テンセント、「第二のNIO」に出資。ロボット掃除機「Roborock」創業者、EV製造に着手

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

スタートアップ注目記事

テンセント、「第二のNIO」に出資。ロボット掃除機「Roborock」創業者、EV製造に着手

36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

新興EV(電気自動車)メーカー「NIO(蔚来汽車)」の第2位株主でもあるテンセントが、新たに自動車製造プロジェクトに投資した。

テンセントが出資したのはロボット掃除機メーカー「Roborock(石頭科技)」の創業者でCEOの昌敬氏が立ち上げた自動車製造プロジェクト「洛軻汽車(ROX Motor)」。昨年末に1億ドル(約115億円)を調達しているが、このリードインベスターがテンセントで、コ・インベスターとしてセコイア・キャピタル・チャイナも参加した。関係者によると、テンセントの投資額は5000万ドル(約58億円)以上。ROX Motorの評価額は20億ドル(約2300億円)となり、すでに次の資金調達を進めているという。

36Krはこの件について取材したが、ROX Motor側からもテンセント側からもコメントは得られなかった。

ROX Motorは2020年末に設立され、本社を上海に置く。昌敬氏が董事長、「威馬汽車(WM Motor)」元CTOの閆楓氏がCEOを務める。昌氏は典型的な自動車愛好家であり、とくにオフロード車を好んでいる。同社の初製品もメルセデス・ベンツのGクラスをベンチマークとしたオフロード車で、レンジエクステンダーを搭載して航続距離1000キロを目指しているという。

新興自動車メーカーの第1次ブームで登場したNIOの李斌氏や「理想汽車(Li Auto)」の李想氏と比べ、昌氏が自動車業界に参入してきたのは5年遅れだ。しかし、彼の強みはスタート地点そのものが高みにあるということだ。同氏はロボット掃除機で有名なRoborockを起業した人物。Roborockは大手スマートフォンメーカーのシャオミ(Xiaomi)が有するエコシステムの中でもスター企業だ。中国のハイテクベンチャー向け株式市場「科創板(スターマーケット)」にも上場し、一時は時価総額約1000億元(約1兆8000億円)を記録した。

昌氏の経歴をみると、華南理工大学でコンピューターサイエンスを専攻し、ソフトウェアエンジニアとして働いた後、2011年にテンセントのシニアプロダクトマネージャーに就任。その後、写真加工・共有アプリを運営する「魔図精霊科技」を設立し、2014年にRoborockを創業している。

起業を複数回成功させ、ソフトウェア分野でもハードウェア分野でも経験豊富……参入が遅れた昌氏に、テンセントがそれでも出資する理由はここにあるかもしれない。複数の業界関係者によると、昌氏は目下の資本市場が評価する「プロダクト畑」の自動車メーカー創業者だ。目立つことは好まず、プロダクトを深掘りすることを好み、メッセージアプリWeChat(微信)の自己紹介欄には「わたしはプロダクトマネージャーです」と書いている。

これまでにROX Motorへの出資を検討したある人物によると、昌氏はすでにRoborockの日常的な経営にはほとんど関わっておらず、大部分の時間を自動車事業に注いでいるという。同氏自身も投資家に対し、今後は自動車製造を重点的に手がけていくと述べている。

中国で新興自動車メーカーが第1次ブームとなった2014年、テンセントやアリババ、美団(Meituan)などの大手インターネット企業はそれぞれ有望企業に出資した。2020〜2021年の第2次ブームでは、シャオミの雷軍氏やファーウェイ出身の李一男氏などハードウェア畑の起業家が自動車業界に参入してきた。出資側では唯一、テンセントが再び資金を投入している。

これまでは超大手企業が資金やリソース、後光効果によって業界に転機をもたらしてきた。理想汽車は2019年、量産化という重要な時期を迎えたと同時に資金難に陥ったが、美団がタイミングよく手を差し伸べたため、量産化に充てる資金を得ることができた。NIOの第2位株主はテンセントで、同社のB株全てを保有しており、創業者の李斌氏に次ぐ議決権を握っている。NIOも2019年に資金繰りに苦しんだが、テンセントは自動車総合情報サイト「易車(biauto)」を買収し、李斌氏の持ち株を担保にとって出資する形式で、NIOのために2億ドル(約230億円)を調達した。

ROX Motorが大手インターネット企業やトップクラスの金融機関から出資を受けたことで、業界には必然的に警戒感が広がった。 ある投資業界関係者によると、テンセントが洛軻汽車へ出資した後、同社に対してはNIO傘下の蔚来資本(NIO CAPITAL)や美団からも関係者が接触してきた。両社とも洛軻汽車に出資を持ちかけたが、協議の末いずれも断られたという。

この関係者はさらに、「昌敬氏にとって蔚来資本はNIO、美団は理想汽車を意味しているのだろう」と分析する。また、テンセントから出資を提案されたある人物によると、大手インターネット企業は現在いずれも投資事業の力加減や方向性を調整中で、テンセントがROX Motorへ出資したことには必ずしも特別な戦略的意図があったとはいえない。むしろ大手インターネット企業全体で、投資事業の軸足が最先端テクノロジーや次世代エネルギーに移ったことの表れである可能性が高いという。

この人物はさらに、理想汽車が米ナスダック市場に上場し、香港市場にも重複上場した過程で、テンセントもロードショーに参加していたと明かした。しかし評価額が高すぎるため出資を断念し、昨年上場した米EVメーカー「Rivian」に出資したという。
(翻訳・山下にか)

36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録