テンセント、全楽曲の独占権放棄 音楽配信業界の構図は変わるか

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IT大手のテンセント(騰訊控股)は8月31日、中国国家市場監督管理総局(SAMR)の行政処罰決定書に従い、すでに楽曲の著作権者に対して音楽の独占配信契約を解除する旨を通知したとの声明を発表した。

声明は、テンセントが持つ大部分の独占配信契約はSAMRの示した期限の同23日までに解除されており、期限までに契約解除できなかった著作権者の楽曲の独占配信権も放棄したことを示すと同時に、著作権者が他社と配信契約を結べるようになったことを示唆している。

これを受けて、ネットでは「これでようやく一つのアプリで全ての曲が聞けるようになる」「共同富裕(ともに豊かになる)で間違いなし」などのコメントが相次いでいる。コメントはテンセント傘下の「QQ音楽(QQ Music)」や「酷狗音楽(KuGou Music)」に関する内容ばかりではなかった。もう一つの音楽プラットフォーム「網易雲音楽(NetEase Cloud Music)」に対し、テンセントと同様に独占配信権を放棄し、楽曲の著作権購入を急ぐよう呼びかけるコメントも多数見られた。

網易(ネットイース)の丁磊最高経営責任者(CEO)は8月31日に開いた電話会議で「テンセントが誠意をもって声明どおりの振る舞いを見せることに期待する」と語った。

丁CEOの発言には、網易雲音楽が直面している楽曲著作権に関する問題が表れている。ウェブメディア「新浪科技(Sina tech)」は、同社の楽曲著作権に関する商談がこの1カ月余り順調に進んでいないことを関係者が明らかにしたと報じている。

テンセントは2016年に「酷我音楽(Kuwo Music)」と酷狗音楽が合併して誕生した「中国音楽集団(CMC)」を買収し、「テンセント・ミュージック・エンターテインメントグループ(TME、騰訊音楽娯楽集団)」を設立。SAMRの決定書の中では、当時のテンセントとCMCの音楽配信サービスでのシェアはそれぞれ45.77%、39.65%で、合計80%を超えたことなどが記されていた。市場の楽曲著作権の大部分を一気に獲得したことになる。

その後、TMEは大手著作権管理事業者との協力関係を強化。台湾のレコード会社である華研国際音楽(HIM)や日本のスペースシャワーネットワークとの戦略的連携、ユニバーサル・ミュージック・グループやワーナーミュージック・グループの一部株式取得など、攻勢を強めてきた。

ジェイ・チョウ(周傑倫)など人気歌手の楽曲の独占配信権もTMEの大きな武器となっていた。経済紙「21世紀経済報道」によると、TMEの幹部は、今回の独占契約解除が運営面に一定の影響を与えるのは確実だが、サブスクリプションサービスの契約者数に大きく影響することはないとの見方を示している。また、今後はオリジナルコンテンツを制作する企業だけでなく、オンラインやオフラインのコンサートを手がける企業との連携を強化する意向も明らかにしている。

TMEが発表した2021年第2四半期の財務報告によると、売上高は前年同期比15.5%増の80億1000万元(約1360億円)で、株主に帰属する純利益は12%減の8億2700万元(約140億円)だった。音楽配信サービスについては、売上高が32.8%増の29億5000万元(約500億円)で、課金ユーザー数は40.6%増の6620万人となっている。

しかし、モバイル端末で音楽配信サービスを利用するユーザーに関しては、月間アクティブユーザー数(MAU)が4.3%減少して6億2300万人となった。財務報告では、減少の主な原因として多領域エンターテインメント「汎娯楽」プラットフォームのユーザー数増加を挙げている。

(翻訳・Qiunai)

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