中国版「代官山T-SITE」も「エモ消費」を重視

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複合型書店「言幾又(Yanjiyou Bookstore)」を展開する「四川言幾又文化伝播(Yanjiyou)」が、シリーズB+で1億元(約16億円)以上を調達したことがわかった。出資を主導したのは「洪泰大文娯産業基金」で、「頭頭是道基金(TouTou Shidao New Media Fund)」も参加した。同社は2017年3月にもシリーズBで1億2000万元(約20億円)を調達しており、累計調達額は2億4000万元(約39億円)に達した。

四川言幾又文化伝播は書店が前身。2014年3月に設立され、北京を皮切りに全国で54店舗を展開している。「自宅とオフィスの間にあるサードプレイス」をテーマに、書店にカフェやギャラリーなどを一体化させた複合型書店を展開する。

今月4日には、西安市のショッピングモール「邁科商業中心」に新たな旗艦店を開業した。4500平方メートルに及ぶ広大な店舗には、13万冊を擁する書店の他、飲食、美容など9種の業態を併設している。デザインを手がけたのは、TSUTAYAの「代官山T-SITE」で知られる空間プロデューサーの池貝知子氏だ。

11月のプレオープン以来、来客数は1日平均5000人を突破。週末は単日で1~2万人に達し、入場制限がかかることもある。来店客の30%が何らかの商品を購入するという。

言幾又の創業者である但捷氏は、「これがデザインのなせる業。優れた空間デザインを実現すれば、ネットで口コミがどんどん広がっていく」と成功した秘訣を述べた。内装費に約1億元を投入したのは異例で、出資者である洪泰大文娯産業基金パートナーの金城氏も当初は当惑したそうだが、すぐにその意図を理解したという。

「言幾又」西安旗艦店

入居する商業施設との協業によって店舗賃料を抑えられたため、運営コストも大幅に圧縮できた。ゆえに資金繰りに悩まされることなく運営に専念できる。商業施設側にとっても、長期的に安定した来客が見込め、ブランド力の向上にも寄与する文化的ランドマークは恰好の店舗だ。

「言幾又」西安旗艦店

コーヒーを片手に読書ができる。生活雑貨、ネイルサロン、ヘアサロンなどのショップインショップも豊富。また、新書のサイン会やハンドメイドのワークショップなど、各種イベントも頻繁に開催されている。

単なる書店にとどまらず、あらゆる生活シーンを体験できる空間として、あるいは新小売(ニューリテール)を体現する場として、言幾又の新業態は大いに歓迎された。かつ、こうした業態をチェーン展開につなげた例も非常に少ない。開業当初はテナント集めに苦心したというが、現在では新店オープンとほぼ同時に全出店枠が埋まるという。売上高の伸びも速く、テナントの評判も良好だ。

今月8日、同社の本拠地である成都市で、新店舗の起工式が行われた。3年後に竣工するこの施設は、市の中心地区(CBD)で新たなランドマークとなるだろう。30億元(約490億円)を投じた24万平方メートルの空間には、オフィス棟やホテル棟も併設される。

「言幾又」西安旗艦店

現在、売上高の割合は、書籍が30%で、ライフスタイル提案型商品が30%、飲食が20%、催事スペース賃料が10%だ。来年はライフスタイル提案型商品の売り上げ比率を50%にまで引き上げ、収益率や資金回収率を向上させるという。

そのためには店舗運営だけでは心許ない。やはりオンラインとの連動が必要だろう。コンテンツ戦略を強化し、会員システムやECとの連動を推し進め、来店者数やリピート率を伸ばしていくほかない。これは言幾又にとって新たな挑戦だ。

前出の金氏は「今後数年は『エモ消費(精神的価値を得るための消費)』に注目していきたい。言幾又はその体現者となる可能性を秘めている」と期待を寄せている。
(翻訳・愛玉)

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