注目高まる仮想空間「メタバース」企業に投資集中 スマートシティ構築にも活用

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注目高まる仮想空間「メタバース」企業に投資集中 スマートシティ構築にも活用

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インターネット上の仮想空間を指す「メタバース(Metaverse)」という概念は、米ゲームプラットフォーム「Roblox」が今年3月、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場したことで一気に注目されるようになった。

中国でもこのほど、「空間知能(Spatial Intelligence)」技術を活用してメタバースを構築する「Deep Mirror(宸境​科技)」が、エンジェルラウンドで3回目の資金調達を実施し、数千万ドル(数十億円)を調達した。リード・インベスターはスマホ大手のOPPO、米投資大手Fidelity傘下の「Eight Roads」、広州汽車集団(GAC Motor)傘下の「広汽​資本(GAC CAPITAL)」の3社。コ・インベスターは上海汽車集団(SAIC MOTOR)傘下の「上汽加州風投(SAIC Venture Capital)」のほか「越秀産業基金(​Yuexiu Industry Investment Fund)」「復星鋭正資本(Fosun RZ Capital)」「欣旺達電子(Sunwoda Electronic)」が務め、既存株主の「火山​石資本(Volcanics Venture)」も追加出資した。

Deep Mirrorは2019年に設立され、空間知能技術の開発を進めてきた。同社は空間コンピューティングとAI技術を活用して空間・シーン・データ・ユーザーをつなげ、さらに時間という次元も取り入れてユーザーの感知できる世界を広げようとしている。中核となる技術は「空間知能クラウド」「3次元NLU(自然言語理解)」「SLAM(Simultaneous Localization and Mapping、視覚センサーと慣性センサーの情報を使った自己位置推定と環境地図作成の同時実行)」「センサー融合」「マルチエージェントシステムを利用した深層学習」「クラウドエンジン」だ。同社はこれらの技術を結び付け、未来のデジタル都市空間に配置されるインフラストラクチャーや公共サービス、オフィス・社交・娯楽・教育施設などを支える基盤として提供しようとしている。

同社が考えるメタバースの最終形態を実現する近道は、現実世界の上にパラレルワールドを構築し、ユーザー1億人を超えるキラーアプリを開発することだ。そのバーチャルでありながら現実世界と連動するアプリは、常にインターネット上に展開する広大な世界そのもので、全世界の人々が同時に参加し、そこで生活できるのだという。

雷加貝CTO(最高技術責任者)によると、Deep Mirror は現在、実在の都市をデジタル空間上に再現するプラットフォーム「MirrorVerse」を構築している。同プラットフォームは、次の四つの要素を重ね合わせたものだ。一つ目は、現実世界のすべてを1対1で再現する「Digital Foundations(デジタルの基盤)」。二つ目は、メタバースの構築に用いる「Digital Bricks(デジタルブリックス)」。三つ目は、人と人、人とNPC(ノンプレイヤーキャラクター)、人とNPCと現実の環境を高度に融合・相互交流させる「Interactive Content(インタラクティブコンテンツ)」。四つ目は、全ての人が同時に接続できる自由かつカスタマイズ可能な「Immersive Experience(没入体験)」だ。

MirrorVerseは、すでに数回のバージョンアップを繰り返し、さまざまなデバイスを利用する多くの人が、さまざまなシーンを共有しながら交流できるようになっている。ARグラスやモバイル端末、ビッグスクリーンにも対応可能で、正確なリアルタイム位置情報が、複数の人による共同作業や情報共有を可能にしている。低遅延・広帯域という特徴を持つ5G技術を背景に、MirrorVerseは高精度なゲーム素材のリアルタイムレンダリングも可能にする。

Deep Mirrorは昨年12月、広州市南沙区のミラーワールド「Mirror City」を構築すると発表した。中国で初となるクラウド・5G・AI技術を駆使して都市レベルで空間知能を活用するためのデジタル基盤だ。この事業は、同区政府が通信大手「中国移動(チャイナモバイル)」、電力大手「中国南方電網(China Southern Power Grid)」、自動車大手「広州汽車集団(GAC Motor)」、韓国SKグループ傘下の「SK中国」およびDeep Mirrorと共同で推進している。

広州市南沙区で開催された「Mirror City」の契約式典

同社は下図のように、スマートシティに活用可能な複数の層から成るデジタル基盤「MirrorVerse」を構築した。これらの層は、下からリアルワールドの物理層、リアルワールドのデジタル層、空間インデックス層、ミラーワールド層、バーチャルなプライベートワールド層となっている。同社は次世代のスマートシティのための空間知能を設計し、IoTによるデータ収集、5Gによるデータ通信、クラウドコンピューティング、AIによるデータ解析を行い、空間の形態に関するデータの伝送・検索を実行する。デジタルの世界を現実世界の中に組み込むことで、現実世界の情報の再編・再構築を可能にする。

「MirrorVerse」の構造

メタバース関連企業に投資家の注目も集まっている。Robloxの時価総額は、6月3日時点で570億ドル(約6兆2000億円)に達し、世界三大ゲームメーカー各社の時価総額を超えた。人気ゲーム「Fortnite(フォートナイト)」を手掛ける米Epic Gamesは4月13日(米現地時間)、10億ドルを調達したと明らかにした上で、資金をメタバースの開発に充てると発表。この資金調達完了後、同社の評価額は287億ドル(約3兆1000億円)に達した。アップルやフェイスブック、マイクロソフト、グーグルなどがVR・AR分野の事業を進めていることも、メタバース関連分野の発展を大きく後押ししている。

メタバースは中国でも注目を集めている。テンセント(騰訊控股)はRobloxとEpic Gamesに出資。バイトダンス(字節跳動)は「代碼乾坤科技(Code View Technology)」に、ネットイース(網易)は「IMVU」に出資している。ゲームメーカー「Lilith Games(莉莉絲)」はRobloxを目標にUGC(ユーザー生成コンテンツ)制作プラットフォーム「達芬奇(Da-Vinci )」を立ち上げ、同じくゲームメーカの「米哈遊(miHoYo)」も膨大なコンテンツを内包するメタバースの構築を開始した。ファーウェイはメタバースに照準を合わせ、ハードウエアやエンジン、ゲームを含めた全方位的な事業展開を進めている。また、関連事業を手掛ける新興企業による資金調達も相次いでいる。

世界中で、そして中国で、メタバース関連企業への注目は高まり続けるだろう。
(翻訳・田村広子)

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