中国が4600キロの衛星・地上間量子通信ネットワーク実験に成功 量子暗号通信の商用化へ大きな一歩

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今月7日、中国の研究チームは、中国の量子実験衛星「墨子号」と地上に設置された長さ2000キロの量子通信ケーブル「京滬幹線」(北京・済南・合肥・上海の4都市をつなぐ量子通信ネットワーク)の接続により、距離4600キロの衛星・地上間量子鍵配送実験に成功した。今回使用した衛星・地上間量子通信ネットワークは、すでに150以上の法人顧客が利用している。今回の実験の鍵配送速度は以前より40倍ほど早くなっている。

実験を主導した中国科学技術大学の潘建偉教授は、今回の実験により、量子の広域通信の条件が整ったと話している。実験経過は論文として科学誌「ネイチャー」に掲載され、査読者はこれを「大きな工学的な成功」だと評価した。

実用的な量子通信ネットワーク

量子鍵配送は、量子力学を用いてランダムな秘密鍵を共有し、それをもとに情報を暗号・復号する技術である。量子力学の性質上、ハッキングは不可能だとされている。

世界最初の量子鍵配送は1989年にIBMのラボで行われ、当時の距離は32cmだった。潘教授の研究チームは昨年500キロの量子鍵配送を実現し、実用性が一気に高まった。そして今回、衛星・地上間量子通信ネットワークは、この4600キロの範囲内にあるユーザーすべてが利用可能なものであり、広域なネットワークが構築可能だということを証明した。

今回の実験の鍵配送速度は平均47.8kbpsとなり、前回の「墨子号」の実験時と比べ40倍も早くなった。

通信時の伝搬損失は、高度約4万キロの中軌道衛星と地球間の通信とほぼ同じだ。このことも、衛星を経由した広域量子通信が可能だということを証明した。

量子通信の信頼性に対する理解を得るため、潘教授の研究チームは「2017年各月の4都市間の鍵配送速度」、「各月の隣接する通信ノードの平均鍵配送速度」のデータを公表した。

表からわかるように、鍵配送速度は右肩上がりで、遅くても平均20kbps以上となっている。2017年12月には、平均28.4kbps、最大235.4kbpsで、2/3以上が50.0kbps以上となった。

実用例と今後

京滬幹線は2017年にすでに完成しており、2018年には、京滬幹線と墨子号衛星を使った実験として、中国とオーストリアの科学者が7600キロを隔て、世界初となる大陸間量子暗号通信テレビ電話をつなげた。

商用化に繋がる実用例は、すでに金融業界で出ている。中国工商銀行はネットバンキングのデータの北京・上海間量子暗号通信に成功している。中国人民銀行も、新疆支店と北京金融センターの間での量子暗号通信を行った。

注意が必要なのは、潘教授も指摘しているように、量子暗号通信は決して現在の通信の代わりになるものではないということだ。その目的は、あくまで現在の通信システムの安全性を高めることにある。そのため、従来のネットワークとの融合を視野に入れて、広域通信ネットワークを構築していくことが必要だ。

今後の展開について、中国科学技術大学はオーストリア、イタリア、ロシア、カナダと研究チームと協力し、中国でのネットワークのさらなる拡大を目指し実験を進めていくとしている。また、より小型の鍵配送衛星と地上の受信装置の開発、1万キロ級の通信を行うための中軌道量子通信衛星の開発をしていくという。

原作者:「量子位(Wechat ID:QbitAI)

(翻訳・小六)

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