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4800億円でフィリップスの家電事業を買収 中国ヒルハウス・キャピタルの狙いとは

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3月25日、オランダのヘルスケア大手フィリップスは、家電事業を中国の投資ファンド「高瓴資本(Hillhouse Capital、以下「ヒルハウス」と略称)」に37億ユーロ(約4800億円)で売却すると発表した。「フィリップス」ブランドのライセンス料を含めると44億ユーロ(約5700億円)となる。

筆頭候補ではなかったヒルハウス

世界中の市場に進出しているフィリップスは家電事業全体の売却を希望し、買収すればフィリップスが持つシェア、販売チャネル、ブランド力をすべて手中にすることになる。魅力的な買収対象であるため、多数のファンドや企業が名乗りを上げていた。しかし、フィリップスは最低でも30億ユーロ(約3900億円)以上の価格での買収を求めており、大半の企業がこの金額を提示された段階で手を引いた。

2回目の入札にあたり、フィリップスから入札参加指名があったのは1600億元(約2兆7000億円)もの資金を運用する中国の投資ファンド「鼎暉投資(CDH Investments)」と、中国の家電大手「TCL」だけだった。ヒルハウスも入札に参加したが、少なくともフィリップスにとって筆頭候補ではなかったことがわかる。

にもかかわらず、ヒルハウスへの売却が決定したのは、競争相手より高い金額のオファーをしたためだろう。また、DX(デジタル・トランスフォーメーション)支援でのヒルハウスの実績もものを言った可能性がある。

双方の思惑

フィリップスは数多くのヒット商品を世に送り出したが、なぜ家電事業を売却することにしたのだろうか。

答えは簡単で、家電事業の業績が低迷しているためだ。財務レポートを見る限り、フィリップスの家電事業の規模は5年連続23億ユーロ(約3000億円)前後にとどまっており、成長することができていない。さらに昨年は新型コロナによって減収減益となった。また、2011年に新しいCEOが就任した後、フィリップスはヘルスケアを主要事業とする方針を固め、その後オーディオ、テレビ、ディスプレイ事業などを相次いで売却し、売却で得た資金をヘルスケア事業に投資していた。今回の家電売却も、この方針に沿った決断だ。

それでは、なぜヒルハウスが高額なオファーで買収をしたのか。背景として挙げられるのが世界的な産業構造の再編である。先進国の大手企業が非主要事業を売却する一方、中国の製造業、家電、電気設備産業は特許、ブランド力、販売チャネルを求めて買収を繰り返しており、双方のニーズは一致している。ヒルハウス自身としても、ファンドの出資者に実力を証明し続けることが必要で、そのためにはフィリップスのような大規模な投資案件が最適なのだ。

また、ヒルハウスはバイアウト投資を「技術面の強みを活かす好機」と捉えている。数年前にシューズブランドの「百麗(Belle)」を買収した後、ヒルハウスの支援のもとでDXが行われ、その後百麗の売上はオンライン・オフラインともに順調に伸びている。今回のフィリップス買収によって、ヒルハウスは初めて完備された事業群を持つことになり、DXの効果をより十分に発揮することを目指しているのだろう。

ヒルハウスは買収対象にソフトウェアなどのツールを提供するだけでなく、投資後の活動を担当する200人体制の「DVC(Deep Value Creation)」チームも抱えている。同チームはDX、リーンマネジメント、人材管理などの支援を担当する。

さらに、ヒルハウスが投資してきた各社との協業も期待できる。ヒルハウスは多種多様なプラットフォームへ出資しており、その中には法人顧客の事業効率化を実現するサービスが多数含まれている。また、EC業界での投資も多く、サプライチェーン、会員管理、ユーザー・エクスペリエンスの向上、デジタルマーケティング、製品開発などの面でフィリップスに適したパートナーが見つかるだろう。

総合的に言えば、バイアウト投資を望むヒルハウスにとって、フィリップスは最高の投資対象だ。ヒルハウスはこれまでも百麗や家電大手の「格力集団(Gree Group)」の株式を取得してきたが、いずれも支配株主となっておらず、経営の主導権を握っているわけではない。それに対し、今回はフィリップスの小型家電事業を完全子会社化したのである。今後の経営が順調に行けば、ヒルハウスはバイアウト投資をさらに増やしていくことだろう。

(翻訳・小六)

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