タイヤサービスを皮切りに急成長、商用車アフターマーケットのデジタル化を推進する「大車隊長」が資金調達

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商用車のアフターマーケットサービスを手がける「大車隊長(Dache Captain)」がシリーズAで「経緯中国(Matrix Partners China)」から数千万元(数億円)を調達したことがわかった。

同社は2017年、タイヤおよび関連商品を切り口に、商用車のアフターマーケット市場に本格参入した。同市場にはこれまで、チェーン展開している企業がなく、ユーザーは時間をかけて自分のいるエリアの業者を探さなければならなかった。タイヤメーカーもユーザーのニーズを正確に把握するのが難しい上、サプライチェーンの整備も進んでいなかった。タイヤは在庫回転期間が9カ月と長く、流通プロセスが増えるごとに価格も上がる。しかも、個人経営のタイヤ店ではサービスの質に期待できない。

大車隊長はこれらの問題を解決するため、サービスネットワーク、IT技術、サプライチェーンの3つを組み合わせたソリューションを構築し、タイヤのリースを中心に事業を展開している。

大車隊長のサービスネットワークは直営店と加盟店で構成され、サービス拠点はすでに全国4300カ所以上に広がっている。同社はIT技術を駆使し、タイヤの在庫をデータ化・情報化するスマートシステムを立ち上げた。サプライチェーンに関しては、メーカーからの直接買い取りを実現している。また、全国どこでも365日24時間、2時間以内に対応するロードサービスをはじめ、走行ルートや車種に合わせた専門的なタイヤ選び、タイヤの寿命を伸ばすサービスなども提供している。

大車隊長は現在、宅配・物流企業上位10社のうち7社と提携。物流大手の「順豊(SFエクスプレス)」「德邦物流(DEPPON LOGISTICS)」「中通快逓(ZTO Express)」やスピード配達の「安能物流(Ane Logistics)」などにサービスを提供している。危険物輸送や小口混載輸送、大口輸送などにも対応し、現時点で管理に関わっている物流車両は数万台に上る。ミシュランやブリヂストン、ハンコックタイヤ、「双銭(Double Coin)」「佳通(Giti Tire)」など国内外の大手タイヤメーカーとも提携している。

今回出資した経緯中国のパートナー熊飛氏は「大車隊長は宅配大手を市場開拓の糸口に、デジタル化ツールを通してオフラインのサービスネットワークを構築し、標準化された高品質のメンテナンスサービスを提供している」とした上で、同社のビジネスモデルが不動産テック「貝殻找房(KE Holdings)」や生活関連サービス大手「美団(Meituan)」が初期に取った手法と似ている指摘した。

大車隊長の創業者である常鋭氏は、タイヤサービスのクローズドループを完成させた上で、将来的には車両の補修・メンテナンス、中古車販売、車両保険やETCなどのサービスへと手を広げ、商用車の分野で全国規模のサービスネットワークとサプライチェーンプラットフォームを構築したいとしている。

中国国家統計局、「申万宏源研究(SWS RESEARCH)」および独コンサルティング会社ローランド・ベルガーによるリポートを総合すると、中国の商用車向けタイヤ市場の規模は2019年に2285億元(約4兆1100億円)に達しており、年間複合成長率(CAGR)8%以上を維持しながら成長している。商用車のアフターマーケット市場は2019年には4兆元(約72兆円)に達しており、中でも大車隊長が事業展開を計画しているメンテナンス市場は1兆元(約18兆円)近い規模となっている。

常鋭氏は中国化工集団(ChemChina)傘下の伊タイヤ大手ピレリや米タイヤ大手グッドイヤーの要職を務めた人物で、タイヤ業界でのマネジメント経験は17年に及ぶ。パートナーの李永健氏は以前、中国の店頭市場「新三板」上場企業で総経理を務めていた。この他の中心メンバーも、アリババや美団、米デュポンなどで長年経験を積んでいる。

タイヤ業界の現状としては、現在も大部分の企業が従来の代理店ネットワークを通じ、数段階の流通を経る方式で仕入れと販売を行っている。デジタル化の波が押し寄せてからは「智安達(Zhianda Tire Technology)」のように大車隊長と類似したソリューションを試すメーカーなども現れてはいる。きめ細やかな運営、サプライチェーンのコスト管理、そして全面的なサービスネットワークを構築する力が、タイヤ業界で勝ち抜くための重要な要素となるだろう。
(翻訳・山口幸子)

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