オンライン教育の「掌門」が米上場準備。マンツーマン授業に強み、ソフトバンクGなど出資

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オンライン教育企業の上場ブームが起きている。「一起教育科技(17zuoye)」が米国上場したのに続き、「掌門教育(Zhangmen Education Technology、以下「掌門」と略称)」も米国上場するための目論見書を提出した。NY市場への上場を計画し、引受証券会社はモルガン・スタンレー、クレディ・スイス、シティグループ、香港の富途控股、中国のオンライン証券会社「老虎証券(Tiger Brokers)」と「雪球(Snowball Finance)」、豪マッコーリー銀行だ。

2005年に張翼氏が創設した掌門は、はじめはオフラインの学習塾のみを運営していたが、2014年からオンライン教育に乗り出し、マン・ツー・マンの授業を中心としてきた。

マン・ツー・マンはもっとも効果が高い授業形式とされているため、多数のオンライン教育企業がこの市場に参入したが、マン・ツー・マン特有のデメリットとして、規模が大きくなるほど効率が低くなることが課題だった。また、オンライン教育に対する国の規制も厳しくなったため、ほとんどの企業が2018年から不採算を理由にマン・ツー・マンから撤退。現在マン・ツー・マンを中心とするオンライン教育のスタートアップは掌門のみである。以下、掌門の特徴と実力を見てみよう。

資金調達力と収益力

2014年にオンライン教育に乗り出してから、掌門は11回の資金調達を行っている。出資者には政府系ファンドの「中国投資(China Investment Corporation)」と「中国国際金融(CICC)」、米ウォーバーグピンカス、日本のソフトバンク・ビジョン・ファンドなどがある。目論見書によると、今年1-3月期末の時点で、掌門が保有する現金や金融商品の残高は41億元(約700億円)強である。

四半期ごとの売上高

収益力に関しては、2020年に売上高40.184億元(約680億円)となり、2019年の26.687億元(約450億円)から50.6%伸びた。まだ黒字化には至っていないものの、純損失は2020年に前年比で32.7%減少し、業績の改善が期待できる。

掌門のコストのうち、最も高いのが教師の人件費で、経費の50%を占める。教師の人件費を除いた管理費のうち、最も比率が高いのが販売費で、管理費の6割以上を占める。その次が開発費で、年間3億元(約50億円)で管理費の約8%を占める。

授業形式の多様化

掌門の授業ははじめ高校生向けのみだったが、その後中学生向け、小学校高学年向けと少しずつ対象を広げ、現在では小学校低学年向け授業も始めている。特に昨年は新型コロナ禍の影響でオンライン教育の受講者が急増し、掌門の有料マン・ツー・マン授業受講者はこの1年間で前年比43.2%増の54万人に達した。この54万人分の売上高は37.39億元(約640億円)で、全体の93.1%を占める。

掌門のマン・ツー・マン授業におけるシェアは昨年約1/3に達し、安定した売上高を確保できるようになった。そこで、掌門は新たなニーズを掘り起こそうと、昨年7-9月期から最大25人が受講する少人数クラスを始めた。

少人数クラスはマン・ツー・マンよりも利益率が高いため、掌門は少人数クラスの拡大に注力している。2020年7-9月期の時点で数万人にとどまっていた少人数クラスの有料受講者は、今年1-3月期の時点で29万人に達した。また、少人数クラスからマン・ツー・マン授業へ受講者を誘導する効果も期待されており、目論見書によると、小学校三年生の少人数クラスの受講者のうち、69%がその後マン・ツー・マン授業を受講するようになったという。

財務状況の改善

少人数クラスのオンライン教育市場には、教育大手の「新東方(new oriental)」傘下の「東方優播」など有力企業が揃っているが、掌門は現時点で当該市場の第3位につけており、伸び率はもっとも高い。

マン・ツー・マン授業の市場規模は2025年に515億元(約8800億円)に達すると予想されており、掌門が1/3のシェアを保ったままそうなった場合、売上高は154億元(約2600億円)となり、現在の約3倍となる。少人数クラスの市場規模は2025年に810億元(約1兆4000億円)になると見られるが、掌門の売上高はまだ1億元(約17億円)強しかない。つまり、中国のオンライン教育市場全体のポテンシャルから見れば、掌門の売上高が伸びる余地は非常に大きいと言える。

オンライン教育をめぐる競争が激しさを増し、規制がさらに強化されると予想される中、掌門が上場後早期に売上高を伸ばせるかどうかが、同社の長期的な成長を左右する鍵となるだろう。

(翻訳・小六)

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