IoT活用で需要高まるAI音声認識チップ 中国「探境科技」が資金調達 デバイス大手数十社導入済み

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IoT活用で需要高まるAI音声認識チップ 中国「探境科技」が資金調達 デバイス大手数十社導入済み

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AI音声認識用チップを開発する「探境科技(Intengine)」がこのほど、清華大学系の投資機関「卓源資本(Zhouyuan Capital)」から約1000万ドル(約11億円)を調達した。資金は製品開発のほか販路開拓やマーケティングに充てられる。

同社は2017年3月に設立され、自社開発したチップアーキテクチャ「Storage First Architecture(SFA)」を基に、各種IoTデバイス向けのAIチップおよびソリューションを提供してきた。19年には人工知能(AI)音声認識用チップ「音旋風」シリーズの最初の製品「VOI611」を発売している。同チップの認識率は97パーセント。誤認識の発生は72時間に1回未満で、10メートル離れた3デシベルの音でも命令を正確に認識する。

IoT業界への注目度はここ数年、いっそう高まっている。IT専門調査会社のIDCは最新のリポートで、2021年のIoTへの支出が世界全体で7542億8000万ドル(約85兆8000億円)になる見込みだとした上で、25年には1兆2000億ドル(約136兆円)に達すると予測している。中国市場は3000億ドル(約34兆円)規模に成長し、全体の約26.1%を占める見通しだという。

リポートは、中国におけるIoTへの支出は主にデバイス市場に向かっており、2025年には同市場の規模がIoT市場全体の39.7%に達するとの予測も示している。現在、チャンスを求めて多くの企業がIoTデバイス市場に参入しており、サプライチェーンのエコシステムも成熟の度合いを増している。その中でAI音声認識用チップが大きな注目を集めているのは間違いない。

同社の創業者である魯勇CEOは、AI音声認識用チップを実用レベルの製品にするためには多くの技術的な課題があり、ビジネスモデルの点でも従来のチップ業界とは異なると指摘する。

音声認識用チップはユーザー体験の向上を主眼とするため、チップの設計だけでなく、アルゴリズムとの組み合わせも考慮なければならない。また、従来のチップ開発においては複数の企業が共同でアルゴリズムを開発するケースが多かったが、AI音声認識用チップ向けのアルゴリズムには非常に高いレベルが求められるため、メーカーはよりチップに適合したアルゴリズムを独自開発する必要がある。

探境科技は2018年、データの記憶・計算・調整を一括管理できるSFAをローンチした。SFAはノイマン型アーキテクチャによる「記憶の壁問題」を解決し、チップの計算効率を80%以上向上させた。チップの性能を向上させただけでなく、電力消費とコストを抑えた上でより強大かつ複雑なアルゴリズムを搭載できるようになった。SFAを採用したAI音声認識用チップ「音旋風」シリーズは高性能かつ低価格であることなどを強みに、すでに多くの場面で活用されている。

魯CEOは、同社の製品とビジネスがこの1年で急速に成長したと説明。製品については「音旋風」シリーズのラインナップをVOI611からVOI621、VOI721、VO311へと広げた。いずれもスマートホーム分野の白物家電向けで、用途ごとに異なる音声処理機能に対応しているという。

「VOI621」

ビジネス面では、同社のチップが白物家電や小型家電、照明などを手がける複数の大手企業のサプライチェーンに組み込まれた。2021年下半期から2022年上半期にかけて、同社のチップを搭載した製品が続々と発売される。

探境科技のAI音声認識用チップさえ搭載すれば、企業は製品を簡単かつスピーディーにスマート化できる。従来のようにクラウドサーバーを設置したり、インターフェースの互換性を考慮したりする必要がなくなるため、製品の開発・展開を大幅に簡素化できる。

ユーザーにとっての利点は、同社のチップが搭載されたスマート家電などならば、インターネットとの接続やペアリングなどの面倒な作業をすることなく、電源を入れればすぐに使えることだ。

同社は2021年、VOI611を中心にAI音声認識用チップの販売を展開した。取引先は中国内外のIoTデバイスや消費者向け電子機器を手掛けるメーカー数十社。同チップを搭載した製品はエアコンや照明器具、加湿器、浴室暖房乾燥機など多岐にわたり、中国のほか東アジアや東南アジア、欧州、南米などで販売されている。

魯CEOは、今後はこれまで蓄積してきた技術的強みをさらに拡大し、大手企業のサプライチェーンに浸透させたいとの考えを示した。また、今後1年以内に機能をより充実させたチップを発表し、さらに広い分野の市場に進出する方針も明らかにした。

魯CEOは清華大学で物理学を学んだ後、同大学院で電子工学を専攻して博士の学位を取得し、チップ業界で20年の経験を積んできた。米Marvell Technologyの中国法人ではチップ開発部門の責任者を務めた。

今回出資した卓源資本の林海卓CEOは、魯CEO率いる探境科技の開発力とビジネス遂行力を高く評価し「探境科技がスマートホームなどに活用されるエッジコンピューティング向けチップのリーディングカンパニーになることを期待している」と述べた。

(翻訳・田村広子)

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