao Energy Development)」の李峥総経理が過去に講演で示している。負極に使用する材料には二案あり、ひとつは従来と同じく負極にグラファイト、ラミネート部分にシリコンを用いるもので、エネルギー密度は320〜350Wh/kgを実現できる。一方の全固体電池の場合は負極にリチウムを用い、エネルギー密度は450Wh/kgに達する。しかし李氏は「これは決して自動車に使えるものではない。サイクル寿命の影響を受けるからだ」と補足している。
NIOの時価総額は850億ドル(約8兆8700億円)となり、自動車メーカーとしては世界3位につけた。固体電池を実用化すれば業界をリードする存在となり、EVの最終形が形を表してくるだろう。
(翻訳・愛玉)
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