農業機械のスマート化、昼夜通して働き生産性向上・人手不足解消に

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農業機械の無人運転化を手がける「中科原動力科技(AIForceTech)」がシリーズA+で数千万元(数億円)を調達した。出資を主導したのは創世伙伴資本(CHINA CREATION VENTURES)で、株主の祥峰投資(Vertex Ventures)と徳聯資本(Delian Capital)も出資に参加した。中科原動力科技は昨年6月にシリーズAで資金調達を実施しており、今回と合わせて調達額は1億元(約18億円)を超えた。

中科原動力科技は2019年に設立され、さまざまな機能を有する無人農業機械と農作業の代行サービスを提供する。農作業の生産性を上げ、人手不足を解消する取り組みを進めている。

中国では近年、都市化率(総人口に占める都市人口の割合)の上昇が続き、2020年に実施された第7回国勢調査によると、都市化率は63.89%となっている。2035年には都市化率が75〜80%に達するとのデータもある。農業でも労働力不足が日増しに深刻になっており、どのように生産性を上げていくかは、業界、社会、国のいずれもが関心を払うべき課題となっている。

自動運転を農業と結びつけることは、課題解決の一助になるかもしれない。無人で稼働する農業機械は労働力不足を解消できるだけでなく、生産性も上がり、農業のスマート化も進められる。中科原動力科技が農業分野での無人運転に着目し、取り組むようになった理由の一つだ。

同社のチーフサイエンティスト李徳毅氏は中国工程院(Chinese Academy of Engineering)の院士(アカデミー会員)。創業者の韓威氏は清華大学の博士課程を修了しており、李徳毅氏に師事して10年以上にわたり自動運転を研究してきた。同社の技術人員は現在約40人で、清華大学やカリフォルニア大学バークレー校、早稲田大学など国内外の名門大学出身者が揃う。

中科原動力科技の「バーチャルドライバー」

中科原動力科技はすでに複数の製品シリーズを発表しており、大規模な農業生産団体や生産者向けに製品を提供し、耕うん作業や収穫作業の支援サービスを展開する。

製品シリーズの一つは「バーチャルドライバー」で、一般的な農業機械に取り付けて使用する。バーチャルドライバーを搭載したトラクターは昼夜を問わず、無人で精度の高い作業ができる。操作方法もシンプルで、耕うん、整地、種まき、中耕(生育中の作物の周囲を浅く耕す作業)、収穫、収穫後のわらのすき込みによる施肥など全工程をカバーする。数十種類の農機具に対応するほか、1人で複数の機械を管理でき、長時間連続して高強度の作業ができる一方、作業人員は大幅に減らせる。

その他の製品としてはスマート農業機械シリーズがあり、150〜240馬力のトラクターを展開する。無断変速機を搭載し、燃費を大きく抑えられる。運転席のあるタイプとないタイプがあり、いずれも昼夜を通して無人で作業する能力を備える。

農作業ロボットのシリーズもあり、農薬散布や除草作業を行う。除草剤の使用量を大幅に減らしながら、しっかり除草ができる。

「我々は熟練したトラクター運転手の代わりになりたいのだ」と韓威氏は述べる。これまでの人力による農作業は、農業機械の運転手個人の知識や経験に左右されてきた。中科原動力科技ではこうした熟練者の知識や経験を総括すると同時にコンピューターを最適化し、無人農業機械が熟練者のパフォーマンスを超えることを目指す。

中科原動力科技の農作業ロボット

韓氏によると、中科原動力科技は設立からの数年で無人農業機械のビジネスモデルを確立した。北大荒集団(BEIDAHUANG GROUP)、中糧集団(COFCO)などの大型国有企業のほか、複数の農機合作社(農作業請負協働組合)とも提携する。黒龍江省、吉林省、北京市、河北省、広西チワン族自治区などで無人農作業を代行し、累計6666ヘクタール以上の畑で約30トンの野菜を作付けした。現在は無人農業機械の販売と付随サービスで収益を得ており、これまでの売上高は1000万元(約1億8000万円)に迫る。

「無人農業機械が導入されるまで、繁忙期には2〜3人が交代で1台のトラクターを動かして作業していたが、今では1人で2〜3台のトラクターを動かせるようになった」と韓氏は述べる。同社はすでに、トウモロコシや大豆、小麦、綿花などの畑作業の全プロセスを無人化することに成功しており、今後はジャガイモや水稲などの作物も手がけていく計画だ。また、スマート農業機械のサービス対象を徐々に丘陵地や庭園などにも広げていくという。

同社は現在、主に中国の東北地方で事業展開するが、年内には全国にスマート農業を推進していく。

(翻訳・山下にか)

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