ファーウェイのAI・クラウド事業戦略、スマホの成功モデルを再現できるか

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ファーウェイのAI・クラウド事業戦略、スマホの成功モデルを再現できるか

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「AIやクラウドの構築においてファーウェイは時代に乗り遅れたが、やみくもにライバルを追いかけることはできない。クラウド分野において我々が他社に追いつく方法は、『黒土地帯(畑作に適した肥沃な土壌)』を生み出すことだ。多くの企業が『作物』を育てられるような土壌を」。

ファーウェイの任正非CEOはファーウェイのクラウド事業を、エコシステムのパートナーが耕せる土地を提供することだと定義した。

1月27日、この「黒土地帯」では重要な人事が行われた。同社のコンシューマー向け端末事業部を統括するリチャード・ユー(余承東)CEOが、クラウド・AI事業グループの総裁に就任したのだ。

1年前に行われた組織再編で事業ユニットから格上げされて誕生したクラウド・AI事業グループは、通信事業者向けネットワーク事業グループ、法人向けICTソリューション事業グループ、コンシューマー向け端末事業グループに続く同社4番目の事業グループだ。主にクラウド、コンピューティング関連製品(サーバーなど)、ストレージ関連製品、マシンビジョン関連製品などを扱う。

ファーウェイの組織構成図

リチャード・ユー氏に新たに課されるミッションについて、IT関連のリサーチ&アドバイザリ企業ガートナーでシニアリサーチディレクターを務める季新蘇氏は「ファーウェイのスマートフォン事業も業界内では後発者だった。誰もが不安視する中、ユー氏はファーウェイを世界的なブランドに育て上げた。ファーウェイのクラウド事業も同様に出遅れた存在だが、スマホ事業の成功モデルを再現できるのではと期待されている」と述べる。

リチャード・ユー氏

スマホはクラウド事業にとって最大の顧客だ。将来的にクラウドでも5Gが普及すると、自動車も成長を期待されるスマート端末となる。スマホ、自動車、クラウドコンピューティングと三つの事業が紐づけられると、クラウドとエッジの協調はさらに進むことになる。

二番手を脱せないファーウェイ

「せっかく早起きしたのに、市場に着いたのは遅かった」。業界ではファーウェイのクラウドコンピューティング事業をこう形容している。

2010年11月、ファーウェイは世界に向けてクラウドコンピューティング事業に関する戦略とソリューションを発表している。しかし、パブリッククラウド事業を手がける専門の部署「クラウド事業ユニット」が正式に誕生したのは2017年3月になってからのことで、ここでようやく「パブリッククラウド事業を強化する」と宣言している。その5カ月後、ファーウェイは「3年でアリババを倒し、クラウドで世界五強入りする」と言い放った。

市場調査会社カナリスの統計では、昨年第3四半期、クラウドサービスプロバイダーの中国四大大手アリババ、ファーウェイ、テンセント、バイドゥは市場の8割のシェアを握り、中でもアリババクラウドが41%、続いてファーウェイクラウドが16.2%を占める結果となっている。「3年でアリババを超える」との目標はまだ遂げられていない。それでも、ファーウェイは「追越車線」に入れる可能性が最も大きい1社とみられている。

ファーウェイクラウドでマーケティングやエコシステムを統括する陳亮総裁が最近の講演で取り上げたデータによると、ファーウェイクラウドはこれまでに220以上のサービスをリリースし、世界の23の地域で展開する他、160万人以上の開発者を取り込み、年間取引総額は10億元(約160億円)を超えるという。また、ハイブリッドクラウド分野では「Stack」が世界の150の国・地域で4000社以上の顧客に提供されており、政府や公共企業体、通信キャリア、エネルギー、金融、交通など多くの業種を網羅している。

ファーウェイの舵取り役である任正非CEOは、急速に成長する同社のクラウド事業には多くのボトルネックが潜んでいると考える。同氏が指摘したクラウド事業の問題点については、昨年末にもファーウェイが公開している。任CEOによると、サービス力、責任や権限の所在が分散している点が主な問題だという。

後発者がのし上がるには

あるコンサル企業のパートナーの予想では、クラウド業界ではアリババ、ファーウェイ、テンセントの鼎立状態が今後も長く続く。中でもファーウェイにのしかかるプレッシャーは相当に厳しい。

これまでハードウェア畑で身を立ててきたファーウェイだが、クラウドコンピューティングはソフトウェアやサービスに関する実力が問われる。クラウド事業を成長させたいなら、企業自身のDNAが持つ強みで勝負し、劣勢を挽回する必要がある。

クラウド事業に関し、任CEOはアリババやアマゾンの単純な後追いはできないと言明している。彼らは米株式市場が有する無尽の資金を使えるが、ファーウェイにはそれができないからだ。「アリババクラウド、テンセントクラウド、AWS(アマゾンウェブサービス)などはソフトウェアとハードウェア一体型の機器をますます増やしているが、ファーウェイの武器はあくまでハードウェア。我々はハードウェアとアプリケーションのエコシステムを強化すべきで、ハードウェアがクラウド事業にもたらす強みを捨て去ってはならない」とも述べている。

ファーウェイクラウドは2019年、サーバー向けCPU「Kunpeng 920 (鯤鵬920)」、AIチップ「Ascend 910(昇騰910)」、エラスティッククラウドサーバー、ベアメタルサーバー、クラウドフォン(CPU、GPU、メモリー、アプリなどを本体からクラウドに移行したスマートフォン)、クラウドゲームの管理プラットフォーム、スマートクラウドOSを次々と発表した。わずか1年でチップやサーバーなどのハードウェアから、クラウドサービスやソリューション、エコシステムに至るまで、産業全体を網羅する製品を世に出してきたのだ。

ファーウェイのクラウド事業は具体的な業績について公開したことはないが、昨年3月末に開催された2019年の業績発表会では、エリック・シュー(徐直軍)輪番会長が「クラウド事業の業績は前年比で3倍以上成長した」と明かしている。

ガートナーの季新蘇氏は、「ファーウェイはこれまで法人向け市場で培った経験を生かし、より法人向け市場に適したクラウドサービスを拡大していくだろう」としている。後発者として先発者を追い抜き、市場で勝利を得るにはより事業を加速し、クラウド事業を活性化させるためのビジネスを早急に見出す必要がある。

任CEOも文書の中で「将来的にはクラウドという土地であらゆるアプリケーションを生み出せるようにはなるが、それは今ではない。我々の今の使命は、いかにして『黒土地帯』をつくりあげるかであり、これを一歩一歩進めていくことになるだろう」述べている。

今回、リチャード・ユー氏がクラウド事業の旗振り役となったことで、ライバル追い上げを加速していくことになるかもしれない。

作者:WeChat公式アカウント「全天候科技(ID:iawtmt)」、于恵如

(翻訳・愛玉)

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