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アップルの時価総額は2兆ドル(約210兆円)に上り、国別GDPランキングに当てはめればイタリアとブラジルに挟まれた第9位に相当する。時価総額は市場価格の指標だが、現金及び現金同等物からは会社が実際に動かせる資金量が分かる。最新の財務諸表によると、アップルの現金及び現金同等物は1909億ドル(約19兆8000億円)で、国別GDPランキングの第56位に相当する。
アップルが保有する資産は国家に匹敵すると言っても過言ではない。ところが他の大手テック企業と異なり、アップルは豊富な資金があるにも関わらず、これまで大規模な買収を行わなかった。
アップルの買収戦略はテック企業の中でも独特で、買収の件数は多いが規模は小さい。2014年に30億ドル(約3100億円)で買収したヘッドホンの「Beats(ビーツ)」がアップル最大の買収事例となる。
他の大手の事例を見ると、マイクロソフトが265億ドル(約2兆7500億円)で「LinkedIn」、グーグルが125億ドル(約1兆3000億円)で「モトローラ」、フェイスブックは190億ドル(約1兆9700億円)で「WhatsApp」、アマゾンは137億ドル(約1兆4200億円)で「ホールフーズ・マーケット」を買収している。
中国のテック企業を見ても、アリババが95億ドル(約9900億円)でフードデリバリープラットフォームの「餓了麼(Ele.me)」、テンセントが86億ドル(約8900億円)でモバイルゲーム開発会社の「Supercell」を買収している。
これらに比べると、アップル最大の買収事例がわずか30億ドルというのは実に控えめだ。
アップルの控えめな買収戦略にはどのようなロジックがあるのだろうか。アップルの買収戦略に見られる3つの特徴を以下に挙げる。
ライバル企業を買収しない
1980年代の設立以降、アップルの主要事業はPCからMP3、スマホ、タブレット、ウエアラブル端末へと変遷してきたが、アップルはその過程で直接のライバル企業を買収したことがない。
スティーブ・ジョブズ氏が設立した「NeXT」を1990年代に買収したのは例外だが、この時もアップルはシェア拡大のためではなく、macOSを改良するためのソフトウエア、加えてジョブズ氏という重要な資産に着目した。
主な買収先は技術力に優れた小企業
アップルは製品の競争力をどのように構築するかを買収の出発点としている。
例えば、音声アシスタント「Siri」の開発企業は規模が小さかったが、アップルはiPhoneに音声アシスタント機能を導入しようと考えて買収。Touch IDは2012年の指紋認証技術の「AuthenTec」買収後にリリースした。Face IDはもっと分かり易く、顔認証の「RealFace」、空間認知の「Faceshift」、3Dセンサーの「PrimeSense」を買収後に技術を組み合わせてリリースしている。
買収件数は決して少なくない
2017年にティム・クックCEOはメディアに対し「概ね2週間ごとに1社を買収している」ことを明らかにした。年換算すれば20~30社に上り、テック企業としては決して少なくない。公表事例だけでも2020年には人工知能の「Xnor.ai」、仮想現実(VR)の「Next VR」など11社を買収している。
買収額がアップルの企業規模に比べて小さく、規制対象とならないために未公表の事例もある。アップルは十数名の担当者がプロジェクトの状況と戦略に合わせて買収対象を定め、迅速な意思決定を行っているという。
次にアップルの控えめな買収戦略の背後にある3つのポイントを見てみよう。
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国家並みの資産を誇るアップル、控えめな買収戦略の背後にあるロジックとは(二)
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作者:衛夕指北(WeChat ID:weixizhibei)
(翻訳・神戸三四郎)
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