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IT技術が進化した現在、アルゴリズムの軽視やビッグデータの不正利用、顔認証の乱用などが問題となっている。行き過ぎた個人情報の収集やプライバシー侵害の恐れもあり、プライバシー保護コンピューティングのニーズが高まっている。
プライバシー保護コンピューティングの認知度はまだ低いが、この分野への投資熱はとどまるところを知らない。中国では2021年7月から10月のわずか4カ月間で、同分野に10億元(約180億円)を超える資金が流入した。
中でも「華控清交(Hua Kong Tsinjaio)」は、シリーズBで5億元(約90億円)を調達した後、評価額が40億元(約720億円)に上昇している。出資者は「聯想創投集団(Lenovo Capital and Incubator Group)」や「中国国際金融(CICC)」などの有名投資機関だった。
データ共有とプライバシー保護の両立
プライバシー保護コンピューティングは、データが利用される過程において、データの中身を閲覧せずに処理することを可能にする。つまり、データを「使えるが見えない」ようにすることで、プライバシーを保護しながらデータを利用できるというものだ。
IT専門調査会社IDCは、2019年には41ゼタバイト(ZB)だった世界のデータ生成量が、25年には5倍以上に増加して175ZBに達すると予測している。とくに中国のデータ生成量は世界全体を3%上回る伸び率で増加し、25年には48.6ZBとなって全体の27.8%を占める見込みだという。世界のデータ量は年を追うごとに増加しているのは確かだ。しかし、現時点では各種データが比較的独立しており、安全に共有・利用できていない。プライバシー保護コンピューティングは、その背後に存在する価値を発掘するものとして期待されている。
ここ数年は、データセキュリティに関する法規や監督・管理策が施行されたこともあり、プライバシー保護コンピューティングへの注目がさらに高まっている。欧州連合(EU)が2018年に一般データ保護規則(GDPR)を施行して以降、FacebookやGoogleなどの大企業が多額の罰金を課されている。中国でも、中国建設銀行や中国交通銀行、中国光大銀行などが信用情報の収集に関する規定に違反したとして、中国人民銀行(中央銀行)と中国銀行保険監督管理委員会からそれぞれ1千万元(約1億8000万円)以上の罰金を課された。
メインターゲットは金融など4業界
中国のプライバシー保護コンピューティング市場はスタートしたばかりで、調査やテストが行われている段階だ。
プライバシー保護コンピューティングを手掛ける企業は現在、金融・行政事務のセキュリティ・医療・通信事業の4業界を主なターゲットとしている。行政事務は、とくにデータ管理が重視される分野だ。
金融業界は、通常の営業活動だけでなく詐欺やマネーロンダリングの防止などリスク管理の観点からも、プライバシー保護コンピューティングを切実に求めている。リスク管理については、複数の金融機関が連携し、プライバシー保護コンピューティングによって横断的なデータマイニングとリスク評価を実現していく。
医療業界にプライバシー保護コンピューティングを導入するのは比較的難しいとされる。中国では医療機関ごとにデジタル化のレベルが異なる上、データ管理の統一基準もなく、医療機関同士の情報共有も容易ではないからだ。
プライバシー保護コンピューティング業界には現在、さまざまな背景を持つ企業が参入している。アリババ集団傘下の金融会社「アント・グループ(螞蟻集団)」やテンセント傘下のクラウドプラットフォーム「テンセントクラウド(騰訊雲)」、バイドゥ(百度)、京東集団(JD.com)などIT大手のほか、華控清交や「鍩崴科技(NVXClouds Tech)」などスタートアップの参入も目立つ。
この分野で成長を目指す企業は、チャンスを迎えると同時に大きな課題に直面している。ビジネスモデルが未成熟な上、プロダクトの標準化レベルも低い。異なる業界や企業との間でデータを自在に流通させることが必要になるため、プライバシー保護コンピューティング技術を導入しさえすれば問題が解決するわけではない。
プライバシー保護コンピューティングを実用化と収益に結びつけるためには、まだ多くの時間がかかるだろう。この分野を手掛ける企業には長距離走を駆け抜ける準備が必要になる。そして、それに伴走するVCファンドやPEファンドも改めて現状を見極めなければならない。
作者:WeChat公式アカウント「格隆匯新股(ID:ipopress)」
(翻訳・田村広子)
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