美容や若返りでも注目の幹細胞治療、 研究開発には厳格な管理がマスト

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米国食品医薬品局(FDA)は最近、臍帯血幹細胞注射を受けた患者12人の病状が悪化して入院したとして、臍帯血由来の細胞製剤を製造しているカリフォルニアの企業「Genetech」に警告を出した。 12人の患者は、関節炎や外傷などの治療のためにGenetech社の幹細胞製品を膝、肩、脊髄に注射したが、その後血液感染や脊髄膿瘍などのために入院したという。

FDAは長い間、幹細胞治療について「強力な介入」を行ってきた。2018年には警告を無視して幹細胞治療を行っていたクリニック2社に対して永久差し止め命令を求める訴訟を起こしている。未承認の幹細胞治療を提供している医療機関20か所に対しても警告を出し、さらに多くの幹細胞治療の提供者を立ち入り検査する構えだ。

期待される幹細胞治療

幹細胞は、さまざまな器官や臓器に再生できる未分化細胞の一種。幹細胞を患者に移植することで損傷した器官などを修復することができる。癌や糖尿病、認知症などの治療に大きな期待が寄せられているほか、美容や若返りといった面でも注目されている。

2012年に京都大学の山中伸弥教授がノーベル生理学・医学賞を受賞し、その後幹細胞技術に基づく臨床試験が行われるようになった。しかし、一部の幹細胞は比較的簡単に採取でき参入障壁も高くはないため、世界的に治療機関が乱立気味になっている。ただし、安全性や有効性が立証されている幹細胞治療は多くないのが実情だ。

違法な治療も横行

利益目的の違法な幹細胞治療も多く見られる。

十数年前、中国南部で高額の「幹細胞美容療法」が流行したが、実際の効果は不明どころか深刻な副作用が疑われるようになった。当時の中国衛生部(編注:日本の厚生労働省に相当する行政機関)は2011年までに幹細胞療法の研究を完全に差し止め、2013年から徐々に再開を認めた。

2015年には、「三甲医院(中国における最高等級の病院)」に限り「幹細胞臨床研究登録機構」の申請手続きを完了すれば、治療費を取らない「臨床研究」という名目で研究できることになった。 ただし、規制をかいくぐって営利目的の治療を行っている企業も依然としてあるという。

時間がかかる幹細胞薬品の開発

一方で、正規の幹細胞製剤の研究開発はなかなか進んでいない。

現在、世界では主にアメリカ、ヨーロッパ、韓国、日本等から10種類以上の幹細胞製剤が販売されているが、中国ではまだ一つも販売に至っていない。

現在中国国内で有力なのは、「中源協和(VCANBIO CELL & GENE ENGINEERING)」と「漢氏聯合(Health & Biotech)」の2社だ。国家医薬品監督管理局・医薬品審査評価センターのウェブサイトに掲載されている幹細胞製品受理情報19種類のうち、中源協和傘下の「和沢生物(Heze Shengwu)」と漢氏聯合グループの「天津昂賽細胞(Tianjin Amcellgene Engineering)」による製品が各3種類ずつ挙げられている。

上記2社の製品それぞれ1種類は2018年に登録されたが、残りの17種類は全て2014年登録となっている。つまり、多くの企業では過去4年間に幹細胞製剤の臨床研究に進展がなかったということだ。

幹細胞の研究開発は医薬品の研究開発と同等にリスクが高く、臨床試験をクリアする優れた製品を開発することは簡単ではない。さらに、幹細胞療法の最大のリスクは、細胞の変異が制御不能になり、最終的に腫瘍化を引き起こす可能性があることだ。このため、臨床に関しては特に厳格な規制や承認手順が求められる。

幹細胞治療は革新的な技術であり、研究開発の必要性は言うまでもない。しかし、十分に安全で有効なテクノロジーとして確立されるまで、いかにしてしっかり監督管理を行うかが重要だ。
(翻訳・神江乃緒)

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