Airbnbが中国民泊戦略転換。現地企業が強い大都市避け地方開拓
民泊大手Airbnbの共同創業者で中国事業の会長を務めるネイサン・ブレチャージク氏が上海で、現地メディアを招いた記者発表会を行った。評価額310億ドル(約3兆5000億円)に成長した同社の中国市場における状況や、今後の事業戦略について明かしている。
海外から国内ローエンド市場に軸足移すAirbnb中国
ブレチャージク氏は中国事業の現状について、以下の3点を挙げた。
●国内旅行業務が事業全体の50%を占めている。中でも1級都市以外の都市で予約件数が前年比170%と顕著に成長した
●ゲストに人気の国内都市トップ3は上海市、成都市、北京市。新1級都市といわれる成都が2位につけた
●2018年国慶節の大型連休(10月初週)の国内予約状況は前年比200%増。成都、重慶の2都市がトップ10にランクインした
Airbnbの中国事業は事業モデルの転換期にあり、今後はローエンド市場により注力していくことになるだろう。国内2級・3級都市が成長をけん引していく見込みであること、また、1級都市ではすでに途家(Tujia)、小猪短租(xiaozhu.com)といった国内民泊企業が優位にあるからだ。
この1年ほど、ベンチャーキャピタルをはじめとする各業界でも「ローエンド市場」は一種のトレンドワードとなっている。ローエンド市場を足がかりに急成長した成功例では、創業3年以内にNASDAQ上場を果たしたEC拼多多(Pinduoduo)や、ニュースアプリ趣頭条(Qutoutiao)が記憶に新しい。背景には、物流や通信のインフラが農村部にまで浸透してきたことがある。
一方で、民泊事業が1級都市から3・4級都市へ拡大する場合、市場や顧客を育てるには大きなコストがかかり、そう容易ではない。その点、Airbnbは各国で事業のローカル化を経験してきた強みがある。
といっても、Airbnbの中国事業はこれまで真逆の戦略をとってきた。2015年に中国進出した当時は、中国人旅行者が中国国内ではなく海外旅行先で宿泊することを想定し、ハイエンド顧客を主要ターゲットに定めていたのだ。国内物件の質に極端なバラつきがある現状を考慮すれば、地方の開拓には消極的にならざるを得なかっただろう。結果、国内の民泊物件は、現地企業の優勢が続いてきた。
また、市場の特異性も一つの壁だった。Airbnbのサービスはシンプルさが売りだが、こうした運営方法を中国で採用しても「サービスが悪い」「ゲストに室内の備品を壊された」などのクレームが殺到することになる。ブランドとしての流儀をかたくなに守れば、同業の国内大手サービスに太刀打ちできない結果を招く。2016年、滴滴出行(Didi Chuxing)に中国事業を買収されたライドシェアのUberがいい例だ。
Uberの例を教訓として、Airbnbは2017年から中国事業のローカライズを進めてきた。現在、中国事業チームは北京で200人ほどのメンバーを抱えるまでになっている。
課題は現地化とブランドイメージのバランス、セキュリティ保全
Airbnb中国は新たな事業責任者として、中国のオンライン旅行代理店業で活躍する連続起業家の彭韜氏を選任した。旅行記録の共有アプリ「面包旅行(Breadtrip)を立ち上げた人物で、主要都市に限らず、中国市場全体を見渡せる人物として白羽の矢が立った。今後はブレチャージク会長とともに中国事業を主導していくことになる。

Airbnb共同創業者で中国事業会長のネイサン・ブレチャージク氏(左)、Airbnb中国総裁の彭韜氏
「旅行は日常的に行われるものではないため、ブランド認知の定着が必要だ」
彭韜氏はこれから、海外から国内1級都市へと軸足を移してきたAirbnb中国を、2線・3線都市、ひいては農村部にまで浸透させると同時に、従来のブランドイメージや理念は維持しなければならない。
また、シェアエコノミーの世界でしばしば相反する利益と安全性の両立にも配慮しなければならない。利益を追求するあまりセキュリティを軽視すると足元をすくわれかねない。その点でも彭韜氏は、「とにかく安全第一。データ管理やカスタマーサービス、言語サポート、保険などの体制を整備して、ゲストとホスト双方の安全を守る」と明言している。カスタマーサービス部門も米国本社から自社へ移し、独自に運営するという。
(翻訳・愛玉)