「スマホ標本師」「人形医師」「武器・甲冑職人」…中国の若者が生んだ最新職業

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「スマホ標本師」「人形医師」「武器・甲冑職人」…中国の若者が生んだ最新職業

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その年に登場した話題の新職業をまとめた「2021年淘宝冷門新職業観察」が発表された。いずれも1990年代生まれの「90後」や、2000年代生まれの「00後」、つまり10代後半から20代くらいの若者が新しい潮流の中ではじめた職業だ。

AIや機器を活用したサービスなどのハイテクニュースや、国潮デザインのクールな商品や、クールなチェーン店などのトレンドニュースが続々と報道される中国で、その隙間を縫うような個人ができる仕事もある。アナログだからデジタル化の波を無視したものかというとそんなことはなく、中国の現在のペット人気といったトレンドやライブストリーミングといったプラットフォームがある上で発生するニーズに応えている仕事が多い。そんな新しい仕事を紹介しよう。

スマホ標本師

中国のモールの雑貨屋などでしばしば昆虫標本のようにスマートフォンや各種デジタル製品を分解したものを額縁の中に綺麗に収めた「デジタル製品の標本」が売られている。この標本はただ分解した部品を額にはりつけるだけでなく、各パーツが何かがわかるような解説も書かれ、IT系メディアで紹介される製品分解画像のようなものが額に収まる。これを作るのをスマホ標本師とここでは名付ける。多くの人が所有しているであろう、古くなりスペックが見劣りし使わなくなったスマートフォンや携帯電話を飾りにすることである意味再生するのだ。

とはいえその作業は簡単ではない。スマホ標本をつくり続けて2年の龍さんは語る。「携帯電話を分解した上で無造作に置けばいいものではありません。機種によって配置や構図を考えるなど、それなりの技術が必要となります。分解で得た各パーツを名前と説明が書かれた場所に固定します。わかりやすく解説する額は、ハイテク感のある芸術品ともいえます」

完成した標本ではなく標本作成の依頼となると、業界の一般的な作業料金は100元から1000元程度で、携帯電話の機種や解体の難易度や年式によって価格が決まる。また各機種に対するどの部品をどこに配置するかという額のデザインは既にデザインされていて額が量産され、これも数十元程度で販売されている。それを買って自力で標本づくりをすることもできるわけだ。

「個人的にはこの職業は比較的敷居が低いと思っています。アルバイトなら月に約2000元、フルタイムなら月に500010000元稼げます。働きたい人はこうした機器に慣れ親しんだ90后、00后(10代後半~20代)ですね」。

人形医師

持ち主と一緒に生きた思い出がつまった人形を直す仕事が人形医師だ。

人形やおもちゃの愛好家たちがネットで知り合ってSNSでグループを作り集まり、その一部が人形の修理のノウハウを共有した。アリババの中古商品取引サイト「閑魚」で人形の修理をサービスを細々と始めた。値段も数十元から高くても数百元だった。その一方で2020年に動画ニュースで72歳の人形医師朱さんがフォーカスされ話題になる。10年以上前に研究所の開発部門を退職した朱さんが、様々な思い出のつまった人形を丁寧に心をこめて修理をした姿に多くの人が共感した。その報道後、人形医師に注目が集まるようになり、修理代が値上がりした。

楊子晩報により

例えば人形のクリーニングをすると1000元以上かかるといった具合だ。この2年間でどんだけお金をかけても思い出の人形を直したいという人が増え、同時に人形医師やおもちゃの修復師は儲かる職業になった。人形医師の収入は月に数千元、高い人では1万元を稼ぐ人もいるという。

代理多肉植物育成師

中国の西南に位置する雲南省。特に昆明や大理は標高が高いことから一年を通してだいたい温暖な気候で、昼夜の温度差が大きく日照時間が長いとあって、植物を育てるのに適している。大理の街で代理でサボテンをはじめとした多肉植物を育てる寥さんをはじめ、中国各地で多肉植物を育てる代理多肉植物育成師が登場した。多肉植物を預かってよい状態を保ち、植物の様子を朝から晩までライブストリーミングで配信するのが仕事だ。300人の長期の多肉植物育成依頼のほか、暑さと寒さのある夏と冬に依頼のピークがある。

多肉植物は近年中国で人気になっている。多肉植物を育てることは難しくないが、良い状態を保つとなると環境を満たした上に、手入れに時間をかける必要があり簡単ではない。寥さんの場合はビニールハウスにびっしりと置かれた十万株の多肉植物を管理していて、これらに水をやるだけで2日かかることもある。最初は人から預かる仕事はしていなかったが、ニーズを受けてサービスを開始するや、口コミで評判が広まり、次々に依頼がやってきた。依頼が増えて以降は、3人体勢で世話をするように。

「多肉植物の世話にかかる経費を差し引くと、月に1万元ほどの収入になります。今までは考えられないことでした」と寥さんは語った。さらに多肉植物の様子をいつも見たいときに見たいという客のニーズがあるため、ライブカメラを別途追加してオンデマンドで見られるマンツーマンサービスを提供。割高な価格になるものの、すでに十数人がこのサービスを予約しているという。

キャットフードマイスター

キャットフードテイスターは、その名の通り、キャットフードの味や脂っこさを人間の味覚で味わう仕事です。 キャットフードを実際に味わうことで、猫の好き嫌いを判別する。似たような仕事に猫の糞からキャットフードを見極める仕事になる。流通しているキャットフードにはニセモノもあるので、猫が健康被害を受けないようにチェックをする。

4年間キャットフードマイスターを仕事としている花さんはこう語る。「私は3年間のキャットフード試食の経験があります。猫も人と同様に好みの味は違うなかで、私は猫の好みの違いを知ることができます。例えば日本のスマック社のキャットフード「善玉多」を食べてみると、カリカリと噛むタイプで肉の味は感じないが、独特の焦げた味があり噛んだ後に口の中が苦くなります。私の友人でペット向けのティーショップをを開いている人がいます。自分の試飲体験を通して、いろいろなペットドリンクを作ることができ、年間30万元の収入を得ているそうです。」

一部のキャットフード企業でオンラインで試食者を月給800010000元超で募集する動きもある。企業もまた動き出したことから、キャットフードマイスターの人数は増えそうだ。

ライブストリーミング用スタジオのセットデザイナー

スタジオライブのセットデザイナーは、ライブストリーミングにふさわしいシーンを作り、観客にその場の雰囲気を伝えるプロフェッショナルだ。背景セットはキャスターに次いで重要な要素で、優れた背景を用意することでライブ会場を彩り、ひいてはファンの視聴体験を盛り上げる。基本的にMCNかメディア企業で勤務する。月収1万元超えが珍しくない仕事だ。

この仕事を3年続ける詳さんによれば、「近年のライブストリーミングの急速な普及に伴い、業界ではライブスタジオのセットデザイナーの需要が高まっています。私の勤める会社では現在も募集していますが、この職業が知られていないためか、希望者はほとんどいません。この職業は専門的でであり、美術や映画を専攻した人には向いていますが、新人には向いていません」という。

小詳さんは、本業の仕事をしながら、背景関連製品の販売や抖音で背景づくりのノウハウを教えるショートムービーを配信。平均して100元程度の注文が1か月で50余りあり、副収入を得ている。

武器・甲冑職人

中国の若者を中心に、中国的なエモいデザインやコンテンツや中国製製品を支持する「国潮」ブームが起きている。ドラマやアニメの中には戦国の世を舞台に甲冑を身に着けた兵士や武将が駆け巡るものがあるが、国潮ブームを受けて「マイ甲冑」や「マイ武器」を欲しがる人々が急増した。

5年甲冑を作り続ける柯さんは「私が今いる甲冑愛好者の会も、3年前は200人程度だったのが今では古代文化への関心が高まり2000人近くになりました」と語る。「鎧は中国服の小さな分派であり、中国服の製作と原理的に似ていると思います。  私は今、数人の職人と一緒に淘宝でショップを運営しています。多い日には月に10件ほどの注文があり、制作サイクルは半月から数ヶ月に及びます」と語る。女性に人気の漢服と素材こそ異なれど、やっていることは同じだ。ただマーケットがまだまだ小さいので、漢服ほど儲かるわけではなく、まだ趣味の領域だという。

「今は、甲冑作りの敷居を低くして、愛好家自身に甲冑作りの楽しさを体験してもらっています。 当社のカスタムメイド価格の半額程度で提供してハードルを下げています。一部のホビーユーザーから予約が入り始めており、市場性を感じています」と柯さんは市場拡大を考えている。「最終的には鎧が漢服のように流行し、より多くの人に鎧文化を知ってもらえればと思います」

アバター作成師

以前はパソコン向け、現在は加えてスマートフォン向けのオンラインゲームが普及する中国。MMORPGのゲームをはじめる際に、まずプレイヤーの分身たるアバターを作成するのだが、その設定は非常に細かい設定ができる一方「ゲームを始めるのに10分、顔を作るのに2時間」とゲーマーの間で言われるほど面倒だ。そこで完成した各ゲームのキャラクタデータを販売する職人「アバター作成師」が登場した。

アバター作成師は多く競争があることから、タオバオなどでは無数のキャラデータが売られている。その中には売れる製品もあればそうでない製品もある。自身の技術や美学を信じるだけではだめで、顧客に受け入れられる人気のあるフェイスモデル商品の作り方を考えで製作するという。売れる商品を次々と生み出すアバター作成師になるには、基本的なテクニックを習得するだけでなく、心理学や哲学や統計分析などを理解している必要がある。またタオバオで万人向けの決まったデータを売るだけでなく、「だれだれと同じ顔にしてほしい」「私のキャラクターの顔を直してほしい」といったオーダーメードの依頼も受ける。

Metaよりメタバースが叫ばれ、メタバースを謳ったサービスが続々と登場している。ゲームだけでなくメタバースでもアバター作成師は活躍するわけだ。

(作者:山谷剛史)

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