注文の9割が当日・翌日配送、EC2位京東のアリババにない強み

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注文の9割が当日・翌日配送、EC2位京東のアリババにない強み

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EC大手の京東集団(JD.com)は5月20日、「618セール」(6月18日前後に行われる中国ECサイトのスーパーセールイベント)に向けて決起大会を開いた。今年の618セールは5月24日から6月20日まで。

長いセール期間は、販売事業者にとって商品の調達や販売がしやすくなり、より多くの集客にもつながる。これには物流インフラの整備が大きく関わっている。

京東の物流サービスは、直営・迅速・ハイクオリティで知られている。同社はこのサービスを維持するために、倉庫建設、設備更新および配達員の雇用に多額の資金を投じてきた。

これまで、物流に対するECの存在の大きさは注目されてきたが、物流がECを支えていることは軽視されがちだった。

京東傘下の物流企業「京東物流(JD Logistics)」は5月28日、香港に上場した。上場初日、同社の株価は取引開始時に15%上げて46.2香港ドル(約653円)をつけ、時価総額は2800億香港ドル(約3兆9600億円)を超えた。

配達:スピード競争

京東を利用したことのある人は、当日配達や翌日配達の効率の良さを絶賛する。

昨年は、オンライン上で処理される注文の約9割が当日または翌日に配達された。うち6割以上が「211限時達」サービスを利用している。このサービスは、午前11時までに注文した商品は当日配送、午後11時までに注文した商品は翌日午後3時までに受け取れるというものだ。

京東物流は遠隔地への配達時間で業界第3位(資料は「広発証券(GFセキュリティーズ)」より)

京東物流の配達が速い理由は、一般的な物流企業とは異なり、まず商品を調達して倉庫にストックしておき、注文が入るとすぐに配達することにある。

消費者が京東のサイトで注文手続を完了すると、配送先に最も近い倉庫から中国全土にある7000カ所余りの配送ステーションのうちの1カ所に商品が発送される。その後、京東所属の配達員と傘下の物流配送プラットフォーム「達達集団(Dada Group)」の配達員、計19万人のうちの1人が「ラストワンマイル」のタスクを完了する仕組みだ。

消費者が別のプラットフォームで注文をした場合、たとえ遠距離であっても、物流企業は売り手から商品を受け取り、目的地まで輸送する。一方、京東物流の場合は、商品は最も近い倉庫から配送センターに発送され、そこから配達員により配達されるため、配達時間が短くなる。

京東物流は、多くの需要が見込まれる市場付近の倉庫に商品を「待機」させておくモデルを採用している。そのため、同社の倉庫面積は同業他社よりもはるかに広い。

公開されているデータによると、京東物流が運営する倉庫は昨年12月31日時点で900カ所。同社が管理するクラウドストレージを含めると、倉庫の総面積は約2100万平方メートルに及ぶ。物流大手の「順豊(SFエクスプレス)」でも倉庫の総面積は486万平方メートルで、京東物流の23%しかない。

京東物流は倉庫を多く保有することで、配達車両を少なめに抑えている。同社が保有する配達車両は7500台。一方の順豊は、幹線輸送用と支線輸送用の車両を計10万台、集荷・配達用車両を4万3000台保有している。

一般的な物流企業で京東物流のモデルを採用するのは難しい。京東物流の背後に京東商場が控えているからこそ成立するモデルなのだ。京東商場は、その極めて多くの注文件数で、京東物流の巨大な倉庫を支えている。その他の物流企業は、京東商場のように安定的かつ大量の注文件数は期待できず、消費者ニーズも正確に予測しにくいため、巨大な倉庫を建設できない。ただし、同一都市内での配達や地方市場では、このビジネスモデルも万能とは言えない。

開放:コスト戦争

物流はスケールメリットがものを言うビジネスだ。入庫商品の多寡にかかわらず、土地使用料や倉庫レンタル料、ガソリン代、人件費は同じだけかかかる。そのため、京東はインフラを段階的に整えてから、プラットフォームに出店する事業者向けに物流サービスをスタートさせた。

まず、入居事業者向けの総合サービスを提供した。京東物流の目論見書によると、日用消費財、家電・家具、情報・通信・消費者用電子機器の三大分野からの収入が、外部顧客による売上高の7割以上を占めている。

次に、達達集団を傘下に収め、「ラストワンマイル」の課題を解消した。2019年4月1日から20年3月31日までの1年間で、同社の累計成約件数は8億2200万件に達した。同社の宅配事業は中国全土の2400の県・区・市をカバーし、自社所属の配達員63万人以上と委託配達員400万人近くを擁している。

さらに、スーパーマーケットの買収で商流を拡大し、物流の生産性を高めようとしている。同一都市内での配達サービスやフードデリバリーは「美団(Meituan)」の独占状態だが、個人宅配を大規模化するのは難しい。京東はショッピングセンターやスーパーマーケットを傘下に収めることから手をつけた。小売り大手の「永輝超市(Yonghui Superstores)」「万達商業(WANDA Commercial)」「歩歩高(BBK)」への資本参加に加え、ウォルマートや「華潤万家(Vanguard)」などと戦略パートナーシップを結んでいる。

物流に対するニーズは今後もなくなることはない。高コスト・高単価の京東物流は配送密度と客単価の低い都市にどのように進出していくのか。物流戦争が繰り広げられるに違いない。

作者:遠川商業評論(WeChat ID: ycsypl)、余佩頴、柳采薇

(翻訳:lumu)

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