発熱する靴、北京冬季五輪でも活躍。実用化進む伸縮自在な電子回路技術

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発熱する靴、北京冬季五輪でも活躍。実用化進む伸縮自在な電子回路技術

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北京冬季五輪の競技場ボランティアやPCR検査会場のスタッフは、厳しい寒さをこらえながら働いた。彼らを寒さから守るべく活躍するのが、フレキシブルエレクトロニクス(柔軟で折り曲げ可能な電子回路)技術を活用した発熱するシューズだ。「極展科技(XTRETCH)」と中国のスポーツ用品メーカー「安踏体育用品(ANTA)」が共同開発した。

極展科技は安踏のスマート化製品のサプライヤーの1社で、フレキシブル(折り曲げ可能な)バッテリーやストレッチャブル(伸縮可能な)発熱体モジュール技術を用いて安踏の北京冬季五輪限定モデルのシューズ開発に協力。主に五輪組織委員会や中国代表チームの選手やコーチ、一部ボランティアスタッフに提供した。極展科技の何蕾CEOによると、このシューズは今年、安踏と共同で量産する計画だという。

極展科技は2018年に設立され、フレキシブルデバイスの設計・製造に携わる。フレキシブルとは一般的に折り曲げ可能なものを指すが、むしろ重要なのは伸縮性(弾力)だ。極展科技の柔軟で伸縮性のある電子技術や特許技術はさまざまな電子製品に応用でき、現在はフレキシブルバッテリー、ストレッチャブル配線材、ストレッチャブル生地の三つを主要製品としている。主にウェアラブル端末、3C製品(コンピューター・通信機器・家電)、医療機器やAR(拡張現実)製品に使われる。

極展科技が提供するデータによると、フレキシブルエレクトロニクスの市場規模は2025年までに1186億元(約2兆1600億円)に成長する見込み。ウェアラブル端末分野では新たな製品形態が求められるが、既存のスマートフォンやスマートウォッチ、スマートグラスなどでは柔軟性を持たせることはできない。また、フレキシブルデバイスは寿命が短く、バッテリー供給にも問題があり、思うような進展が見られなかった。

極展科技のフレキシブルバッテリーは柔軟で伸縮性もあり、容量も大きく、安全性が高いなどの特徴を有する。何CEOによると、他社製のフレキシブル薄膜バッテリーの容量は数十ミリアンペア時(mAh)にとどまるが、同社製のバッテリーは最大2万mAhに達する。世界最大の容量を実現したフレキシブルバッテリーであり、世界で唯一量産可能なストレッチャブルバッテリーだ。

また、ストレッチャブル配線技術は電気特性でも従来の配線技術に肩を並べる上に、伸縮可能で安定性が高く、寿命も長く、絶縁性があり水洗いができる。従来の導線は折り曲げが必要な製品や動く製品に使う場合、製品の変形度合いに応じて導線に遊びを持たせることが必要だった。余分な導線があると製品はコンパクトさや快適さに欠け、最も深刻なことに安全性を失ってしまう。こうした従来型の配線に替わり、極展科技のストレッチャブル配線は製品の設計や使い勝手を大幅に改善する。

さらに極展科技は伸縮可能な導電材料や生地と組み合わせることで、薄くて軽く、異物感もない布地のような配線材を開発した。さまざまなウェアラブル端末に応用でき、まさに「着られる」プリント基板を実現したのだ。この製品は将来的にはウェアラブルデバイスやメタバースファッションの基盤や中核となるだろう。

柔軟性のある電源と伸縮性のある電気回路(ストレッチャブル導線、導電布)があれば、センサーやその他の電子部品を接続することで身体にフィットするタイプの服飾品にさまざまな性能を持たせ、着け心地のいいウェアラブル機器のほか、医療・ヘルスケア、デジタルファッション、美容医療などに応用できると何CEOは話す。極展科技の技術は医療分野なら温湿布やCES(微弱電流刺激)療法、物理療法、マッサージなどに活用できる。ウェアラブルデバイス分野なら発熱、冷却、発光などの機能やバッテリー内蔵ベルトなどに活用できる。

極展科技は現在、VR(仮想現実)・AR、ロボット、ウェアラブルデバイスなどの業界のトップ企業と密接に連携し、前出の安踏のほか、トレーニング用EMS(筋電気刺激)スーツ開発「VisionBody」、VR・ARデバイスとソリューション開発「亮風台(HiAR)」、スマートフォン・IoT機器大手シャオミ(Xiaomi)などと協業を進めている。

創業者の何蕾CEOは清華大学学士、マサチューセッツ工科大学およびシンガポール国立大学修士、バージニア・コモンウェルス大学博士で、材料・部品のエキスパート。創業メンバーのほとんどは清華大学出身の留学経験者で材料、電子、力学などを専門分野としている。フレキシブルエレクトロニクス関連技術を長年かけて積み上げており、30万回引き伸ばし、40万回折りたたみ、導線を100万回引き伸ばしても大丈夫なフレキシブルバッテリーの開発に成功した。

極展科技はウェアラブルデバイス市場ではすでに量産化を実現しており、3C市場でも他社との提携を進めているほか、今年は医療・ヘルスケア市場にも進出する計画だという。
(翻訳・山下にか)

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