低コスト、低感染リスク。中華料理店で広がるQRコードメニュー【中華ビジネス戦記③】

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低コスト、低感染リスク。中華料理店で広がるQRコードメニュー【中華ビジネス戦記③】

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2015年頃から中国で普及したQRコード決済やフードデリバリーのサービスが、コロナ禍をきっかけに日本でも急速に広がりを見せている。QRコードを読み取ってスマホから料理を注文する『QRコードメニュー』も、中国ではすでに多くの飲食店で利用されているサービスで、実はPayPayやNTTドコモのd払いのアプリ上にも同等の機能がすでに実装されているが日本での認知度は高くない。とはいえ、東京の中華料理店ではQRコードメニューを使う店が増えてきた。店、客にどんなメリットがあるのだろうか。

オンラインショッピング感覚で注文

JR山手線御徒町駅からほど近いところにある、中華料理のお店羊貴妃羊湯館(ヨウキヒヤンタンカン)もQRコードメニュー導入店だ。テーブル席に貼ってあるQRコードをスマホのカメラで読み取ると、ブラウザが起動しメニューが表示される。画面右にある「+」をタップするとカートに料理が入り、「注文」をタップするとオーダーが通る。しばらくすると美味しそうな羊肉料理が運ばれてきた。

Amazonや楽天市場でオンラインショッピングをするような操作性で、食べたいメニューをスマホから注文できるのがQRコードメニューだ。

テーブル席のQRコードをスマホで読み取るとブラウザにメニューが表示される
スマホから頼んだ羊肉料理

中国では既に普及、日本でも有望なQRコードメニュー

実はこの羊貴妃羊湯館の運営会社は、飲食店POSシステムやITシステムの受注開発を手掛ける株式会社アミストロング。同社はITシステムを開発する傍ら、上野・御徒町で中華料理店を2店舗運営している。

アミストロング社の取締役 橘さん(遼寧省大連出身)によると、これまで飲食店向けの決済システムやタブレット端末を利用したメニューを開発、提供していたが、中国では一般的になっているスマホからQRコードを読み取って注文できるメニューが、コスト削減の観点から日本でも将来的に普及する可能性があると感じ、開発を始めたという。

アミストロング社 取締役の橘さん

中国のQRコードメニューはLINEのようなメッセンジャーアプリ「 WeChat」でQRコードを読み取って注文から決済まで完結するが、アミストロング社のQRコードメニューは日本国内の中国人だけでなく日本人のお客さんにも使ってもらえるよう、ブラウザからでも快適に動作するよう開発されている。現在はメニュー機能のみだが、将来的にはスマホ決済にも対応したいという。中国人がメイン客層になっている日本の中華料理店では、中国語のみに対応したQRコードメニューを提供する店舗も増えている。だが橘さんは「これらのシステムの多くは、中国国内の企業にシステム開発を委託しているため、WeChat上だと正常に動作するが、ブラウザからだと注文がうまく入らないなど動きが悪いケースが多い」と指摘する。

注文のコスト大幅減、メニューの変更も簡単

日本ではタブレット端末を使ったメニューも一般化してきたが、QRコードメニューだと店舗側が端末を設置する必要もなく、初期費用だけでなく毎月のランニングコストも大幅に抑えられる。QRコードメニューにすることで、ホールスタッフの人数を減らせるだけでなく、お客さんと店員の接触を減らせるのもコロナ禍ではメリットになる。メニューの中身の変更や、品切れ時の表示も紙のメニューよりも楽に切り替えができる。

一方で、スマホの利用に慣れていない年配の顧客層に対しては、注文方法の説明等のフォローアップが必要になるため、顧客の年齢層が高い飲食店では導入までのハードルが高いかもしれない。

2020年以降、QRコードメニューサービスを提供する日本の企業も増えている。冒頭でも述べたPayPayやNTTドコモのd払いに加え、リクルートが提供するAirレジハンディやUSENのUレジMobile Order、新規参入しているスタートアップ企業は他に10社以上あり、黎明期だ。QRコードを読み取るタイプではないが、マクドナルドもテーブルオーダーができるスマホアプリをすでに全国展開している。

コロナ禍でお客さんと店員さんの不要な接触が回避できる点や、店舗の運営コスト削減が期待できるQRコードメニューは、スマホネイティブ世代がメイン客層の店舗から導入が進みそうだ。

この連載では、人気ブログ「東京で中華を食らう」を運営する阿生さんが、日本の中華料理店事情をビジネス面から紹介します。

阿生:東京で中華を食べ歩く26歳会社員。早稲田大学在学中に上海・復旦大学に1年間留学し、現地中華にはまる。現在はIT企業に勤める傍ら都内に新しくオープンした中華を食べ歩いている。Twitter:iam_asheng

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