アナログ半導体設計のAtomSemi、19億円調達 香港科技大発スタートアップ

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アナログ半導体設計を手掛ける香港科技大発のスタートアップ「原子半導体(Atom Semiconductor Technologies)」はこのほど、プレシリーズAで、約1億元(約19億円)を調達した。調達した資金は、家電向け電源アナログチップの研究開発や販売・マーケティング部門の人員拡充に充てる。

今回の投資ラウンドは、中国のベンチャーキャピタル(VC)、啓明創投が主導し、香港で上場している中国の心疾患治療製品開発会社「啓明医療器械(Venus MedTech)」が新たに出資したほか、既存株主であるアリババグループ傘下の起業支援ファンド「アリババ創業者基金」が追加出資した。

原子半導体は2020年10月、香港科技大の袁傑(George・Yuan)電子・計算機工程学科副教授が、シグナルチェーンのアナログIC(集積回路)チップ設計に特化したファブレス(自社工場なし)企業として設立。創業当初から同大が一部出資している。センサーチップ、アナログ-デジタル変換回路(ADコンバータ、ADC)、マイクロコントローラー(マイコン)が主力製品だ。

シグナルチェーンのアナログICチップは、アナログ信号の収集・増幅や、フィルタリング(ノイズ除去)、信号の変換といった一連の処理を行う半導体の重要部分で、ほとんどの家電に搭載されている。同社では21年末、最初の製品として高精度のシグマ・デルタ型ADC「AS1412」の生産を開始。既に顧客に試作品を納入している。現在、家電向け電源ICの応用研究に注力しており、今年第2四半期(4~6月)末をめどに2種類の新製品の試作品を顧客に納入する予定だ。

5G時代到来、アナログ半導体は乱立

世界半導体市場統計(WSTS)によると、20年の世界のアナログ半導体ICチップ市場規模(売上高ベース)は540億ドル(約6兆5800億円)と、半導体業界全体の13%を占めた。高速通信規格「5G」時代の到来を受け、家電需要の爆発的な伸びが、シグナルチェーンのアナログICチップの勃興をもたらし、業界全体の追い風となっている。

一方、市場別に見ると、中国は世界全体の36%と高いシェアを占める半面、自給率は12%前後にとどまっている。メーカー別では、米テキサス・インスツルメンツ(TI)、米アナログ・デバイセズ(ADI)、ドイツのインフィニオン・テクノロジーズ、スイスのSTマイクロエレクトロニクス、米スカイワークス・ソリューションズなど海外大手が牙城を築いている状況だ。

袁氏は36Krに対し、シグナルチェーンのアナログICチップについて、「技術面の参入障壁が高い」と指摘。その上で、中国企業の現状に関し、ノイズや帯域幅、消費電力を含む中核技術と集積度で海外大手となお開きがあると説明した。

後発ゆえの優位性、研究開発力に勝算

とはいえ、袁氏は原子半導体の事業見通しには楽観的だ。同社の研究開発力にその秘密がある。同社製のICチップ回路は、高性能かつ高集積度化を実現し、応用範囲の広さに強みがある。家電向けの顧客が近年、ICチップを微細化した上で機能を拡充することを望んでいることに着目し、ICチップ一つで三つ分の機能を兼ねる応用の実現が目下の目標だ。現在主力のAS1412は、類似品に比べ高精度で電力消費も3倍以上少ないという。

袁氏は科技大で20年以上にわたり、高性能ICチップの研究開発に取り組んできた。創業メンバーは、米国半導体のマーベル・テクノロジー・グループや同・アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)、米計測器メーカーのテクロトニクスなどの大手企業で働いた経歴を持つ。皆、米ハーバード大や米ペンシルバニア大、香港科技大、清華大など有力校の卒業生だという。

アリババの起業支援ファンドや大手VCが出資する背景にあるのは、袁氏ら実績のある研究者への確かな信頼感だろう。後発だからこその技術面での優位性にも期待が掛かる。現在の陣容は30人超で、研究員が全体の75%を占めている。過去1年間に本社を置く香港のほか、広東省深セン市と上海市にも研究開発チームを設置したという。

袁氏は今後の戦略について、中国国内のアナログ半導体企業は1〜2種類の製品とその派生製品の取り扱いが多いと前置きした上で、「当社は3種類の製品の生産ラインを持ち、カバーできる範囲がさらに広い」と強調。「家電向けICで商用化を実現した後は、産業機器向けICに照準を合わせていく」と述べ、より高い性能基準が求められる分野だからこそ、自社の技術力を発揮できると自信を示した。

(36Kr Japan編集部)

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