中国に居ながらも日本旅行が体験可能、商品の代理購入も。コロナで進化し続ける越境ビジネス

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中国に居ながらも日本旅行が体験可能、商品の代理購入も。コロナで進化し続ける越境ビジネス

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新型コロナで海外の往来が制限されて早や2年となる。コロナ以前は多くの中国人が海外旅行に行き、その中で日本は最も人気の国であった。中国人は海外旅行に行けない中で、バーチャル旅行のニーズが高まっている。検索サイトバイドゥ(百度)の検索トレンドを見ても、日本は変わらず注目の国となっている。

去年は大連市に京都をイメージした商業地がオープン(その後日本らしさを抜くことに)したほか、ネットユーザーが鹿のいる公園を「小奈良」と名付けたり、踏切がある場所を「小鎌倉」と名付け、人気SNS「小紅書(Red)」の中で写真撮影スポットとなったことも話題となった。また日本らしさを体験するために中国資本の日本料理屋がより日本らしくブラッシュアップされ、そうでない日本料理屋は淘汰されるところも。日本旅行に行けない中でも日本を体験したいというニーズがあり、それに応えるように中国各地で日本を想像する何かができている。

中国人の「日本に行けないが少しでも日本を旅行したい」というニーズをビジネスに変えようとしているのが「ACD」という企業である。ANAホールディングスとのジョイントベンチャーである同社は簡単にいえばテンセントの最新エコシステムを活用し、日本の商品を越境ECで中国に売っていき、日本の将来のインバウンドの種まきを応援する企業だ。ANAが出資していることもあり、同社航空便と保税区を活用した関税ゼロの物流スキームを活用して越境ECの課題である国際輸送によって生じるタイムラグを解消する。また、中国ネット最大手テンセントがサポートしているので、現地での心強いバックアップ体制も完備している。

では、テンセントのサポートとはどういうことか。テンセントは20年1月にWeChat(微信)でチャンネル(視頻号)というサービスをスタートし、同年10月にはチャンネルにライブ(直播)機能を追加した。20年はじめに新型コロナが中国で感染拡大しロックダウンしたときにはライブコマースでの販売が行われていて普及した。つまりテンセントは遅れてのリリースとなる。これまではテンセントは後出しでも市場を取れたが、既に抖音(Douyin、海外版は「TikTok」)、快手、アリババ傘下の淘宝直播(タオバオライブ)といったプレーヤーがシェア争いをしていた。

テンセントは優良なコンテンツでWeChatでのライブやチャンネルを活用したエコシステムにネットユーザーを呼び込みたい。そこで中国で人気の日本の動画が出せそうなACDに声がけをした。中国で認知されたいACDは、テンセントのオファーに応える形で同社のチャンネルアカウント「日本旅游指南」でのLIVE企画を提出して、LIVEプログラムを実施した。サービスの利用者をこれから一気に増やそうというタイミングでもあり、テンセントが欲しいコンテンツであったことから、トラフィック流入とプロモーション支援を行った。例えば、テンセントが世界各地のスキー場を紹介するコンテンツを作りたいときには、ACDに声をかけて、ACDは日本旅游指南のアカウントより長野県の白馬スキー場をライブ中継し、テンセントはトラフィックを誘導した。ユーザー動向をみると、日本に強く興味を持ち、新しいサービス利用に抵抗のないアーリーアダプターが同アカウントをフォローしていき、口コミでフォロワーがフォロワーを増やしていく。

同社の発表によれば、「2020年4月の開始以降、在日中国人がライブ配信を365日毎日配信し、1日の平均視聴者数は4万人、LIVE視聴者数の月間平均は100万視聴以上に上る規模に成長。また2021年の年間を通してオリジナルのショート動画の投稿数は1289作品に上り、累計で再生数は1260万6000回に達した」という。

ライブの一例を紹介するとこのような流れだ。同社に所属する日本在住中国人チームのライバー(配信者)が人気の浅草や鎌倉などに赴いてライブ配信を行い定番の観光地を巡る。視聴者は今現在の日本を観光目線で見ることができ、視聴者から感想のコメントが多数つく。配信の中でライバーは土産屋などショップを訪問し、こんな商品が売られているよと様々な商品にフォーカスする。すると「これが欲しい!買う」という声が多数あがる。するとライバーは日本旅游指南のアカウントのショップで急ぎ商品を出品し、ニーズに合わせて代理購入する。かつて見た中国人の旅先での爆買いを、スマートフォンやタブレットのライブ配信を通して行っているわけだ。

ライブ配信中の様子

爆買いというと、かつての化粧品や紙おむつや粉ミルクのほか、中国での転売目的の買い物を思い出すかもしれない。同社代表の古居氏は「むしろ日本の疑似旅行体験としてキーホルダーとか、浅草の浅草寺でおみくじを代わりに投げ銭しておみくじを引くといった転売しないモノがよく売れます」とのこと。

浅草や鎌倉などは知名度があるので新規利用者を呼び込みやすい。ディープなファンによるWeChatのグループがあり、ここからリクエストが来て、東京近郊に行って配信することもある。一方で関東周辺だけでなく山形県や島根県や愛媛県など日本各地でも配信する。これは自治体や企業から依頼が来たときに、チームを派遣してライブ配信を行うというものだ。その際にはお土産屋を訪問するほか、例えば地元の酒蔵を訪問することも。そこに訪問してブランドのストーリーを視聴者に見せることで、一気に視聴者の購買欲が湧いて購入したいという声が多数上がる。


そこで受け皿となるのがWeChatのミニプログラムだ。ACDは「Wesearch」というサービス名でミニプログラムの作成と運用についてサブスク形式で行っている。ライブでの日本旅行体験で日本好きの視聴者に日本の地域を知ってもらい、用意した自治体や企業の公式アカウントとミニプログラムへのリンクをライブで紹介し誘導する。ミニプログラムでは自治体の観光紹介に加え、商品の販売も行っていて、そこで買ってもらうというわけだ。

ところで地方自治体が続々とACDの中国(異国)のサービス上でインバウンド対策に乗り出した。また山陰中央テレビジョン放送(TSK)と資本および業務提携契約を締結した。「地方での理解を得られたのは背景があります」と古居氏。最初はACDが天猫や京東で展開する自前のショップで日本酒を販売した。日本酒で売るにしても大瓶よりも今の若者のニーズに沿った商品のほうが売れるだろうと、小ぶりな缶の製品を売り出したところ、中国商戦期「618セール」や「ダブルイレブン(独身の日)」において天猫の清酒、焼酎カテゴリーで売上1位となった。オンラインでヒットしたことから、オフラインの店舗からも卸売のオファーを数十万本規模で受けている。古居氏は「地方出身なので感覚は私もわかるのですが、日本酒が売れたので、だったら任せてみようとなったと思います」と分析する。

左の画像が618セールの店舗ランキングで、右の画像がダブルイレブンの店舗ランキング

ACDは中国人のバーチャルインバウンド対策として、依頼されたところへのライブチームの派遣とそのところのミニプログラム作成というソリューションを行っているわけだ。

古居氏はACDの目標としてこう語った。「従来のように日本のインフルエンサーが配信すると、その知名度の高さからコストがかなりかかることがあります。そうではなく誰もが利用できるような価格で提供していきたい、売り手論理でなくみんなが使えるプラットフォームを作っていきたいと考えています」

さらに、現在は中国に特化して日本を紹介しているが、将来的に、他の言語にも変換して日本の魅力的なコンテンツを世界へ向けて発信していきたいとの意欲も見せた。

(作者:山谷剛史)

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