アリババの「盒馬鮮生」を体験、従来型スーパーとの違いはどこに?

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アリババの「盒馬鮮生」を体験、従来型スーパーとの違いはどこに?

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「消費のアップグレード」が進むにつれて、特に一・二級都市では、新しいショッピング体験や多様な商品ラインナップへの期待が高まっている。

そうした中、リアル店舗とECを融合させた次世代スーパーは現在、最も関心が注がれている業態のひとつだ。精緻にSKUを設定・管理することにより、比較的収入が高い、新しもの好きな消費者をターゲットにしている。また、売り場面積が広いことも特徴で、従来の標準的なスーパーと比べると3倍近い。

今回、この次世代スーパーを隅々まで見て体験することで、「新小売(ニューリテール)」の可能性を探ってみたいと思う。

訪れたのは、北京市朝陽区にある「盒馬鮮生(Hema Fresh)」の十里堡店。地下1階に位置するこのスーパーに足を踏み入れると、まず海産物が描かれた「盒馬鮮生」の電飾看板があり、巨大な海産物売り場が目に入ってくる。

盒馬の食品売り場は3つのエリア(日用品/食品/生鮮・海産品)に分かれており、デリバリー用レール、フードコート、セルフレジが設置されている。

■デリバリー用レール

見上げると、天井には商品を配送するためのデリバリー用レールが敷かれている。

アリババ公式サイトのデータによると、盒馬のECプラットフォームから商品を購入した顧客の割合は店舗利用客全体の50%を超えており、オープンから半年以上経っている店舗では70%超だという。オンラインとオフライン融合の効果がはっきりと現れている証拠だろう。

とは言え、訪れたのが平日の昼ということもあり、デリバリー用レールの稼働率は低く、従業員ものんびりしている印象を受けた。

■日用品/食品売り場

こちらの売り場を見ると、陳列されている商品は輸入品が多く、それだけに価格も高い。

生鮮品、冷蔵食品の1パック当たりの量は比較的少なめだが、これは消費者のニーズに合わせたものだ。ある程度の経済力があるホワイトカラーは健康志向なので、量が少なく、品質が高い商品を好む。

同店は照明にも気を使っている。より良いショッピング体験を提供するため、各コーナーによって照明を変えている。冷蔵食品コーナーは寒色系、食用油・米コーナーは暖色系の照明だ。

■海産品売り場

売り場面積の半分を占める海産品コーナーは同店の特徴でもある。海産品は購入するとその場で調理してもらえ、フードコート内で食べられる。

価格は比較的高めで、利益率が高い貝類・甲殻類が多かった。家庭で調理することを想定し、食材と調味料や香味野菜などをセットにした調理キットも用意。これも、ただ単に商品を仕入れて販売するのではなく、新たなショッピング体験を提供する試みのひとつだ。

■フードコート

買い物エリアを離れると、眼前にはフードコートエリア。いくつかのレストランが入居しており、ドイツ料理、日本料理、ステーキなど様々な料理が楽しめる。街中にある普通の軽食店と比べるとかなり高めの価格設定だ。

フードコートの目玉は、海産品コーナーで購入した商品を調理してくれるサービス。見る限り、同エリアにいた顧客の45%が海鮮料理を食べていた。

■セルフレジ

最後がセルフレジエリア。大部分が無人化されており、1、2名の従業員がサポートしていた。

こうして見ると、盒馬によるリアル店舗とECの融合は巧妙に設計されているようだ。支払いは基本的に盒馬のアプリ経由で行われるが、店内では無料でWi-Fiが利用できるので問題ない。また、エリアごとに支払いをしなくてもよく、どこででも一括で支払えるようになっている。例えば、売り場で購入した食品とフードコートで注文した料理を、フードコートで一緒に支払うことができる。

盒馬の計画では、年末までに北京市内で30店舗以上に拡大するという。今後より多くの人がニューリテールのサービスを体験できるはずだ。

運営形態を自由自在に調整できる次世代型スーパー

盒馬を実際に体験してみて感じたことは、次世代スーパーは運営的にも空間的にも柔軟性が高いということだ。

特に実店舗に多くの柔軟性が見られる。店内の動線設計がしっかりしており、移動が簡単だ。従来の輸入食品スーパーは有名ブランドが中心の品揃えで柔軟性に欠ける。また、ほとんどが高級住宅エリアに近い商業地にあり、店内のスペースも限られている。

加えて、両者はともに中間層の顧客をターゲットにしているが、細かく分析すると、若干異なるようだ。盒馬のターゲットは新しもの好きな消費者で、従来の輸入食品スーパーのターゲットは自身の買い物習慣が確立され、より高水準の生活を望んでいるような人たちだ。

また、実店舗とECを融合した次世代スーパーは、より合理的な商品構成を追究できる。例えば、実店舗では、海鮮など利益率が高い商品を優先的にディスプレイする。買って、その場で調理してもらって、食べて帰る、というプロセスが、単なる買い物を超えた体験を提供する。これは効率化や運営コスト削減につながる手法でもある。一方、日用品などではデリバリーサービスを選択できる。様々なニーズに合致したサービスを提供しているようだ。

目下、日用品では従来のスーパーも次世代スーパーも大した差はないように思えるが、今後も「差」がつかないとは言い切れない。

次世代スーパーの「商品+サービス」の概念では、各ブランドが消費者とよりインタラクティブな関係を築けるようになる。ロンドンにある百貨店の化粧品売り場では、顧客にシャンプー体験を提供している。これも、サービスを通じて顧客に商品価値を直接伝える「商品+サービス」のかたちだ。

次世代スーパーの試みは単なる販路の拡大だけではなく、消費者とよりインタラクティブな関係を築く試みでもある。ポップアップストアやオンデマンドのサービスなども含め、すべて取り組み甲斐がある新しいアプローチなのだ。
(翻訳・飯塚竜二)

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