音声・映像のスマート化で差別化を図る、ビデオ会議用ハードウェア「蛙声科技」が約16億円を調達

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音声・映像のスマート化で差別化を図る、ビデオ会議用ハードウェア「蛙声科技」が約16億円を調達

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ビデオ会議用スマートデバイスの研究開発よび生産を手掛ける「蛙声科技(Hamedal Technology)」がシリーズAで約1億元(約16億円)を調達した。リード・インベスターは米「GGVキャピタル(GGV Capital)」、コ・インベスターは「鐘鼎資本(Eastern bell Capital)」「遠望資本(iVision Ventures)」。調達した資金は新製品の研究開発、販売チャネルの開拓、ブランドマーケティングなどに充てられる。

蛙声科技は2018年5月に設立。主な製品はクラウド型ビデオ会議ハードウェアで、企業向けにリモート会議ソリューションを提供している。昨年3月からは「Hemedal(耳目達)」というブランド名で、ビデオ会議用のカメラ、マイク、一体型設備などをリリースしており、これらの製品はさまざまな会議室の大きさに合わせて使用できる。

同社は2020年3月に人の顔を自動的に追いかける高解像度の自動追尾型カメラ「V20」をリリースしたのに続き、光学ズームハイビジョンカメラ「V35」、ノイズキャンセリングマイクスピーカー「A20」、スマート4Kリモート会議用一体型設備「C30」、据え置き型リモート会議設備「C20」などを次々とリリースし、ビデオ会議向けの総合的な製品マトリックスを構築している。同社のハードウェアの顧客単価は1500元~2万元(約2万4000円~30万円)。製品はUSBでパソコンと直接接続でき、会議の規模に合わせてハードウェアの組み合わせを変えて利用できる。

蛙声科技はハードウェア製品を通じてリモート会議の音声や映像の品質向上を目指している。同社の辛鑫CEOは、単純なリモート会議プラットフォームは音声や映像の品質が低い上に利益も少ないと語る。リモート会議の品質はハードウェア能力と密接に関連しており、品質の高い音声・映像技術を持つ製品は市場で優位を保つことができ、高めの価格設定が可能だ。このため蛙声科技はハードウェア製品に特化し、音声・映像技術の最適化に研究開発の重点を置いている。

映像については、AIによって発言者の顔を自動追尾する機能と検出した映像をリアルタイムでシームレスに繋ぐ技術を自主開発した。これによって会議の全参加者の顔を検出して分割画面で表示し、各参加者をクローズアップして表示することができる。これらの技術は、C30に採用されている。

Hemedal C30 会議参加者の分割表示モード

音声については、全二重通信の音声技術を自主開発し、双方向で同時に会話ができる。ノイズキャンセリング機能については、信号対雑音比の高い技術を採用して会議室で発生する各種ノイズを抑制し、人の声の音声品質向上を図っている。会議室の壁面に使われるガラスは残響を発生させ、これがリモート会議の品質に影響するため、フィルタ機能によってこの残響を排除している。

辛CEOは、蛙声科技は製品の技術革新、販売チャネルの健全な拡大、ブランドの維持に注力しており、付加価値の高い製品を提供し、代理店の利益を保護することによって、高評価を積み上げていると語った。今後はハイエンドからローエンドの製品を開発し、製品価格帯を広げ、製品マトリックスを拡充していく計画だ。

2020年蛙声科技の売上高は5000万元(約8億円)に達した。製品の販売ルートは3つある。1つめは京東(JD.com)を始めとするECサイトにおける一般消費者向け販売で、売上高の4分の1を占めている。2つめは企業への販売で、2020年にはバイトダンス(字節跳動)のコラボツール「飛書(Feishu、海外版「Lark」)」と提携し、耳目達シリーズはリモート会議対応製品として公式認証を受けている。3つめは海外販売で、同社の製品はアマゾンでも販売されており、南アフリカ、インドなどに現地の販売代理店を持っている。

市場全体を見るとリモート会議用ハードウェアには大きな可能性がある。近年のクラウド技術とエンコード、デコード技術の進歩により、リモート会議へのハードルが下がりつつある。テンセント(騰訊)の第3四半期の決算報告によると、ビデオ会議プラットフォーム「騰訊会議(Tencent Meeting)」はリリースから245日でユーザー数1億人を突破した。リモート会議はすでに日常的な業務スタイルとなっている。さらに企業にとってリモート会議の活用はコスト削減に繋がる。北京大学のインターネット発展研究センターが発表した「オンライン会議の社会的価値と今後の発展に関する報告」によると、2020年1月~5月に騰訊会議は、714億元(約1兆1400億円)あまりの社会コスト削減に貢献した。出張経費の削減は、企業にとってリモート会議設備を導入する動機となっている。

蛙声科技は業界への参入が早く技術力もあり、すでに一定の市場シェアを持っており、後発企業より優位に立っていると辛CEOは語る。メーカーがハードウェア製品を開発するには約2年かかり、販路を開拓するにはさらに2~3年を要する。成長サイクルが長いことが業界への参入障壁となっている。

同社は蘇州に拠点を置き、2018年10月にエンジェルラウンドで「遠望資本(iVision Ventures)」から資金を調達し、杭州に技術開発センターを設立した。2019年1月には深圳に製品の設計と生産を行う子会社を設立している。
(翻訳・普洱)

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