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日本の半導体産業がピークを迎えた1980年代、日本は市場シェアで初めて米国を超え、世界最大の半導体生産国となった。これが米国によるジャパンバッシングに繋がり、最終的には再び業界リーダーの座を米国に譲ることとなった。
現在、こうした米国の手法は中国をターゲットとして再現されている。ファーウェイなど中国の半導体企業は続々と米国の輸出規制の対象となり、中国の半導体産業の成長の妨げとなっている。
しかし、中国は往時の日本とは違う。
米国からの圧力に抗うかのように、中国では昨年、数多くの企業や資金、投資機関が半導体産業の建設に向け力を注ぎ、「新型コロナ」というブラックスワンの影で大きなうねりと化していた。
政府の大々的バックアップ
2020年は政府による半導体産業への支援がより一層強まった1年でもあった。米国への技術面での依存を脱却することを目標とした半導体産業への投資ファンド「第二期国家大基金(国家集積回路産業投資基金第二期、National Integrated Circuit Industry Investment Fund Phase II)」もより強化された。
中国の半導体企業は長らく資金難、人材不足にあえいできた。業界全体ではソフトウェアを取り巻くエコシステムの不全や、製造工程の技術的な遅れなどが難題となっている。中国国務院による『集積回路産業およびソフトウェア産業の質的成長を促進する若干の政策』ではこうした問題に対し、政策的支援を行う。より高度な製造工程を実現する集積回路メーカーに対してはその技術水準に応じた税制上の優遇措置を行い、基盤ソフトウェアの開発企業に対しては市場原理に従いM&Aを推進し、地方政府系ファンドに対しては半導体関連企業への積極的な出資を奨励している。
政府がこうした姿勢を見せることで、企業、業界、教育機関、地方政府などが自発的に歩みを揃えることとなり、2020年には前出の第二期国家大基金も始動。リーディング・プロジェクトに大々的に支援を行った。この第二期ファンドの募集額は2000億元(約3兆2600億円)以上で、4月の始動から現在までに公開されているだけで紫光展鋭(UNISOC)、SMICなど十数件のプロジェクトに出資している。これが呼び水となり、民間の投資機関が半導体業界への投資熱を高めることも期待される。
国家政策がバックアップの姿勢を明確に示したことで、2020年の中国半導体業界は真の意味でブレイクを果たした。勢い余ってやや過熱気味ともいえる状況だ。集積回路業界専門のポータルサイト「集微網(ijiwei.com)」の調べによると、2020年上半期、中国国内の21省で140以上の半導体関連プロジェクトが稼働したほか、公開されているだけでも合計3070億元(約5兆円)がこれらのプロジェクトに投じられた。一方で、市場規律が十分に周知されていなかったり、特許権保護制度が機能していないなど、産業の成長を妨げる問題も山積している。
一見して盛況の中国半導体業界だが、世界水準からみた大きな遅れは見過ごしてはならない問題だ。現在のブームが一過性のものである可能性もあり、また一方で、産業全体を巻き込んだ改革が今後も続いていくことだけは確実といえる。
台湾のTSMC(台積電)が半導体企業として時価総額世界1位となるまで40年かかった。また韓国のサムスンが記憶装置で世界のトップに立てたのは、3500人のエンジニアが20年にわたり努力してきた成果だ。技術的な成長、人材の育成には相応の時間がかかるものなのだ。
(翻訳・愛玉)
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