ZARAを脅かす中国発ファストファッション「SHEIN」 米国の若者から圧倒的支持を集めるワケ(一)

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

スタートアップ編集部お勧め記事注目記事

ZARAを脅かす中国発ファストファッション「SHEIN」 米国の若者から圧倒的支持を集めるワケ(一)

7月1日より、これまで36Kr Japanのメディアで提供していた記事のうち、一部スタートアップ企業に関するニュースについては、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」の会員限定で提供します(初期段階では無料会員も対象とします)。まだ登録されていない方は、ぜひそちらをご利用ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

中国発のファストファッションブランド「SHEIN」が米国で大人気だ。

南京市に拠点を置くこのブランドは、米国の若者が好むECサイトのランキングでアマゾンに次ぐ第2位となった。低価格でデザイン性の高い商品が消費者に人気なのは万国共通だ。

SHEINの進出により、アパレル業界のライバル企業たちは限界ギリギリの価格で勝負せざるを得なくなった。その頃からSHEINのデザイン盗作や品質を疑問視する声が上がり、現在もやむことなく続いているがSHEINは段階的に勝利をつかんできた。この先の新たな局面において中国独自のブランドやECモデルを確立することも不可能ではないだろう。

プチプラを求める米国のZ世代

SHEINのウェブサイトにアクセスしてみると、夢中になる人がほとんどだろう。これほどの格安価格でメーカーは儲かるのだろうかと、心配になるほどだ。

若い消費者層がまず驚くのはまさにその価格だ。レディースTシャツが1枚わずか6ドル(約650円)、ワンピースも1着12ドル(約1300円)と、中国であっても安いと感じる価格帯だ。

2020年に米国48州の平均年齢15.8歳の若者9800人を対象に行われた調査の中で、初めてSHEINがランキングでトップ10入りを果たし、ここから異彩を放つようになる。

SHEINがどれほど人気かというと、絶大な人気を誇るヨガウエアブランド「ルルレモン(lululemon)」を抑えて、高収入の若い女性たちの間で人気ナンバーワンになっているほどだ。

日本風の中国雑貨ブランド「名創優品(MINISO、メイソウ)」が北米で人気を博したのと同様、北米のZ世代は低価格商品が必要なのだ。彼は親のお金で生活しているケースは非常に少なく、このため購買力では中国の若者に劣っている。

米国政府の統計によれば、2019年に世帯年収が7万5000ドル(約813万7000円)に満たない家庭が53%を超えており、世帯年収の中央値は上昇を続けているものの、ようやく6万8703ドル(約745万7000円)に達したところだ。

それに対し、コンピューター専攻の新卒者がシリコンバレーで就職した場合、エントリーレベルでも年俸は10万ドル(約1085万円)を超える。もちろんSHEINがターゲットにするのはこのような消費者層ではない。

このような消費者層の違いを考えると、中国の共同購入型格安EC「拼多多(Pinduoduo)」の株価が上昇を続け、米国版の拼多多とも言える激安EC「Wish」がコロナ禍でもIPOに踏み切った理由が理解できる。どの国にもローエンド市場は必ずあり、極端に価格を重視する消費者が存在する。彼らは大手ECプラットフォームの価格システムを打ち破る新たな場を必要としているのだ。

高収入の消費者層がSHEINの品質にいくら疑問を呈し続けても、プチプラ好きの米国Z世代はほとんど意に介さない。自分の好みにぴったり合う流行の商品をお手頃価格で買えるからだ。

ZARAを超えるスピード、デザインから生産まで3日

SHEINは価格以外にもう一つ大きな強みを持っている。それはサプライチェーンのスピードだ。 

ファストファッションブランドの代名詞的存在「ZARA」は、ファッション業界の革命児として一世を風靡したが、残念ながらその栄光は過去のものになりつつある。

今のトレンドをすぐさま取り入れたい消費者のニーズにより、小売業者はますます短いサイクルで生産することを余儀なくされており、英国発の「Boohoo.com」「ASOS」といったウルトラファストファッションのブランドが生まれてきた。

ウルトラファストファッションの場合、商品の生産サイクルはわずか1~2週間ほど。ファストファッションのZARAやH&Mは3~4週間かかり、従来型の服飾ブランドでは6~9カ月を要することを考えると非常に短い。

しかし、驚くことにSHEINはデザインから生産までを最短3日でやってのける。あるサプライヤーはメディアにこう語っている。「SHEINから注文を受けて、完成品を同社の倉庫に送るまでにかかる日数はわずか5日だ。生地製作に1日、裁断・縫製に3日、刺繍やプリントなどの二次加工に1日をかければよい」

公式サイトによれば、SHEINは新商品を毎日1000点投入するという。これは英国のウルトラファストファッションが1週間かけてリリースする数量だ。実際、SHEINは2月7日に1636点、翌8日には2462点の新商品をアップしている。  

次々に新商品を繰り出す能力を支えているのは、小ロットにもすぐに対応できるサプライチェーンだ。中国のあるアパレル関係者は「欧米ではSHEINのスピードが驚異的に映るかもしれないが、浙江省や広東省のアパレル工場ではそれほど驚くことではない」と指摘する。

SHEINの拠点は南京市だが、2015年3月に一部業務を広東省の番禺に移転させる。ここは世界最大のアパレル縫製市場で、大型工場から小規模の個人工房までがひしめき合っている。場合によっては10着から注文可能という。

10着というのはZARAの工場では到底無理な数字と言えよう。つまり、同じ時間内でも、SHEINには新商品のテストやリリースを行うだけのチャンスがあり、それを支えるサプライチェーンとの連携ができあがっているのだ。工場との良好な協力関係を維持するため、SHEINは高コストのサンプルパターン作成を引き受けており、支払いも迅速に行う。

価格とスピードで他を圧倒するSHEINだが、同時に論争も巻き起こしている。これほどの低価格で本当に品質を保てるのかという懐疑的な声が業界内に根強い。

欧米のファッション業界で、企業を評価する重要な指標の一つにサスティナビリティ(持続可能性)がある。化学繊維を大量に使用するSHEINは、多くのメディアから品質問題と環境問題を招くと批判の的になっている。

米国カリフォルニア州裁判所の公開文書を調べると、SHEINが2015年12月から2019年3月にかけて同州の環境保護と安全に関する要求に違反した記録を見つけることができる。

後編:DTCブランドとして海外で勝負

(翻訳・畠中裕子)

7月1日より、これまで36Kr Japanのメディアで提供していた記事のうち、一部スタートアップ企業に関するニュースについては、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」の会員限定で提供します(初期段階では無料会員も対象とします)。まだ登録されていない方は、ぜひそちらをご利用ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録