アリババ「DingTalk」、ビデオ会議ツール「拍楽雲」を買収

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アリババ傘下の企業向けコミュニケーションツール「釘釘(DingTalk)」が、PaaS形式でビデオ会議ツールを提供する「拍楽雲(pano)」を買収した。拍楽雲創業者の趙加雨氏は釘釘が昨年11月に立ち上げたAV(オーディオビジュアル)事業部のトップに就任し、拍楽雲の全メンバーも同事業部に加わる予定だ。

拍楽雲は2019年設立で、基盤となるエンコード技術に一定の強みがある。同社の高解像度映像向けエンコードエンジン Pano Venusは、現在主流となっている動画圧縮規格H.264に代わり、次世代ビデオコーデックを初めて中国のリアルタイムシステムに取り入れた。

釘釘関係者は、今回の買収は技術力の補強のほか、主にコアメンバーを取り込むことを考えてのことだと話す。拍楽雲のコアメンバーはビデオ会議システムを手掛ける「Cisco WebEx」の出身で、Zoomと同じ設立背景を持っている。趙氏はビデオ会議とリアルタイム通信分野の技術者で、WebExにシステムアーキテクトとして10年以上勤め、17年に中国に帰国後通信やビデオ会議サービスなどを手掛ける「網易雲信(NETEASE.IM)」のCTO(最高技術責任者)に就任した。

趙氏の話では、AVシステムプロバイダーは基本的にインターネットに従事してきたチームだが、拍楽雲はビデオ会議に携わってきたチームだという。会社設立もZoomに刺激を受けてのことで、その後相次いでセコイア・キャピタル・チャイナやクラウド通信サービスプロバイダー「容聯雲通訊(Cloopen)」などから資金を調達してきた。

今回の買収は、釘釘の過去半年のプロダクト戦略に沿ったものだ。釘釘は21年10月に会議ツール「釘閃会」や自社開発のドキュメントなど一連のプロダクトを発表し、業界からはドキュメント、AV分野へ戦略的に投資し、プロダクトの機能拡充を加速するシグナルと捉えられていた。同社は、AV関連プロダクトの体験および競争力の向上を目的として11月末にAV事業部を立ち上げた。オーディオラボラトリーでは、オーディオ技術とアルゴリズムの刷新および次世代のビデオ会議形態の探求に照準を合わせている。それから3カ月後に釘釘は投資と買収により再びAV事業を調整し、同時に趙氏のチームが加わって空席となっていたAV事業部のトップが決定した。

コロナ禍の業務オンライン化の流れの中で、各社は同分野に重点投資している。

コロナが20年に拡大し、会議サービスプロバイダーは急成長を遂げた。釘釘が20年3月に公表したデータによると、釘釘を使用したオンライン会議は1日に2000万回を突破し、延べ1億人を超えた。コロナ禍で釘釘は人員や資源を教育、行政分野に投じる戦略を取って急成長したが、AVやドキュメント関連のプロダクトの機能は次第にライバルに追い抜かれてしまった。

市場全体をみると、現在の釘釘のビデオ会議システムはZoom、マイクロソフトTeams、ひいては中国IT大手テンセントの「騰訊会議(Tencent Meeting)」とはギャップがある。テンセントの邱躍鵬副総裁は21年11月初め、騰訊会議のユーザーは約2億人と明らかにした。

釘釘は21年10月、規模追求から価値の追求へと戦略の変更を発表した。葉軍総裁は、戦略策定後にAVなどの汎用プロダクトの機能を拡充、強化してプロダクトの使用体験を改善するとの方針を明らかにしている。拍楽雲の買収によって、釘釘ではチームの競争力が向上し、プロダクトの体験も改善されるだろう。

(翻訳・36Kr Japan編集部)

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