設立30周年を迎えた老舗のソフトウェア大手「用友」、工業ネットのプラットフォーム構築事業に本腰

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1988年に設立されたソフトウェア開発中国最大手の「用友網絡科技(Yonyou Software)」は、今年でちょうど「30歳」を迎えた。財務ソフトとしての1.0時代、ERPアプリケーションに進化した2.0時代を経て、現在は3.0時代、つまりクラウドサービスやフィンテックなどを融合させた新時代に突入している。

同社の2018年第3四半期決算によると、今年第1~第3四半期の売上高は、前年同期比38.8%増の45億4800万元(約750億円)。そのうち、クラウドサービスの売上高が前年同期比127.7%増の13億300万元(約210億円)となり、全体の売上高に占める割合は28.6%に上昇した。クラウドサービス戦略の成果が初めて数字として現れたとも言える。

クラウドサービスの中で、同社が最も重視しているのが工業ネットのプラットフォームだ。 2017年8月、同社はこれを製品化した「精智」を発表し、 今年、同分野を核心事業と位置付けるとともに、工業ネット事業部を立ち上げた。

プラットフォームの3つの能力

国策の推進、消費需要の急速な変化、製造業変革の必要性、IoTやビッグデータ、AIなどのテクノロジーの進化により、工業ネット市場は拡大しているが、同時に市場争いも激化している。

用友は、工業ネットに対するニーズを3つに分けて捉え、それらを並行して推進していくことが必要と考えている。企業における生産性の向上、企業のバリューチェーン構築 、そしてオープンなエコプラットフォームの運営だ。

以上に対応して、同社「精智」のサービスも三段階に分かれている。

1)設備関連のエッジインテリジェンス(データ収集、メンテナンス予測、消費エネルギーの最適化など)
2)生産の最適化
3)ビジネスエコシステムにおけるイノベーション

強みは30年の経験と技術

工業ネット市場には、さまざまな企業が参入してきている。例えばハイアール(海爾)やフォックスコン(富士康)といった大手製造業、ファーウェイ(華為技術)やインスパー(浪潮集団)といった大手ICT、さらにアリババやテンセントといった企業までもが進出している。

競合他社と比べて、用友の強みは何か? 同社工業ネット事業部の張友明総経理は以下の4点を挙げる。

1)すでに30年間サービスを提供していること。メーカーの実務や業務のデジタル化をよく理解している。
2)顧客基盤が強固であること。したがって、業務の大規模化に長けており、サービス能力も高い。
3)「精智」は、2011年に開発を始めた用友クラウドプラットフォームが基になっていること。すでに多くの技術が蓄積されており、クラウドコンピューティングやビッグデータ、AIなど新技術を採用する際のハードルが低い。
4)全面的にサービスを提供していること。製造現場のインターネット化だけではなく、設計、マーケティング、購買、サプライチェーン、物流、財務、HRなどを含めてトータルにサービスできる。

とは言え、張氏は自社の弱点も理解している。ハードウェアやIoTなどの技術的経験、工業設備や生産加工などの運用経験が不足していることなどだ。また、工業ネット向けのプラットフォームでは、さまざまな新技術も取り入れていかなければならない。

こうした問題に対して、用友はOTに強い企業とパートナーシップを結び、IoTを融合させた製品を開発することによって対応しようとしている。すでに「精智」は、38万8000台の工業設備と接続しているという。

発表から1年半で44万社が採用

用友の公式資料によると、2017年8月に正式発表した「精智」は現在、44万社のメーカーが採用している。同社のグローバルマーケティング機関は120社、エコパートナーも600社を超える。

また、多くの地方政府とも戦略的パートナーシップを提携し、ローカルの工業向けクラウドプラットフォーム構築プロジェクトを立ち上げるとともに、中小メーカーのクラウド化もサポートしている。同社と契約している地方政府は10以上の省・市に跨っている。

各社が提供している工業ネットのプラットフォーム構築サービスは似通った印象を受けるが、実際はそれぞれ特徴があり、アプローチもさまざまだ。30年間の経験を武器に、用友が今後どのようにライバルたちと争っていくのか注目したい。
(翻訳・飯塚竜二)

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