中国EC大手京東、PB事業群を独立 狙うは中産階級の消費者層

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中国EC大手「京東(JD.com)」のプライベートブランド(PB)「京東京造(J.ZAO)」(以下、「京造」と表記)が事業群として独立し、ビジネスユニットとなったと中国で報じられている。小売事業の「京東零售(JD Retail)」と同様の形態となった。トップを務めるのは同社高級副総裁の王笑松氏。

同社がPBに取り組み始めたのは2015年。最初に生み出したのは家庭用品ブランドの「佳佰(hommy)」だった。PB事業部を正式に設立したのは2018年。ネット大手の網易(ネットイース)のECプラットフォーム「網易厳選(Yanxuan)」、スマホメーカーの「シャオミ(小米、Xiaomi)」のPB「米家有品」をベンチマークとし、あらゆる商品を網羅した。

京東が2019年に地方都市への進出戦略を打ち出したのに合わせて、地方都市向けに生活必需品の大容量販売を手がけるブランド「恵尋」がローンチ。2020年以降も生鮮食品の「風味坐標」、スポーツ用品の「LATIT」、ペット用品の「京萌」といったPBを打ち出し、厳選された良質な商品を手がけるPB「千尋」も今年3月にローンチした。

京造は2017年9月にブランド立ち上げプロジェクトが始動。上海の20~30人ほどのチームが、高コスパで特色ある製品の提供を目指した。本プロジェクトは京東の特定事業群ではなく、CMO(Chief Marketing Officer:最高マーケティング責任者)指揮下に置かれていた。

京造がターゲットとするのは中産階級の消費者層で、ブランドには2つの位置づけがある。「ハイエンド製品の大衆化」と「大衆向け製品の高品質化」だ。前者は実用的だが値段も高い商品について、メインの機能は保持したまま高コスパのバージョンを打ち出すもの。例えば掃除機や美顔器などだ。後者は、ジーンズやカバン、ゴミ箱など、普段から誰でも購入し得る商品の質を上げることを意味する。

網易厳選や米家有品と比べるとPB参入に遅れを取った京東だったが、販売チャネルや手がけられる商品の種類、トラフィックやサプライチェーン、物流面では元来の優位性があった。網易厳選副総裁の肖南華氏は2017年末、同PBの注文数の7割は京東が配送を担っていると語っている。

なお、2018年にはアリババがECモール「淘宝(タオバオ)」でC2M(Consumer to Manufacturer、顧客ニーズに合わせた小ロット生産のこと)事業を立ち上げ、共同購入型の格安EC「拼多多(Pinduoduo)」も同様の事業を立ち上げた。両社のC2M事業はコスパ重視のユーザーを対象にしている、2019年に京東が立ち上げた恵尋は2社の事業に対抗するものだ。

京造の実績は好調だと言える。

京造事業部総経理の湯恒晟氏は2020年1月のフォーラムで、京造が扱う商品は設立当初の8カテゴリ、50SKUから、2年間で日用品、電子機器、ファッションなど25カテゴリ、8000SKUにまで拡大したと語っている。2019年第4四半期(10~12月)の注文数は2018年第1四半期(1月~3月)の80倍となり、オフラインでは全国386の都市の2500店舗をカバーするに至ったという。

2020年7月には京東が香港の大手商社「利豊集団(Li&Fung Group)」に1億ドル(約114億円)の戦略的出資を行い、PB事業のさらなる拡大を進めた。利豊集団は世界40カ国以上で1万カ所以上の工場と契約しており、国際ブランド、大手リテール企業、自社PBにとって強力な後ろ盾だ。

王氏が昨年末語ったところによると、京東傘下PBの昨年の売上高は前年比で200%増加し、30億元(約534億円)近くとなった。京造の昨年のユーザー数、注文数は前年比で5倍近くに上り、今年はさらにその3倍伸ばす目標を立てた。

2018年は京東の株価が低迷した時期で、早急に新しい事業を立ち上げて対外向けにアピールする必要があった。ちょうどその頃世間はODM(相手ブランドが設計・製造をすること)ブームが起こり、消費レベルも上昇。新中産階級の人々が市場を左右するようになった。彼らは単なるブランド主義でも、価格のみを重視するでもなく、高品質な商品を好み、品質に対して一定の費用を払う意向を持っていた。こうした環境が京造誕生のきっかけとなった。

2020年1月、京東の劉強東CEOは全従業員に宛てた新年の挨拶の中で、今後京東はリテールではなく、サプライチェーンをベースにした技術とサービスを提供する企業に生まれ変わると述べていた。これにはPBの力が必要となる。

また京東は現在、店舗とオンラインを融合させたオムニチャネル事業に注力している。生鮮食品の「7FRESH」といった同社のPBにとって、競争を勝ち抜くには差別化が重要となる。PBは独自性のあるサプライチェーン構築のカギをにぎる戦略なのだ。
(翻訳・Qiunai)

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