ティードリンク業界から初の上場、「奈雪の茶」が迎える正念場

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ティードリンク業界から初の上場、「奈雪の茶」が迎える正念場

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ティードリンクチェーン「奈雪の茶(NAYUKI)」を展開する「奈雪的茶控股( Nayuki Holdings)」が2月11日、香港証券取引所に目論見書を提出した。今年第2四半期にもメインボードに上場する見通しだ。

ティードリンク業界から初の上場企業が誕生するとの情報に、投資家たちの期待も高まっている。

しかしながら、奈雪の茶はいまだに赤字を抜け出せていない。2020年は第1〜第3四半期の純損失が2741万元(約4億4000万円)だった。19年はコロナ禍前にもかかわらず、通年で3968万元(約6億4000万円)の損失を出した。調整後の純利益率を見ると、19年第1〜第3四半期が1.0%、20年第1〜第3四半期が0.2%となっており、ティードリンクで利益を得るのが容易ではないことを示している。

「奈雪の茶」の利益率の推移(表中最下段が利益率、データは目論見書より)

課題はライバルとの差別化だけにとどまらない

奈雪的茶控股は目論見書の中で、奈雪の茶を「その場で作る高級ティードリンク」ブランドと定義している。奈雪の茶のチェーン店は競合他社の中では最多で、2020年第3四半期までに中国本土の61都市で420店舗を展開している。

ティードリンク市場全体で見れば、この店舗数も多いわけではない。中〜低価格帯ブランドの「蜜雪氷城(Mixue Bingcheng)」や「一点点(A Little Tea)」などのチェーン店は数千〜1万店を展開している。しかし、奈雪の茶の絶対的強みは、その直営モデルに加え、高級ショッピングセンターやオフィスビル、各都市の中心的商業地区への出店戦略にある。

奈雪の茶と同じカテゴリーで戦う最大のライバル「HEYTEA(喜茶)」は、2020年末時点で61都市に695店舗を展開している。一方、奈雪の茶の店舗数は今年2月5日時点で507店舗となっており、HEYTEAに業界第1位の座を譲っている。

「奈雪の茶」店舗数の推移(データは目論見書より)

両社の店舗タイプの構成は全く異なる。奈雪の茶の店舗タイプは①商業地区に出店するコンセプトショップの「奈雪夢工廠(Nayuki’s Fantasy factory)」と「奈雪的礼物(NAYUKI’ GIFT )」や酒類を提供する「Bla Bla Bar」を含む標準型店舗と②ビジネス地区に出店し、ティードリンクに加えてコーヒーやベーカリー製品にも力を入れる「NAYUKI PRO」に分けられる。一方のHEYTEAは①コンセプトショップ②主力標準型店舗③テイクアウト主体の「HEYTEA GO」の3タイプを展開している。

HEYTEAがテイクアウトに特化したHEYTEA GOの出店を開始する一方で、奈雪の茶は引き続き大型店舗を展開しながら各店舗での体験向上や新製品の開発、運営のデジタル化を進めている。

奈雪の茶の高級志向は客単価にも表れている。目論見書によると、平均客単価は43.3元(約700円)で業界最高となっている。

客単価の高さは、ティードリンク提供とベーカリー、その他商品の小売りを組み合わせた多品目展開によるものだ。奈雪の茶は、コンセプトの「1杯の美味しいお茶にパンを一口」に合わせ、主力ティードリンクと主力ベーカリー製品各25種類以上を展開している。

とはいえ、実際にティードリンクの売り上げとベーカリー製品およびその他商品の売り上げの比率を見ると、2018〜19年は約7対3で、2020年第1〜第3四半期には約8対2となっている。奈雪の茶の思惑とは異なり、ティードリンク目当てに来店するユーザーが大部分だということが分かるだろう。

「奈雪の茶」の取り扱い品目別収益(データは目論見書より)

客単価の高さは、出店場所や内装、原料コスト、パッケージ、スタッフ採用など複数の要素とも関係してくるが、現在の客単価は大きな利益を見込むには不足なようだ。前述したように、昨年第1〜第3四半期の調整後純利益はわずか0.2%だった。

奈雪の茶の店舗数は2018年から19年にかけて急速に増加したものの、ここ2年間は増加のスピードを減じている。前年同期比の増加率で見ると、18年は252%、19年は111%だったが、20年はコロナ禍の影響でほとんど増えていない。出店費用の回収期間で見ても、18年には10.6カ月だったが、20年第1〜第3四半期のデータでは14.7カ月に延びている。

奈雪の茶は、今回の上場で調達した資金の一部をチェーン店のさらなる展開に充てるとしている。しかし、現在の経営状況から明らかなように、奈雪の茶がまず証明すべきなのは収益力だろう。
(翻訳・田村広子)

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