「メタバース」でゲームの枠を超える。『原神』開発元「miHoYo」、人気SNS「Soul」に100億円出資の理由

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6月18日、ソーシャルアプリ「Soul」の運営会社「上海任意門科技有限公司(Soulgate inc.、以下「Soul」と略称)」が、米国証券取引委員会に目論見書を提出した。同社は1320万株の米国預託証券(ADS)を発行し、同時に私募も行う。私募では中国のスマホゲーム会社の「米哈遊(miHoYo)」が8900万ドル(約98億円)でSoulの株式の一部を取得する予定だ。

※Update:IPO予定の前日の23日午後、同社は突然IPOプロセスを一時中止すると発表した※

人気ゲームの「原神(Genshin)」や「崩壊」シリーズを持つmiHoYoが、なぜSoulに出資するのか。その理由は、両社がともに狙う「メタバース」市場の存在にある。

メタバースとは何か

メタバースはネット上に構築された仮想の三次元空間で、まだ現時点では広く認められている定義がない。1億5000万人以上の利用者を持つメタバースプラットフォーム「Roblox」の公式説明によれば、メタバースは利用者がアバターと呼ばれる自分の分身を介して仮想空間に入ることで、その世界での暮らしを楽しむものであり、大きな特徴としてアバター、ソーシャル機能、没入感、低遅延、多様性、随時アクセス可能、独自の経済システム、仮想文明の8つを挙げている。

Soulのソーシャルアプリも同様の理念に基づいており、利用者は登録時にキャラクターメイク機能で自分のアバターを作り、そして一連の質問に答えて「どの星の出身か」を決め、自分の個性に関するタグをつけることができる。登録後はレコメンドされたほかの利用者にフレンド申請を送ったり、チャットルームやゲームルームで大人数での交流をしたりすることができる。

従来のソーシャルアプリとの違いは、Soulが現実離れした世界を構築し、そこでは年齢、容姿、社会的ステータス、居住地などの制限を一切受けないことである。顔写真をプロフィールに使うこと自体が禁止されており、アバターの個性、出自などはすべて質問に答えた後に自動で決められ、自分で変更することができない。こうした設定によって、利用者を完全に実生活から解放させることを目指しているのだ。

miHoYoがSoulに出資する理由

上記の特徴を見る限り、SoulはRobloxと多くの共通点を持つといえる。Robloxが主張した8つの特徴のうち、Soulは「没入感」と「仮想文明」以外の6つを満たすことができる。

言い換えれば、Soulの課題は没入感と仮想文明をいかに構築するかにある。こうした課題もあって、Soulの決算は楽観的というには程遠い。目論見書によれば、同社の2020年の売上高は前年比604.3%増の4.98億元(約85億円)で、赤字は4.88億元(約83億円)だった。2021年1〜3月期の売上高は前年比259.8%増の2.38億元(約40億円)、赤字は3.83億元(約65億円)となった。

上記の課題を解決する可能性があるのがmiHoYoだ。没入感と仮想文明の構築は、まさに同社が得意とするところである。原神と崩壊シリーズは、ともに世界観と没入感を高める遊び方が好評を博しており、それはメタバースの構築においても強みとなるだろう。

もちろん、miHoYoとSoulが提携すればすぐに理想的なメタバースが出来上がるわけではない。米ゲーム会社「Epic Games」の創業者Tim Sweeney氏は、メタバースは企業が商品として開発し、収入源として運営できるようなものではないと話したことがある。同氏はメタバースを大衆参加型の新たなメディアの一つと考えており、その意味で特定の会社に独占されることは不可能だとする。

また、NVIDIAの創業者のジェンスン・ファン氏は、メタバースは現実世界とのつながりを持った、数多くの人に共有される仮想世界で、アバター同士が深く交流するための場だと話している。そのようなメタバースを構築するのに必要なのは資金やテクノロジーだけでなく、人文学的要素や思考も求められるという。

このように、メタバースは簡単に実現できる世界ではない。それでも、miHoYoとSoulの提携は、無限の可能性を持つメタバースに近づく一歩になるだろう。

原作者:「競核」(WeChat ID : Coreesports),作者:桂志偉

(翻訳・小六)

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