中国ロボット掃除機市場、新興企業に猛追される「エコバックス」

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ロボット掃除機メーカー中国最大手「エコバックス(科沃斯)」が10月29日、2021年第3四半期(7~9月)の決算を発表した。売上高は前年同期比65.8%増の28億9000万元(約517億円)、純利益は前年同期から307.4%も増加して4億8000万元(約86億円)となり、市場予測を上回った。

同日の取引終了後に、エコバックス株は3.2%上げて171.5元(約3100円)をつけ、時価総額は981億元(約1兆7500億円)となった。この3カ月ほど低迷していた株価と時価総額はいくらか持ち直したものの、ピークだった今年7月の時価総額1500億元(約2兆6800億円)と比べると、少なくとも500億元(約9000億円)を失ったことになる。

ロボット掃除機メーカーの株価は乱高下

エコバックスは2018年に上場を果たしたが、最初の2年間は株価の上昇は緩やかだった。同じくロボット掃除機を手がける「ロボロック(石頭科技)」が2020年に上場してから、両社の株価は急騰、時価総額は瞬く間に1000億元(約1兆8000億円)に達した。ところが今年に入り、業績は決して悪くないにもかかわらず決算発表のたびに株価が暴落するようになる。今回の第3四半期決算でようやく持ち直した形だ。

近年のエコバックス株価の推移

エコバックス株が今年下半期に大きく値を下げたのは、大株主「泰怡凱(TEK)」が持ち株を大幅に減らしたことと関連がある。泰怡凱は4回にわたって保有していたエコバックス株を売却し、総額45億元(約805億円)近くを現金化した。大株主が頻繁に株式を売却したことで、流通市場はエコバックスの株価に対し不安を抱くようになったと見られる。

さらにロボット掃除機に対する市場の期待が薄れたことも、株価下落を招いた要因となった。家電業界のアナリスト丁少将氏はかつて、ロボット掃除機業界が2019年からすでに下り坂に差しかかっていると指摘している。2020年の感染症流行に伴う「ステイホーム需要」で新たな盛り上がりを見せたが、この増加も一時的なものに過ぎず、今後さらに急成長を遂げる余地はほとんど残っていないという。

ひしめくライバル

エコバックスの創業者である銭東奇氏は、20年前に当時安泰と言われていた教師を辞めて同社を立ち上げた。国内にロボット掃除機という概念すらまだなかった2009年に、同分野の事業を開始する。先行者優位に恵まれたエコバックスは現在、中国ブランドのロボット掃除機で5割以上の市場シェアを獲得している。

しかし業界の競争は激しさを増すばかりだ。市場調査会社「中怡康(China Market Monitor)」は、ロボット掃除機市場の今年の成長率が35%以上になると予測しており、拡大する市場に引き寄せられて多くのプレーヤーが参入してきている。

中でもロボロックや「雲鯨智能(Narwal)」といった新興企業が存在感を示しており、わずか2~3年で市場シェア上位5社に名を連ねるようになった。ロボット掃除機に詳しい業界関係者によると、ロボロックは資金の潤沢なテクノロジー型企業、雲鯨はユーザーや活用場面に対する洞察力に優れており、ロボット工学の専門家・李澤湘氏のバックアップがあるという。さらにシャオミ(小米科技)などの大手がサプライチェーンとブランド力を武器に勢力拡大を進め、新興ブランドも資金を調達しながら続々と参入している。

業界関係者の話では、メーカー各社が今年のセールスポイントとして力を入れているのが水拭き機能を付帯したハイブリッドモデルだという。水拭き機能の技術難易度は高くないため、後発ブランドが先行メーカーに追いつくことも十分可能だ。

こうした背景のもと、エコバックスは商品カテゴリを拡充し、ロボット掃除機以外の活路も模索している。一昨年に立ち上げたスマート家電ブランドの「ティネコ(TINECO)」は、ダイソンをベンチマークにして目覚ましい成長を遂げている。今年は法人向けの清掃ロボット事業を始めたほか、廉価ブランドや調理家電、セルフケアなどの製品ラインを打ち出した。

急速にラインナップを拡充しているエコバックスだが、何が次の屋台骨になるのか、今の時価総額をどのようにキープしていくのか、これらを冷静に考える必要がある。上場企業である以上、長期的な発展計画を打ち出すだけでなく、投資家の不安を取り除くことも重要な仕事と言えるだろう。
(翻訳・畠中裕子)

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