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著名中華チェーン「楊国福麻辣燙(ヤングオフマーラータン)」が東京で増殖している。2018年末に池袋に日本1号店を開店、今年に入って御徒町、高田馬場、新大久保と立て続けに出店しているのだ。麻辣燙は麻辣(マーラー)スープに肉や野菜、春雨など好きな具材を入れて煮込んだ中華料理で、中国ではファストフード(快餐)の一つとして人気がある。筆者にとっては中国留学中に週3ペースで食べていた思い出深い味だが、ほとんどの日本人には馴染みがないような……。そんなに前のめりに店舗を広げて大丈夫なのか、中国の楊国福本社から東京に派遣され、市場管理を担当している李さんに「勝算」を聞いた。
具材、スープ、食器も中国から取り寄せ
日本ではニューフェイスだが、楊国福麻辣燙は中国で6000店舗以上を展開する、マクドナルド並みの超有名ファストフード。
しびれるような辛さの麻辣(マーラー)スープに、自分の好きな肉や野菜、麺を投入して食べる。「火鍋の1人版」と言うと想像しやすいかもしれない。具材の重さで価格が決まり、日本だと100g400円。ちょっと重めの具材を入れると2000円を超えることもある。価格は中国の4~5倍だが、味は中国で食べていたものと全く同じだった。
李さんによると東京の楊国福は中国の直営店舗で、本国から経営をコントロールしている。野菜などの具材やスープだけでなく、店内の食器やテーブルも現地から取り寄せる徹底ぶりだが、日本の家賃や人件費、中国からの具材輸入を考慮するとこの価格にせざるを得ないという。
麻辣激戦区の渋谷で日本人開拓
現在、東京で営業している4店舗(池袋、御徒町、高田馬場、新大久保)界隈は、在日中国人が多い地域だ。李さんによると、池袋はオープン当初の2018年に比べると日本人客も増えてきたそうだが、語学学校が多い高田馬場や新大久保の店舗はほとんどが中国人客だという。
確かに、ここで麻辣燙を食べていると中国に帰った気分になる(筆者は日本人だが……)。中国のお店の雰囲気と味を100%再現しているため、在日中国人や、筆者のような一部の日本人にウケているのだ。
今年に入って出店を加速している理由について、李さんは「2020年からグローバル化戦略を進めており。日本だけではなく、華人が多いシンガポールやオーストラリアなどに積極展開しています」と話した。東京では8月に渋谷に出店するほか、年内に新宿・銀座にも進出する計画もある。さらに2021年には横浜市や福岡市など地方都市にも展開したいそうだ。
実は渋谷は麻辣燙の有名店・七宝(チーバオ)を始め、双子マーラータン、頂マーラータン、四川マーラータン 渋谷星星倶楽部の4店舗が存在しており、「麻辣激戦区」として知る人ぞ知るエリア。楊国福は渋谷を皮切りに、日本人の客層を切り開いていきたい考えだ。
とは言え、コロナ禍で飲食店が逆風を受ける中で、新宿や銀座まで手を広げて大丈夫なのか?。こちらの心配に対し李さんは「今は、中国人をメインターゲットにしていますが、今後は日本人にも食べてもらいたいです。最近は日本でも麻辣系の食べ物が増えてきているので日本人にも人気が出る可能性は十分にあると思います」と自信満々だ。銀座出店については、「日本の中心地だから」と野望を明かした。日本人に受け入れられるよう、イメージキャラクターになってくれる有名人も探しているそうだ。
カルディやファミマでも麻辣ブーム
確かにここ数年、日本で“麻辣”の字を目にする機会が増えている。輸入食品店のカルディでは麻辣醤(マーラーソース)や麻辣メシの素、麻辣カレーなど多くの麻辣食品が販売されており、ファミリーマートでは、ファミチキ麻辣味や中国ではお馴染みのスナック麻辣花生(マーラーピーナッツ)が販売され話題になった。カルビーや湖池屋も麻辣味のポテトチップスを販売している。
筆者のブログで読者の反応が圧倒的にいいのは「火鍋」だが、確かに今は李さんの言う通り、日本人の舌が火鍋で「麻辣」に慣れてきたステージでもある。火鍋が開拓した「麻辣」市場を楊国福がさらに広げられるのか、注目したい。
この連載では、人気ブログ「東京で中華を食らう」を運営する阿生さんが、日本の中華料理店事情をビジネス面から紹介します。
阿生:東京で中華を食べ歩く26歳会社員。早稲田大学在学中に上海・復旦大学に1年間留学し、現地中華にはまる。現在はIT企業に勤める傍ら都内に新しくオープンした中華を食べ歩いている。Twitter:iam_asheng
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