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中国国内のバトルロイヤルゲームにおけるネットイース(NetEase=網易)の存在感は日増しに薄まっているが、一方で日本では大きなブームが沸き起こっている。
同社は2017年10月、国内第一弾となるバトルロイヤルゲーム「荒野行動(KNIVES OUT)」をリリースした。登録ユーザーは発売当月に1億人を突破。だが中国国内でのこの華々しい成績は半年弱しか続かなかった。ところが「荒野行動」は日本上陸から3年半経った今でもその人気ぶりは全く衰えていない。
日本市場に賭けたネットイース
ネットイースの海外進出戦略は2015年に始まったが、当初のビジネスモデルはまず中国国内でゲームを制作し、海外の発行元からリリースしてもらうといういささか大雑把なものだった。当時の海外進出方針は、大まかに言えば「どうせなら海外でもリリースして少しでも儲けを増やす」という副次的なものだったため、なかなか芽が出なかったのだ。
だがネットイース傘下のバトル系ゲームは例外で、「絶地求生」は全世界で「PUBGブーム」を巻き起こし、市場が画一化した日本でも若干の話題を呼んだ。このモバイル版は同社が世界に立脚する上での重要な切符となるかもしれない。
ゲームクリエイターの丁超氏はチームを率いて「荒野行動」の開発に携わった際、ある一つのルールを定めている。それは大きなバナーを除き、ゲームのUI上に漢字を表記させないというものだ。その後各言語でのリリース時にはテキストの翻訳のみを行うだけで済んだため、世界各国でのリリース準備業務を大幅に短縮することが可能になったという。
2017年末には、ネットイース傘下のバトルロイヤルゲーム「終結者2:審判日(Rules of Survival)」も世界中で次々とリリースされた。
「荒野行動」に関しては全世界で2カ月間にわたるプロモーションが展開されたが、大きな反響は得られなかった。とはいえ、ネットイースが長期残存率を確認したところ、日本市場のリテンション率(継続率)は注目に値するものであり、20日継続率は米国などの市場の3~4倍となっていた。
取捨選択を経て、ネットイースは非常に賢明な決定を下している。それは「荒野行動」の日本での展開に全精力を注いだことだ。同ゲームが日本に定着したことは、供給側に以下のような明確な強みをもたらした。
(1)ライバル不在による先発優位性
日本のゲーム会社の対応はのんびりとしたもので、バトルロイヤルゲームの開発競争にすぐには加わらなかった。「荒野行動」は他のゲームに比べ少なくとも3カ月ほど先行して発表されている。一方、テンセントは「PUBG M」をグローバルマーケットに投入した際、日本を主要市場とみなしておらず、日本語版のリリースは英語版に比べ2カ月も遅れた。こうしてかれこれ半年弱の空白期間が生まれ、このおかげで同市場はネットイースの独壇場となった。
(2)完成度の高さ
「荒野行動」のリリースは早かったものの、完成度は高かった。中国国内で同時期にリリースされたシャオミのシューティングPUBGゲーム「小米槍戦」などと比べても、「荒野行動」は最も高い評判を得ていた。
(3)日本市場に寄り添った広告マーケティング手段を採用
「荒野行動」はテレビ広告を打たず、リリース初期には主にYoutubeやUGCコンテンツでの広告が重視された。その意思決定の背後には、出所不明の広告より周囲の友人やインフルエンサーのオススメを信用するという日本社会の心理に対する正確な理解がある。
その後はIPコンテンツとの頻繁なコラボレーションによりさらに多くのユーザー獲得に成功した。初期の「進撃の巨人」「銀魂」をはじめ、「炎炎ノ消防隊」とのコラボバージョンなど、「荒野行動」は日本のほぼ全ての人気アニメとのコラボを果たしている。
ネットイースの判断は正しいものだった。バトルロイヤルモバイルゲームはその後確実に世界を席巻している。現在、テンセントの「和平精英」「PUBG MOBILE」、テンセントと米ゲーム開発会社Activision Blizzardの共同開発による「コール オブ デューティ」、さらには東南アジアのゲーム開発会社Garenaの「ガレナ フリーファイア」、米Epic Gamesの「フォートナイト」は、日本以外の各市場でもそれなりのシェアを獲得している。
文・遠川商業評論、陳彬
(翻訳・神部明果)
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