アリババ20年9〜12月期決算、売上高3.6兆円と安定成長 アントのIPO問題が将来に影

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中国IT大手アリババグループは2日、2021年第3四半期(2020年9〜12月期)の財務諸表を発表した。売上高は前年同期比37%増の2210億8000万元(約3兆5900億円)で、市場予想の2153億2000万元(約3兆5000億円)をやや上回った。調整後当期純利益は同21.6%増の592億1000万元(約9600億円)で、市場予想の464億400万元(約7500億円)を大幅に上回った。

発表後、アリババの株価は取引開始前時点で0.49%上げた。

今四半期のGMV(流通取引総額)は前年同期比19%増となった。理由は主に二つで、一つ目は11月に行われた毎年恒例のネット通販イベント「ダブルイレブン(双十一)」によるものだ。財務諸表によると、2020年ダブルイレブンのGMVは4982億元(約7兆7000億円)に達している。二つ目の理由は商品の全カテゴリーにおける供給体制の充実で、消費者の多様な需要に応えたほか、出店業者の成長をも牽引した。ダブルイレブン期間に新発売された商品のGMVは前年同期比35%増となった(未決済の取引を除く)。

モバイル端末利用の月間アクティブユーザー(MAU)は9億200人と、9億人の大台に乗った。年間アクティブコンシューマー(AAC、過去1年以内に1回以上取引を行ったユーザー)は7億7900万人で、前四半期から2200万人増え、過去8四半期で最大の伸びとなった。

ユーザー増の要因は、C2Cモール「タオバオ(淘宝)」が消費者のスティッキネスを強化し、出店業者の運営効率を高めたことや、タオバオのアプリ「手淘(Shoutao)」をリニューアルをしたこと、ライブコマースプラットフォーム「タオバオライブ(淘宝直播)」、格安商品に特化したプラットフォーム「淘宝特価版(Taobao Deals)」などの貢献を含めた複合的なものだ。また今四半期、タオバオのトップページで紹介したおすすめ商品の効果で、ページ訪問者数が前年同期比で90%増加した。なお、タオバオライブのGMVは2020年通年で4000億元(約6兆5000億円)を超えたが、予想の5000億元(約8兆1300億円)は下回った。ユーザーの増加はとくに地方市場で加速している。彼らをターゲットとした淘宝特価版のAACは2020年通年で1億人を突破した。昨年12月時点でMAUも1億を超えている。

事業別にみると、グループを挙げた長期投資が実を結び、複数の事業の成長を後押ししている。

今四半期のクラウドコンピューティング事業はEBITAベースで初めて黒字化した。物流事業「菜鳥網絡(Cainiao Network)」は営業キャッシュフローが初のプラスに、利益目標はすべて予定期間内に達成した。

グローバル事業も目覚ましい成績を見せている。東南アジア最大のECモール「Lazada」の受注件数は3ケタ成長を維持、越境ECプラットフォーム「天猫国際(Tmall Global)」に出店するブランド・業者数は昨年末時点で60%の伸びをみせた。

中国の製造業が急速に復調するなか、世界市場からの需要も大幅に伸びている。中国税関のデータによると、越境ECによる輸出は2020年通年で40.1%伸びた。越境ECのB2Bプラットフォーム「阿里巴巴国際站(Alibaba.com)」は20億元(約330億円)を投入して既存型の企業や起業家に対し、海外取引の新たな機会を提供している。

ニューリテール事業では昨年10月、食品スーパー中国最大手「高鑫零售(Sun Art Retail)」の経営権を取得し、連結決算の対象とした。高鑫零售への増資を通じて実店舗での集客状況もデータ化が実現。アリババが主導したオンライン通販は、昨年末時点で高鑫零售の販売額の24%を占めるに至った。また、OMOスーパー「盒馬鮮生(Freshippo)」は昨年末時点で出店数を246店に伸ばしており、複数のブランドや多業態を展開する戦略を継続する。今四半期は新業態として会員制の倉庫型店舗「盒馬X(X Membership)」を開店した。

ローカルサービス事業では、フードデリバリーサービス「餓了麼(Ele.me)」が登録店舗、有料会員数ともに前年同期比30%増となった。生鮮食品や日用雑貨など他カテゴリーの拡充も進んでおり、飲食店以外の出店登録数は同80%増加した。

デジタルメディア・エンターテイメント事業では、動画共有サービス「優酷(YOUKU)」の有料ユーザーが1日平均ベースで前年同期比30%増。映画製作・配給事業「阿里巴巴影業(Alibaba Pictures)」が投資した3作品は、今年の正月三が日の映画興行収入の80%を占めた。事業全体ではEBITAベースで損失をさらに縮小させている。

アリババグループの業績は安定して成長しているものの、関連当局からの締めつけが強まっていることに伴い、今四半期以降の業績は大きな不確定性を帯びてくるだろう。当局からの独禁法違反指摘、傘下のフィンテック企業アント・グループのIPO問題、米中摩擦の影響など深刻なリスクが拭えず、とくにアント・グループのIPO問題に絡む重大な不確定要素については、今回の財務諸表でも言及されている。
(翻訳・愛玉)

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